S2000を打破するべく2.3L化と4輪の接地性向上を図る
打倒S2000を掲げ、各地のサーキットで走り込みを重ねる“インテグラル神戸”のNC型ロードスター。あくまでもストリートスペックの範囲内でのアタックに拘り、ホームコースのセントラルサーキットはラジアルで1分26秒、鈴鹿であれば2分26秒あたりをターゲットタイムと想定する。
歴代ロードスターの中では最もパワフルなLF-VEを搭載するNC型だが、それを軽く凌駕するVTECエンジンとの差を埋めるべく、エンジンは2.3LのL3-VEへと換装。
カムをIN/EXとも戸田レーシングの250度に交換する他、ポート研磨、バルブシートカットなどのヘッドチューンも実施。ヘッド面研によって11.3へとハイコンプ化が図られ、安定性を維持しながらパンチを強調しているがそれでも最高出力は225psといったところ。高回転&高出力型の名機F20Cと対峙するには、240psは欲しいのが本音だ。
エンジンパフォーマンスでは限界があるため、後はロードスターの美点であるコーナリングスピードでパワー不足をカバーするしかない。そこで、前後に255/35幅の18インチ(ポテンザRE-71R)を履き、ハイグリップなワイドタイヤを活かすセットアップを展開。ホイールはボルクレーシングZE40(9.5J×18+45)だ。
まずは車高調。ZEALのアルミシェルケースモデルをベースにしたオリジナルのマスタースペックダンパーキット(F12.5kg/mm R8.9kg/mm)をセット。4輪の接地性を高めるため、前後にヘルパースプリングを採用しているのがポイントで、伸び側のストロークを十分に確保することにより粘りのある“アシ”に仕上げている。
さらに、フロントロアアームのサスペンションブッシュをオリジナルのピロブッシュに交換。タイヤのワイド化やハイグリップ化が進めば進むほど、純正ゴムブッシュのヨレやタワミが過剰になるため、ピロ化が非常に有効なパートとなる。
一方のリヤは、純正に対して材質の見直しを実施したマスタースペックトーコンブッシュをセット。適度に柔軟性を残しながらも、純正よりも硬度を高めることで、スポーツ走行時の極端なトー変化を抑制。コントロール性の向上が期待できる。また、接地性の向上に伴い、抵抗や唐突感を減らすため、オリジナルスペックのLSDは初期の効きをできるかぎりマイルドに設定している。
もちろん、パワーの増大とスピードレンジの上昇に伴ってブレーキも強化された。キャリパーはエンドレスの4ポットで、ローターはオートエクゼのRX-8用に変更し、大径化を図る。ただし、前後バランスの適正化と過度の重量増を避けるため、17インチ仕様の232mmではなく、16インチ仕様の303mmを選んでいる。
4輪の接地性を高める手段としては、空力パーツもフルに活用。これまではベンチュリーアンダーパネル、アンダーエフェクトパネル、リヤディフューザー&センターフラップといったパーツを次々と開発し、ウイングに頼ることなく、ダウンフォースの獲得を進めてきた。
ところがタイムの上昇に伴い、いよいよダウンフォースが足りなくなり、ついにGTウイングの導入を決意。整流効果を高めてウイングの効果を増幅させるべく、ガレージベリーのハードトップも装備した。
このチューンドを試乗したレーシングドライバーの谷口信輝選手は「加減速やコーナリングなど、あらゆるシチュエーションで挙動の軽さを感じる。エンジン特性はフラットでトルクの厚みに特徴があり、7000rpmまで停滞感なく、力強い加速が持続する。とくにコーナーの立ち上がりで、トルクの太さと車体の軽さが実感できる。さらにハイグリップなワイドタイヤまで装着されていて、ターゲットとしている鈴鹿や岡山国際では高い戦闘力を発揮するはずだよ」と絶賛。
仮想であろうともリアルであろうともライバルを掲げることは重要だ。それによって、回り道せずに的確なチューニング法をプランニングしやすくなるからだ。そして、その好例がこのNCロードスターと言えるだろう。
●取材協力:インテグラル神戸 兵庫県明石市大久保町大久保町597-1 TEL:078-935-2661
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