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ポイントは7Aブロックを用いての1.6L化!
連桿比の見直しで超高回転化を実現
“たにぐち自動車”と“オーエス技研”、“オフィストミタク”がタッグを組んで開発を進めていた4A-G 1万1000rpmキットが完成。受注生産で10セットが先行発売されることになった。
キット開発の発端は、たにぐち自動車代表の谷口氏が、「4A-Gで1万1000rpm回したい」とオーエス技研に打診したこと。バラした4A-Gをオーエス技研に持ち込んで各部を検証したところ、連桿比(コンロッド芯間距離とクランク半径の比率)が低く、ピストンの首振りが大きい(サイドフォースが強い)ため、1万1000rpmの実現は不可能と判断された。
「4A-Gは8000rpmを超えると振動が大きくなります。グループA仕様でも1万1000rpmまでは回していなかったと思いますね」と谷口氏も言う。
開発されたキットは、ノーマルと同じ77mmストロークの削り出しフルカウンタークランクシャフト、純正よりも芯間距離を伸ばした鍛造コンロッド、ボア径82φの鍛造ピストンというパーツ構成。超高回転化を実現するため、長いコンロッドを使ってピストンの首振りを抑えるのが一番の狙いだ。
クランクシャフトを比較。左が4A-G純正、右が1万1000rpmキット。クランクジャーナル径は共に48φだが、1万1000rpmキットはクランクピンを4A-G純正42φから48φにサイズアップ。クランクジャーナルとのオーバーラップを大きく取ることでクランクシャフト自体の剛性を大幅に高め、高回転域での振れを抑え込む。
見るからに違うコンロッドの芯間距離。4A-G純正(左)の122mmに対して、1万1000rpmキット(右)は140.5mmとなる。この差が、ピストンの首振り低減=高回転化に絶大な効果をもたらすのだ。また、ピストンピンも18φから20φへと径の拡大が図られ、圧入式からフルフロー式へと変更される。
ボア径は4A-G純正が81.0φ(左)、1万1000rpmキットが82.0φ(右)。「燃焼室加工やヘッドガスケットの厚みによって、圧縮比は12.5:1前後を狙うのが良いと思います」とは、オフィストミタク代表の富松氏。
しかし、このキットを4Aブロックに組むと、コンロッドが長くなった分だけピストンがブロック上面から飛び出してしまう。そこで選ばれたのが4A用に対して全高が15mm高い7A用シリンダーブロックだ。
「排気量1.8Lのブロックを1.6Lとして使うのがポイント。7Aブロックを使ったチューニングは排気量アップの方向が一般的やと思うけど、僕らがやってるのは正反対のこと。トヨタA系エンジンのスタートは1.3Lの2Aやから、そもそも4Aはストロークを延ばした時点で無理な設計をしとるんやと思う」(富松氏)。
ディストリビューターはオーエス技研の試作品を装着。すでにL型用は市販化されていて、これまで600個以上を販売した実績を持つ。4A-G用も、もちろん発売予定。また、イグニッションシステムにはMSDを採用するが、超高回転域での点火タイミングが追い付かず、それを理由に1万1000~1500rpmが回転リミットになってしまっているのが実情だ。
エンジンの負荷をできるだけ軽減してレスポンスアップを図るため、ラジエター冷却はカップリングファンから電動ファンに、ウォーターポンプも電動式に交換。これに伴い、オルタネーターは60アンペアから90アンペアに大容量化される。
マフラーは谷口氏が懇意にしている大阪の“リバース”で作られたワンオフ品。メインパイプ径50φ、テール径76.3φのデュアル出しとされ、耳に刺激的な荒々しいエキゾーストサウンドを放つ。
今回取材したハチロクは、富松氏が提唱する独自の“トミタク燃焼理論”に基づいて設計、ワンオフ製作されたフラットトップピストンを採用。発売されるキットとは仕様が異なる他、ヘッドフル加工や精密組み付けなどもオフィストミタクが手掛けたスペシャルエンジンを搭載する。
「直前にYZサーキットでテストしたのですが、とにかくスムーズに1万1000~1500rpmまで吹け上がりました。しかもそこで頭打ちではなく、さらに上まで使えそうな感じ。点火が追い付けば1万3000rpmも夢じゃないと思います」と谷口氏。
最後に一つ伝えたいのは、このキットを組むだけで1万1000rpmが可能になるわけではなく、燃焼室加工やカム選択などの要素が大きく絡んでくるということ。そこは、エンジンを組むチューナーの経験やノウハウが問われる部分だ。大きな可能性を感じさせてくれる1万1000rpmキットの登場。その先には4A-Gチューンの新境地が広がっていることは間違いない。なお、価格は93万2800円となる。
●問い合わせ:たにぐち自動車 愛知県一宮市浅野字大島9-2 TEL:0586-81-6660
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