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レストアからスタートした極上仕上げのEF9
ストリートで開花するレーシングカー譲りの機能美
通称グランドシビックと呼ばれたFE系シビック。先代モデルのAG系(ワンダーシビック)は「革新的」と大絶賛され爆発的ヒットを飛ばしたが、続くグランドシビックはその評価をさらに高めたモデルと言っていい。デビューは1987年、ワイドトレッドの優れたバランス特性により、グループAでも活躍した経緯を持つ。
ベースは実に30年以上も前の車種となるため、チューニング云々の前に、まずボディをドンガラ状態にした上でのレストア作業からスタート。各部の修正はもちろん、ボルトやクリップなど細かい部分も交換されているため、パッと見は新車そのものだ。
パールホワイトのボディとは対照的なグリーンに塗装されたエンジンベイに収まるのはEK9用のB16B。搭載にあたってはメンバーやマウントの加工、ミッションスペースの確保など、相当な苦労があった。
しかし、切った貼ったを意識させないことはもちろん、ハーネスやパイピング類も極力見せず「レーシングカーのようにエンジンだけが整然と収まっているよう印象に仕上げたかった」というオーナーの徹底した拘りにより、その眺めは「これが標準か?」と思えるほどナチュラルな印象だ。
グリーンにパールを混ぜた塗装で彩られたエンジンルームだが、見た目だけでなくキッチリとエンジンチューニングされている。エキマニはステンの等長で、スロットルは戸田レーシングの4連を搭載、制御にはパワーFCを導入する。また「不要なパーツを見せないように」とデリバリーパイプさえもファンネル下を通す念の入れようだ。レアアイテムの無限製カムカバーが存在感を主張する。
クラッチはワイヤー式から油圧に変更されている。その他、樹脂パーツは新品に交換したりキャップをアルミにするなど、経年劣化による「ヤレ」を見せない工夫が各部に確認できる。
機関部分はレーシングカーを意識しながら、ベバスト社の後付けサンルーフやパイソン(蛇)柄で張り替えたバケットシートやインパネ周りなど、ストリートマシンとしての演出も抜かりナシ。その後ろにはホイールと同色コーディネイトされた7点式ロールケージが室内に広がる。ちなみに、シフトレバーやサイドブレーキレバーはEK9用に変更されている。
メーターはEFシビックのクラスターにEK9用のメーターパネルをインストール。どっからどう見ても純正としか思えない仕上がりには脱帽だ。なお、後付けサンルーフはEG用ハーネスを使って、加工されたEF用室内スイッチで操作できるようにしていたりもする。
チョイスしたホイールは80’sスタイルにマッチしたワークエクィップ03。その奥にはEK9後期用を4穴に加工したハブ周りと、ピンクに塗装されたスプーンのブレーキキャリパーが覗く。タイヤは前後とも195/45-15、ホイールはF8.5JのR9J。リヤのロワアームはファンクション7で、肉抜きされた造形がいかにもレーシーだ。アッパーアームは百式自動車の調整式を使う。
オーナーの愛情が注ぎ込まれ、30年以上前のベースとは思えないほどの輝きを放つEF9シビック。様々な理由から車体寸法が肥大化していった平成の自動車たちと比べると、あまりに小さく、まるで贅肉を削ぎ落としたアスリートの様だ。だからこそ真のクルマ好きは惹かれるのだろう。