「100系チェイサーのディーゼルとガソリンターボを同時所有!」20代のマニアが溺愛する2台を乗り比べ

街乗りであればディーゼル仕様の方が断然よく走る!

100系にディーゼルがあったことを覚えていますか?

クルマ好き的に、70系以降のチェイサーを代表するグレードと言えば、1G-GTEU搭載のGTツインターボ(GX71/81)、1JZ-GEUを載せる2.5GTツインターボ(JZX81)→ツアラーV(JZX90/100)という意見に異論はないだろう。これは兄弟車マークIIやクレスタ(JZX100はルラーンG)についても同様だ。

一方、トヨタにとってのマークII三兄弟はクラウンとコロナの間を埋める重要な車種で、多くの販売台数を見込めることから幅広くグレードを展開した。その中のひとつがディーゼルエンジン搭載モデル。

なんとなく「90系まではチェイサーにもディーゼルがあったよなぁ」という認識だったが、今回驚いたのは、実は100系にも存在していたことだ。人気が炸裂しまくっているツアラーVの陰に完全に隠れてしまったマイナーグレード、それが2.4L直4ディーゼルターボの2L-TE型を載せる2.4アバンテ/XLだった。

LX100チェイサー

取材車両2.4アバンテ。外装が後期ツアラー仕様になっており、JZXでもGXでもなく、まさかのLX100だとは思えないところが実にいやらしい。

JZX100チェイサー

そして、もう1台の取材車両が定番JZX100ツアラーV。それも、マイチェン前の1998年1月に登場した特別仕様車、“エキサイティングパッケージ”というレアモデルだったりする。

この2台のオーナーが梅本さん。JZXはともかくLXまで所有するとは、二十歳(取材時)にしてすでに進むべき道を大きく踏み誤っている感じがしなくもない…。とりあえず本人に話を聞いてみる。

「以前乗ってた5速MTのJZXが事故で廃車になってしまい、ディーラーに下取りで入ってきた今のJZXを買いました。その後GXも手に入れたいと思ったんですが、維持費を計算すると2台を所有するのは厳しい。そこでディーゼルのLXなら…と考えたんです。探してみたら、長野にLXの前期型と後期型を在庫している店があって。結局、法人オーナー車で、店の趣味でツアラー外装に変更されてた前期型を買いました」とのこと。

なるほど、維持費を少しでも軽くするためにGXではなくLXを選んだことは理解した。しかし、大前提として、LXに目を付けること自体が極めて変態な行為であるのも事実だ。

LX100(チェイサー2.4アバンテ)の細部チェック

LX100チェイサーの室内

LXは主に通勤、JZXは休日のドライブやイベント参加と乗り分けている梅本さんは、それぞれを自分好みにカスタマイズ。

LXはATセレクターをツアラー系のゲート式に変更し、ノブも110系マークIIブリット純正に交換。また、取材後にはエアコンパネルをツアラー系の液晶タイプに交換し、今後はブレーキ強化のため、フロントキャリパーを片押しシングルポットからツアラー用2ポットに変更したいとも言っていた。

LX100チェイサーのメーター

6000rpmフルスケールのタコメーターがディーゼルモデルの証だ。

LX100チェイサーのアイドルアップスイッチ

ステアリングコラムの下、ボンネットオープナー左に設けられたアイドルアップスイッチ。ディーゼルモデルならではの装備で、冷間時の暖気時間を短縮したり、暖房を早く効かせるなどの役割を持つ。

LX100チェイサーのシート

100系チェイサーに用意されたシートは4種類。ツアラー系のスポーツタイプ、アバンテG系のラグジュアリータイプA、アバンテ系とラフィーネのラグジュアリータイプB(写真)、XL系のノーマル。さらに、アバンテGとアバンテの運転席は8ウェイパワーシートが標準装備となる。

LX100チェイサーの2L-TEエンジン

エンジンはマークII三兄弟だけでなく、クラウンやコンフォート、ハイエース、ランクルプラドなどにも搭載された2L-TE型。従来の2L-TII型がベルト駆動の分配型燃料噴射ポンプを採用してたのに対して、2L-TE型ではソレノイドバルブによってスピルリングを動かし、噴射量を決定する電子制御式に変更。パワーで3ps、トルクで0.5kgmの向上を果たした。

