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前期型ショートボディと後期型ロングボディを乗り比べる!
進化の度合いに、いすゞの本気を見た!!
この手の国産クロカン4駆なら普通はランクルかパジェロを選ぶところだ。しかし、自分を含むマイナー志向の人ならば「気になるのはビッグホーン!」という意見に同意してくれるのではないだろうか。
そんなビッグホーンの初代が2台、それも前期型ショートとなる1982年式ロデオビッグホーンソフトトップLTと、後期型ロングの1990年式ビッグホーンスペシャルエディションbyロータスが揃った。
丸型2灯ヘッドライトの前期型は、見た目がレンジローバーに酷似していることでランドローバー社から横槍が入ったとか。そのため、後期型へのマイナーチェンジで角目に変更した…などという無駄話はさておき、早速2台を乗り比べてみる。
まずは前期型ショートボディから。2.2L直4ターボのC223型はディーゼル特有のガラガラ音が盛大で振動もかなり大きい。
前後も左右もストロークが大きいシフトレバーで1速を選び、クラッチペダルをゆっくりリリースすると、スルリと動き出した。1速は2トントラック並みのローギヤード仕様なので、タイヤがひと転がりしたらすぐ2速へ。2000rpm手前で3速、4速とチェンジしていく。エンジンは低回転域で粘るかなり特性のため、早めのシフトアップでルーズな走りも許容してくれる。
乗り心地は想像以上にハード。というか、ギャップを越えるたびにボディが大きく揺すられ、トラックに乗っているかのようだ。さらにパワーステアリングのアシストが強く、手のひらに伝わってくるインフォメーションが希薄なので、舗装路を走っていても少し不安になる。
そう、不安と言えばブレーキもだ。今時のSUVを思い描いて乗ると、理想と現実のギャップの大きさに愕然とすることうけあい。これは生半可では乗れない、“男のクルマ”と呼ぶに相応しい。
続いて後期型ロングだが、取材車両はモデル末期に追加された特別仕様車のスペシャルエディションbyロータス。そう、ハンドリングbyロータスの前身とも言うべきモデルだ。
運転席に収まると、まずダッシュボードの細かい造形やドアトリムなどが、かなり乗用車的な仕上がりとなっていることに気付く。キーをひねり、グローランプが消えたのを確認してエンジン始動。30年近く前のクルマだけにガラガラ音も振動もしっかり伝わってくるが、前期型から大幅に改善されていることを実感。こちらは4速ATなので、Dレンジに放り込んで走り出す。
2.8L直4の4JB1型は、同じディーゼルターボでも一世代新しく排気量も大きいため、ゼロ発進からしてトルクフル。ちなみに、ディーゼルにATが組み合わされたのは後期型から。イージードライブを実現したという事実も、より乗用車的になった証だ。
1500rpmくらいで流していてもトルク感はたっぷり。そこからアクセルペダルを踏み込んだ時のレスポンスも格段に向上していて、前期型を上回る加速を見せてくれる。
何より、ロングホイールベースであることを差し引いても、不快に思わないレベルにまで乗り心地が改善されていることに感心。ブレーキだって絶対的な制動性能の向上はもちろん、ペダルタッチもリニアになっているので、前期型とは安心感がまるで違うのだ。
はたして初代ビッグホーン、前期型から後期型への進化の度合いを実感した今、いすゞの本気をヒシヒシと感じずにはいられないのだ。
TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)