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ポート修正で大幅なフィーリングアップを実現!
サウンドを徹底追求した排気系にも注目だ
BMWのレース部門M社がチューニングを手掛け、当時、直6エンジンを搭載する世界屈指のFRスポーツカーと言われたE36M3。すでに4世代前のモデルになるが、その存在感は未だ色褪せてはいない。
そんなメーカーチューンが施されたM3の性能をさらに引き出すため、各部に手を加えたのがこのマシンだ。
「確かに完成度は高いと思いますけど、所詮ノーマルは万人向けですからね。メーカーとして妥協している部分を見極めて、オーナーの好みに合うよう味付けし直しました」とは、このM3を手掛けた“バックトゥゼロ”の櫻井代表。
そこでエンジン関係では、ノーマル(S50B30型)でもかなりの精度で突きつめられているIN&EXポートの修正にあえて着手。それも拡大加工は行わず、ガスケット部との段付きを修正したり、ポートが2つに分かれる部分の柱を薄くしたりといった比較的ライトな内容に留められているが、これで流速が上がった時のフィーリングが劇的に改善される。具体的には7000rpmを超えても苦しそうな雰囲気はまるでなく、どこまでもタコメーターの針が駆け上がっていきそうな感覚だ。
また、それにはEXマニ以降フルに見直された排気系も大きく貢献している。排気系は3→1とされたEXマニ直後のフロントパイプからワンオフ製作。2→1集合部までの長さは、理想とされるEXマニ長の2倍に設定される。さらに、集合部までの長さを合わせるために4〜6番シリンダー側のフロントパイプは大きくうねらせられる。パイプ径は54φ×2→70φだ。
音質の追求も忘れてはいない。サブサイレンサーは低音のこもりを抑えるために装着し、メインサイレンサーはタナベ製で共鳴管構造を採用することで、直6エンジンが放つエキゾーストサウンドをより甲高くクリアなものへと生まれ変わらせている。ちなみに、以前FD3SのNAブリッジポート仕様に乗っていたというオーナーも、このサウンドには大満足とのことだ。
一方、足回りチューンにも注目。フロントはツインチューブ式ダンパーをベースとしたロワシート調整式オリジナル車高調をセット。フロントは、リバウンドストロークを確保するためヘルパースプリングが組み合わされる。
また、サスメンバーはカブリオレ用クロスブレースバーで剛性アップが図られる。ブレーキは、ブラケットを介してR32用4ポットキャリパーをセットしているのが面白い。
リヤサスはダンパーとスプリングが別体式。バネレートはプライマリー20kg/mm、セカンダリー16kg/mmとかなりハードな設定に思えるが、櫻井代表いわく「まず車重がありますし、レバー比の関係から実効レートは8〜12kg/mmなので、硬いということは全くありません。高バネレートの直巻スプリングですが、フィーリングはノーマル形状と同等ですよ」とのこと。
加えて、各アームのブッシュ類をポリウレタン製に打ち替え、ゴムブッシュに匹敵する衝撃吸収力とピロボールなみのスムーズな作動を両立。さらに、ブッシュ部にジュラコン製カラーをかませてリヤサスメンバーの動きを規制し、リヤトーコンアームのピロ化によってトー変化を抑えるなどの見直しも図られている。キャリパーはR32用2ポットだ。
エクステリアは純正フェンダーを叩き出し加工(F20mm R40mm)した上で、フロント8.5Jオフセット+13、リヤ9.5Jオフセット+22のホイールを装着。タイヤは街乗りではフロントに225/40サイズのミシュランパイロットプレセダ、リヤに245/40サイズのコンチネンタルスポーツコンタクト2をセットしているが、サーキットではポテンザRE-01Rを履く。
ノーマルでもM3のエンジンフィールやハンドリングは高く評価されているが、それでもチューニングの余地は残されていて、その効果も十分に体感できるというわけだ。