LX100チェイサーの給油口

間違ってガソリンを入れてしまわないよう、フューエルリッド裏側に赤いステッカーが貼られる他、キャップにも“ディーゼル”“DIESEL”と刻印される。

JZX100(チェイサーツアラーV)の細部チェック

JZX100チェイサーの1J-GTEエンジン

一方のJZXはHPI製の前置きインタークーラーやラスティ製キャタライザー、ラインハルト製マフラーなどで吸排気系をチューニング。

エンジン本体は90系に搭載されたツインターボ仕様に対して、VVT-i+シングルターボ仕様に改められた1JZ-GTE。パワーは280psで変わらないが、トルクは37.0kgmから38.5kgmに向上。その発生回転数も4800rpmから2400rpmへと大幅に引き下げられ、低中回転域のトルク特性が劇的に改善された。ストラットタワーバーはTRD製を装着。

JZX100の室内

ステアリングホイールはディープコーンタイプに交換。シフトブーツから5速MTのように見えるが、ミッションは4速ATだ。また、JZX100前期型ではオプション設定のオートライトを標準装備するのがエキサイティングパッケージの特徴。

JZX100のメーター

8000rpmフルスケールのタコメーターは7000rpmからがレッドゾーンとなり、スピードメーターはTRD製320km/hフルスケールに交換される。

JZX100のシート

ホールド性に優れるスポーツタイプシートが採用されるJZX100。シート表皮とドアトリムはエキサイティングパッケージ専用品となる。ハーフシートカバーは車名ロゴが入った純正品。「あえて年配の方が乗ってるように見せたくてLX100から移設しました」と梅本さん。

JZX100のフロントグリル

ボディ色からして専用クリスタルパールマイカが採用されるエキサイティングパッケージ。ベース車と見比べないと分かりにくいが、フロントグリルもメッキ部をスモーク処理した専用品が装着される。

JZX100のセンターガーニッシュ

センターピラーガーニッシュは専用カーボン調。その他、車名ロゴ入りスカッフプレートや間欠リヤワイパー、リヤ&リヤサイドウインドウのプライバシーガラスなどがエキサイティングパッケージならではの装備となる。

JZX100とLX100を乗り比べ!

まずはツアラーVから試乗。ギヤ比とファイナル比を掛け合わせたオーバーオールレシオが5速MTよりも全体的に高く、とくに1~2速ではその傾向が顕著な4速AT。低中速トルクの特性が改善されたVVT-i仕様の1JZ-GTEでも、ゼロ発進からの加速は良く言えばマイルド、悪く言えばかったるい。

さらに、梅本さんが言うように「排気の抜けが良くなった分、低速トルクが犠牲になっていると思います」というのも関係していそうだ。上は7000rpm手前までスムーズに吹け上がるしパワーも追従するが、3000rpm以下の領域で物足りなさを覚えてしまう。

それに対してLXは1500~3500rpmがスイートゾーン。同じ4速ATでJZXよりオーバーオールレシオがハイギヤードなのに、ゼロ発進からの加速感は遥かに力強いし、2000rpm辺りからアクセルペダルを踏み込むと、上り坂でもグイグイと前に出ていく。

最大トルクはLXの2L-TE型が22.5kgm、JZXの1JZ-GTE型が38.5kgm。スペック表ではどちらも2400rpmで発生することになっているが、その領域で体感するトルクは2L-TE型の方が大きいのだから不思議だ。これなら断然、LXの方が街乗りも楽。しかも、「通勤で山道を走ったり渋滞にハマったりしますけど、燃費は平均14km/L」という梅本さんの話から、維持費の大半を占めるだろう燃料代も抑えられる。

旧いディーゼルエンジンだから多少のガラガラ音は仕方ないとして、それ以外はアバンテだけに装備は充実しているし、乗用域での動力性能もガソリンエンジン車より一枚上手。足グルマの選択肢としてLX100は技アリだ。

PHOTO&TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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