「最高速300キロ超えを達成した初のロータリーマシンを振り返る!」1985年1月、RE雨宮が歴史を変えた

RE雨宮のチューンドSA22Cが金字塔を打ち立てた

日本初の300km/h到達マシンは、以前WEB OPTIONで紹介した光永パンテーラ(307.69km/h:OPTION誌1982年2月号掲載)だ。それから2年後の1984年に、日本車初の300km/hマシンが誕生した。HKS・M300セリカ(301.25km/h:1984年3月号掲載)である。そして今回紹介するのは、ロータリーエンジン搭載車として初のオーバー300km/hを記録したスーパーチューンド。307.42km/hという金字塔を打ち立てた、若き雨宮勇美率いるRE雨宮のSA22C型RX-7だ。

ブルピン仕様と呼ばれた伝説のチューンドセブン

これでやっと区切りがついた! RE雨宮13Bツインターボ 307.42km/h

253.85km/h→258.06km/h→277.45km/h→288km/h→293.87km/h→307.42km/h。これはRE雨宮が谷田部で歩んできた記録の足跡だ。前半はディフェンディングチャンピオンとして自らを目標にしたものだった。しかし後半はチャレンジャーとして、自己の記録300km/hをオーバーさせる戦いだった。

1985年1月にマークしたこの307.42km/hは、屈辱の中で生まれたものだった。1984年12月に山本、トラスト、雨宮の最高速御三家でただ1台300km/hの声を聞くことなく、ミッショントラブルに泣いた。この悔しさが今回の記録を生んだジャンピングボードになった。

このマシンは第3回エキサイティングカーショーに出展されたマシンそのものである。エンジンは13Bロータリーにオリジナルで作り上げた低圧縮ローター(圧縮比8.5)を使ったサイドポート。タービンはKKK・K26をツイン装着。燃料増量用に2つのインジェクター(240cc/分)をブースト圧0.9キロで噴射している。

これまでは13Bのノーマル圧縮比のエンジンにターボをドッキングさせてきた。しかし極限での耐久性を考えて、圧縮比を下げる必要が生まれた。そこで12Aターボのパーツを利用して、12Aターボ用エンジン+ツインターボで挑戦したのだ。しかしそれでもパワー極限域での耐久性に欠けてしまう。そこで、13B用の低圧縮ローターをオリジナルで製作し、耐久性とハイパワーを両立することができた。

しかし、これで全ての問題が解決したわけではない。駆動系に難題があった。あまりのハイパワーにミッションが耐えられない。そのため日産のミッションを使ったりしているが、まだ不安が残っている。

空力面については細部に加工がなされている。まずフロントの空気を入れる開口部を狭くして、流入量を制限している。また、ボンネットからラジエターやインタークーラーを通過した空気を抜くことにより、ダウンフォースを上げ空力的にも有利になっている。これに合わせてボディ下面を流れる空気の整流のため、アルミ板も付けられている。

また、ドアサッシ部や屋根の水切り、ドア下部からリヤフェンダーにかけてのラインも空力的に考えた形状に変更された。このようにして、300km/hの空気の大きな高い壁を、少しでも低くしていったことにより、この記録が生まれたのだ。

RE雨宮@雨宮勇美の正直コメント

「重ーく背にのしかかっていたものが飛んでいったような気持ち。やっぱもう1km/hくらい上で最速(国内最高スピード記録)を狙いたいとも思ったけど、もうこれで最高速トライは目標をオーバーしたので、これからはゼロヨンを全力でやっていく予定だよ」。

終わりに

最高速御三家と呼ばれ、最後にオーバー300km/hをクリアしたRE雨宮。その間の重圧や苦しみは相当のものだったはず。なお、雨さんのコメント通り、記録を達成したRE雨宮はメインステージをゼロヨンに移行。ロータリーチューンの新たな可能性を追い続けるのである。

[OPTION誌1985年4月号より]

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