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MT車とは異なる楽しさを追求するのもアリ!
専門ショップが作り上げた最強の5AGSチューンドに迫る
各社からチューニングパーツが発売され、S660やコペンと並んで軽カーチューニングベースの人気車種となっているアルト(ワークス)。
高い積載性能や、4人乗車での移動も難なくこなす懐の深さを持ったモデルだが、多くのチューンドアルトを手掛ける“キャドカーズ”が最も注目すべきと語るのが、ターボRSからワークスまでに設定されたAT免許で乗れる2ペダル車、『5AGS』(5速オートギヤシフト)仕様だ。
これは、枠で言うともちろんオートマチック車だが、仕組み的にはマニュアル車と同じトランスミッションの自動制御。もちろんパドル制御も可能で、R35GT-Rなどと同様の2ペダルマニュアル車と言っていい。
つまり、根本的にトルコンタイプのオートマやCVTとは異なり、スポーツ走行にも適した構造を持ち合わせた仕様なのである。デビュー当時はギクシャクしたフィーリングで違和感を感じるユーザーも多かったこの機構だが、年次改良で大幅な改善を遂げているのもポイント。
キャドカーズでは、そんな5AGS搭載のアルトターボRSをベースに快速チューンドスペックを製作したのだ。
エンジンは腰下ノーマルだが、フルバランス取り&高精度のオーバーホールを施してフィーリングを大幅にアップ。タービンはIHI F5とかなり大型のため、ウエットショット式のNOSを併用して回している。さらに、カム交換でパワーバンドは8500rpm近くまで広げられた。
これにより、ノーマルの3倍近い156psというパワーを引き出しているが、可変バルタイの恩恵もあり街乗りも違和感なくこなせる。クラッチはORCのメタルシングル。本来5AGSは対応外だが、ダンパー付きでキレもよく、パワーもしっかり受け止めると高く評価している。
オリジナルの前置きインタークーラーは、純正バンパーへのインストールを前提に開発されたクロスフロータイプだ。ただし、インタークーラーを前置きにするとラジエターの冷却効率が落ちるため、冷却用の別配管を使ってサブラジエターを右側ダクト内にセットしている。なお、左側のダクト内に確認できるコアはオリジナルのオイルクーラーだ。
サスペンションは、フロントがHKSの先代ワゴンR用改、リアがKYBのローファースポーツという組み合わせ。ブレーキはオリジナルローターにエンドレスのパッドを組み合わせているが、それでもセントラルサーキットで156㎰のパワーを受け止められるのはわずか4周程度。今後バージョンアップが予定されているポイントだ。
インテリアはオリジナルの雰囲気を損なわないように美しくモディファイ。センターコンソール下にF-CON iSとEVC6をインストール。ダッシュボード上には4輪の空気圧を監視するモニターもセット。ちなみに、ステアリングホーンはボタン一つでNOSの噴射スイッチに切り替わるギミックが盛り込まれている。
スターターボタン近くに設けられたオレンジ色のボタンはAGSのクリープキャンセラー。その横のON/OFFスイッチは、アクセルとブレーキを同時に踏んだ際にアクセルを閉じる制御のキャンセラーだ。
ステアリングのパドルはナイトペイジャーの汎用品。純正品よりもサーキットでは圧倒的に使いやすいそうだ。
このチューンドをセントラルサーキットで走らせた井入宏之選手は「5000rpm以上でパワーが強烈に盛り上がり、過給と一緒にレッドゾーンを超えて回ろうとする。パワーフィールは最高やね。ただ、AGSのクセを掴むのが大変だった(笑) MT車のセオリー通りに乗ると変速のラグが大きく、『ここで1速落としたい』なんて場合でもすぐにギアを落とせないからね。慣れればもっとタイムを出せるはず!」とコメント。ベストタイムは1分40秒075だった。
「速く走らせるには、AGSの特性に合わせた走りを会得する必要がありますね。一例を挙げると、ブレーキを踏んでいたらダウンシフトするプログラムが入っているので、速くコーナーを駆け抜けるにはアクセルを踏みながらブレーキを踏む操作が必要だったり。また、ダウンシフト側のパドルシフトレバーを握りっぱなしにするとオートでシフトアップしないなど、AGSのクセを理解して走れば、MTと遜色ないタイムが出せます」とは、キャドカーズの石川さん。
特有の癖はあるものの、5AGSだからこそのシームレスな加速も相まって、クルージングのみならずあらゆるステージで速さを体感できるアルトターボRS。実用性まで含めて、軽カーチューンドとしてはひとつの理想形と言えるだろう。
●問い合わせ:キャドカーズ 大阪府和泉市納花町406-4 TEL:0725-58-1323
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