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心臓部はメカチューン4A-Gを搭載!
正統派キャラを打ち崩す我流マシンメイク
117クーペは、1963年にジウジアーロデザインのコンセプトカーとして発表され、1968年にデビューした、いすゞのスペシャリティクーペだ。曲線を基調とした優雅なデザインは人気を博したが、初期モデルは細部まで手作りに近い製造工程だったため、生産台数が少ない希少車となっている。
モデルは大きく3回のマイナーチェンジが行われ、中期型以降、若干のデザイン変更とともに量産性が高められていった。生産終了が1981年と、非常にモデルスパンが長かったことからもその人気の高さが伺える。
メカニズム的にも、上位グレードには国産初の量産ツインカムエンジンとボッシュ社製のインジェクションシステムが導入されるなど見所が多く、4座のラグジュアリークーペというカテゴリーを確立させた存在でもある。
そんな名車の最終型モデル(1980年式)を過激に仕上げたチューンドが今回の主役だ。前後バンパーレス&スムージング、軽自動車から加工流用したというビレット風グリル、クリアレンズのヘッドライトなどで武装し、優等生的なイメージが強い117クーペをヤンチャなスタイルに仕上げている。
エンジンはオリジナルに拘ることなく、AE92後期の4A-Gをチューニングして搭載。ハイコンプ+高回転型のカム(TRD製 IN304度/EX288度)と4連スロットルを組み込んでレスポンスに磨きをかけている。エンジンスワップの際には、ハーネス類を目立たぬように隠すなど最新カスタムのトレンドが盛り込まれているのも注目だ。
等長EXマニとハイカム、4連スロットルが奏でるカルテットは官能的にして刺激的。高回転まで突き抜けるようなNAフィーリングも自慢だ。
エンジンマネージメントはトラストの高性能サブコン“eマネージ”が担う。点火系は4A-G用ノーマルECUが担当する。
バンパーレスのボディにフィットするようワンオフ製作されたマフラーには、消音用の可変インナーサイレンサー(アペックスECV)を装備。小ぶりな砲弾テールが独特の迫力をかもす。
117クーペのミラーはオーソドックスなフェンダータイプだが、旧車感を払拭して個性を演出するためにP510ブルーバードの純正フェンダーミラーをAピラー側にオフセット装着。言われなければ気づかないカスタムだが、こうした細部フィニッシュがトータルイメージに大きな影響を与えるのだ。
室内は純正の面影を強く残した仕上がり。ステアリングはナルディのクラシック、助手席側にはアペックスECVのトリガーが設置されている。
旧車には王道のチューニング&カスタムがある。そうしたセオリーを一切無視し、思いの向くまま全方位に手を入れた117クーペ。カタにはまらず自由な発想で自分好みにアレンジしていく。改造の原点が凝縮されたような1台だ。