目次
ボーイズレーサー旋風の立役者!
スタイリッシュなデザインと手頃なボディサイズ、さらに軽快な走りも楽しめるとあって、当時の若者達から絶大な支持を受けたのが初代FFファミリアだ。街に溢れた“赤いファミリア”は一種の社会現象を巻き起こし、国産ボーイズレーサーの元祖と呼ばれる存在になった。
ファミリア1500XG(BD1051)を試す
駆動方式をFRからFFに改め、1980年5月に5代目ファミリアとして発売されたBD型。その車両型式は新開発のシャシー、BDプラットフォームに由来する。
エンジンも新開発となる直4SOHCのE型で、当初は1.3LのE3(74ps/10.5kgm)と1.5LのE5(85ps/12.3kgm)をラインナップ。1983年1月のマイナーチェンジでE5のEGI仕様(95ps/12.6kgm)が加わり、さらに同年6月にはターボ仕様(115ps/16.5kgm)が追加されるなど、モデル展開を拡大していった。
ボディはまず3ドア/5ドアハッチバックでスタートし、遅れて4ドアセダンも登場。その中でもイメージリーダー的な存在だったのは3ドアハッチバック、ボディカラーは赤だ。
「ファミリアやカペラのような、いわゆる大衆車は廃車にされてしまうことが多く、現存台数はもちろん、ちゃんとした形で残っていることが少ないんです。だったら自分が次の世代に引き継いでいこうと思い、5年ほど探してやっと見つけたのがこれでした。ボディカラーは特に拘ってなかったのですが、残すなら前期型XGという点は譲れませんでした」とオーナーの成本さんが話してくれた。
XGはE5エンジンを搭載し、前後スタビライザーを含む専用セッティングの足回りが与えられたスポーティグレード。取材車両は1982年式で、本来XGに標準装備されるサンルーフが非装着だったため(1981年から非装着車も設定)、「珍しいな」と思ったという。
シンプル・イズ・ベストを痛感させられる室内。中央のエアコン操作パネル&吹き出し口までを覆う大型メータークラスターを採用。スピードメーターとタコメーターの間に水温計、燃料計が配置される。ダッシュボード右端下の2本のレバーは、電動リモコンフェンダーミラーの調整用だ。
センターコンソールは中段に時計、AMラジオ、キャブレターチョーク、その下に灰皿とシガーライター、ボンネットオープナーが並ぶ。AM/FMラジオ付きCDプレイヤーは後のマツダ車用を装着。
運転席にはリフター&ランバーサポート調整機能を装備。後席は背もたれが50:50の分割可倒式でラゲッジスペースの拡大が可能。また、リクライニング機構も備わり、快適性や居住性を向上させている。
前席を一番前までスライドさせ、ヘッドレストを抜いてフルリクライニングさせると、後席座面とフラットになるラウンジソファシート。ハッチバック、セダンとも上級グレードに与えられた装備で足を伸ばしての休憩が可能。
メッキのホイールリングを装備する13インチのXG純正スチールホイール。リム幅は他グレードの4.5Jに対して5Jとワイドで、タイヤも175/70(他グレードは155/80)サイズが標準となる。
ストロークは長めだが、思いのほか操作感がカッチリしたシフトレバーを1速に入れて走り出す。クルマの動き出しが軽い。基本的に低中速トルク型のエンジン特性もあるだろうが、同時に800kg台前半の車重が効いているのは間違いない。
ちなみに、ファミリアのボディサイズは現行スイフトスポーツに対して全長こそ60mmほど長いが、全幅は100mm狭く、全高も120mm低い。しかも、車重は150kgも軽かったりする。となれば、パワーは85psと控え目でも動力性能に不満はない。それ以上にステアリング操作に対するクルマの挙動が軽快かつダイレクトで、街中を流しているだけでも、その走りが楽しいと思えるほどだ。
エンジンは特別パワーがあるわけでも、レスポンスが鋭いわけでもない。しかし、吹け上がり方が気持ち良く、キビキビとクルマを走らせる。スタイリッシュな内外装のデザインを含め、この絶妙なバランス感覚が当時、若者の心を掴んだ理由に違いないと思ったりした。
■SPECIFICATIONS
車両型式:BD1051
全長×全幅×全高:3955×1630×1375mm
ホイールベース:2365mm
トレッド(F/R):1390/1395mm
車両重量:825kg
エンジン型式:E5
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク: 77.0φ×80.0mm
排気量:1490cc 圧縮比:9.0:1
最高出力:85ps/5500rpm
最大トルク:12.3kgm/3500rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR175/70R13
OWNER:成本浩司
PHOTO &TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)