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ジウジアーロデザイン+フラット6の魔力!
ベースは豪華装備満載グレードのバージョンL
平成バブル期を代表するスペシャリティカー“東の横綱”と言えば、スバルのアルシオーネSVXだ。国内デビューは1991年1月。平成3年のその年はソ連が崩壊し、角界では大横綱千代の富士が引退して若貴兄弟が大人気だった時代。そんな出来事から感じる隔世の感に比べると、目の前にある実車はまだまだ現役感バリバリで、現行モデルにはない魅力的なオーラを放っているではないか。
「500miles a day」というキャッチコピーが与えられ、北米市場をメインターゲットにした本格的グランツーリスモとして開発されたアルシオーネSVX。スバルの六連星で最大の恒星アルキオスにちなんだ車名を冠するフラッグシップモデルとしては2代目となるが、レオーネベースの初代アルシオーネとは完全な別モデルだ。
何と言っても最大の特徴はジウジアーロデザインのエクステリアで、ドアガラスがルーフに回り込むミッドウインドフレームによるラウンドキャノピーを日本車として初採用。パワートレイン3.3L NAフラット6のEG33に4速AT、専用プラットフォームによるフルタイム4WDとなっている。
そんなアルシオーネSVXを3年前に手に入れたのが“おるたな”さんだ。
「学生時代に先輩が代車で借りてきたBD5レガシィの助手席に乗ったのがスバル車にハマったきっかけです。4WDの安定感を峠で知り、“これなら死なない!?”と思いレガシィを乗り継いできました。その流れで行き着いたのがこのクルマ。やはり決め手は3.3Lエンジンとジウジアーロデザインでした。初期型のみに設定されたバージョンLを選んだのも拘り。パワーシートやクルコン、オートライト、4WSなどを装備した最上級グレードなんです」。
見どころ満載の一台だが、まず注目すべきはリヤフェンダーに装着されたエアロスパッツ。大学の自動車部時代にお世話になった鈑金屋の親父さんが就職祝い(?)として製作してくれたワンオフ品だ。素材は廃材のリヤクォーターパネルで、ボルトで簡単に脱着できるようになっている。ホイールのPCDは当時のスバルで唯一の114.3−5H。
オリジナルのアルシオーネSVXとは異なる近未来的な雰囲気を醸し出している要素の一つが、オーナーのDIYによる灯火類のカスタマイズ。フロントはライト類のLED化に加え、グリル部分にラインLEDを内蔵。リヤもガーニッシュ内にLEDを仕込んだ結果、バックランプが外付けとなっている。ちなみに、リヤガーニッシュのSVXロゴの色は前期型と後期型で異なるのだとか。
クルーズコントロールや電動本革シート、オートライトをフルに装備するのはバージョンLのみで、パネル全体が稼働するエアコンスイッチもオーナーのお気に入りポイント。オーディオ下のスイッチは、イグニッションスイッチ内でキーが折れたために設置されたプッシュ式のスターターだ。
トランクルーム内、スピーカーボードの裏側に取り付けられた4WSのコントロールユニット。本来はパネルに直接固定されるが、熱(車内の温度上昇)の影響でコンデンサーが傷みトラブルの原因となる。そのため、おるたなさん自らがパネルから離して固定するように手直し。
「抜群の直進安定性は現行モデルを凌ぐもので、まるでクルーザーに乗っているようです。ただし、その走りを味わい続けるためには当然苦労もあります。この時代のスバル車の弱点である電装系を中心に、常にどこかしらトラブルを抱えている状態ですが、そんなのは当たり前。今ではその苦労よりも“俺の手でクルマを走らせ続けている”という満足感の方が大きいです」と笑うおるたなさん。
どうやら我々が想像している以上に、“宇宙船SVX”の保守と操縦には強い気持ちを抱き続けることが必要なようだ!?
REPORT:川崎英俊