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本革シートを装備したグランツーリスモの上級グレード
後期型はインタークーラー追加で5速ATも初採用!
前期型で特別仕様車として設定され、グランツーリスモSVに対して本革シートや専用ドアトリム、JBL製スピーカーなどを標準装備したグランツーリスモスーパーSV。同シリーズの最上位に据えられたグレードで、大きな反響があったため、後期型の途中(1990年10月)からカタログモデルに昇格することになった。取材車両は、その後期型スーパーSVだ。
エンジンは型式こそVG20DETだが、インタークーラーが追加されハイオクガソリン仕様に改められたことで、スペックは前期型に対してパワーで25ps、トルクで5.0kgmも上回る210ps/27.0kgmを発揮。
そこに、トルコン式としては世界初の5速ATを組み合わせたのが大きなトピックだ。ギヤ比は1速から3.875/2.140/1.384/1.000/0.694、ファイナル比は3.900とされる。加速力に優れ、高速巡航時のエンジン回転数も抑えられるなど4速ATに対して大きなアドバンテージを持つ。
1989年というと、センセーショナルに登場したZ32やBNR32につい目が行ってしまうが、実はY31もマイナーチェンジで大きな進化を遂げ、その内容も“技術の日産”の名に恥じないものとなっていた。
そんな後期型スーパーSVを10年ほど前に購入したというオーナー。希少グレードだけに当然、指名買いかと思いきや「Y31を探してたら、たまたまスーパーSVが出てきたんです」と笑う。これぞ中古車探しの醍醐味、オーナーがスーパーSVと出会ってしまったのは、もう運命だ。
車高を落とし16インチのパナスポーツG7を履かせたスタイルは、純正オプションとフルノーマルボディに拘り、社外のエアロパーツを使わず “グランツーリスモらしさ”をどこまで出せるか?というのがコンセプト。結果、VIP仕様でもハイソ仕様でもない独特なスタンスを生み出している。
ホイールの奥に覗くフロントキャリパーは社外かと思いきや、何と純正。純正品の表面を研磨してグロスブラックで塗装し、日産のロゴは遊び心でラメ塗装が施されているのだ。組み合わされるローターはスリット入りだ。
もうひとつ、オーナーの拘りがオーディオだ。まず、真空管式アンプやアナログ式レベルメーターを備えたパナソニック製CDデッキCQ-TX5500Dをヘッドユニットとして選択。HDDナビが世に出始めた頃、オーナーは10数万円を払って手に入れた。
リヤウインドウ越しに確認できるリヤスピーカー。本体はスーパーSV標準のJBL製で、長年探した当時物のマウントを介して装着される。スピーカーの位置を高く、しかも前傾させることで音を拡散させる効果が期待できるそうだ。
ステアリングホイールはイタルボランテ製で、希少なφ330に交換。内装色に合わせてカラーを変え、センターパッド右側にはグランツーリスモSVのロゴも入れられる。足元にチラッと見えるのは純正品では最上級となる緞通フロアマット。ATセレクターレバーの奥には懐かしい光ファイバー付きドリンクホルダーも装着される。
水平ゼロ指針ではなくなった後期型のスピード&タコメーター。水温計と燃料計も細かい目盛りが刻まれたタイプに改められている。また、5速ATのため、センターのシフトポジションインジケーターもD-3-2-1となる。
グランツーリスモスーパーSVが“Y31の中でも特別な1台”とされる大きな理由が本革シート。最上級グレードのブロアムVIPでもメーカーオプション扱いとされた装備だ。これに合わせてドアトリムも専用品となる。
各部に拘り満載で、ほぼオーナーの理想通りに仕上がった後期型スーパーSV。今後の展開を聞いてみたら、「オーバーホールと同時にエンジンをチューニングしたいですね」とのこと。これはそう遠くない将来、改めて取材することになりそうだ。
■SPECIFICATIONS
車両型式:Y31
全長×全幅×全高:4690×1695×1400mm
ホイールベース:2735mm
トレッド(F/R):1440/1455mm
車両重量:1540kg
エンジン型式:VG20DET
エンジン形式:V6DOHC+ターボ
ボア×ストローク:φ78.0×69.7mm
排気量:1998cc 圧縮比:8.5:1
最高出力:210ps/6800rpm
最大トルク:27.0kgm/3600rpm
トランスミッション:5速AT
サスペンション形式(F/R):ストラット/セミトレーリングアーム
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR215/60R15
●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)