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国産車用パーツを効果的に流用!
まさに全方位スキ無しの仕上がりに
1960年代半ばに登場したアルファロメオジュリアクーペGT1300ジュニア。半世紀以上も前にオールアルミ製DOHCエンジンや5速MTを搭載し、4輪ディスクブレーキを標準装備するなど、ようやくカローラやサニーといった大衆車が登場した当時の日本からすれば、それはレーシングマシンにも匹敵するモデルだった。
エンジンは89psを発揮した1.3LのAR00530型。半球形燃焼室と2バルブDOHCヘッドを持つアルファロメオのエンジンは、トヨタ2T-Gや三菱4G32、いすゞG180/200などに多大な影響を与えた。
オーナーの小野田さんはレストアベース車を購入。10数年前に行なったエンジンオーバーホールの際、社外ピストン組み込みとシリンダーブロック面研による圧縮比アップや、作用角が大きい純正カム流用などを実施。パワーやレスポンスの向上を狙うそんなチューニングに加えて、信頼性を高めるための改良も施された。
例えば、このエンジンの持病とされたヘッドガスケット抜け対策。シリンダーブロックがアルミ製、ライナーが鋳鉄製で熱膨張率が異なるため、熱が上がるとライナーが暴れ、それがガスケット抜けの原因となっていた。そこで、冷間時には意図的にブロックから飛び出すようにライナーをセット。熱が入るとライナー上面とガスケットが合って抜けを防ぐようにした。
エキマニの下、シリンダーブロック左側面に確認できるオイルフィルター取り付け部。純正は内部フィルターのみを交換するタイプだが、加工によってホンダ車用フィルターが使えるようになっている。
また、その前方には、オルタネーターとエアコンコンプレッサーを上下に並べて装着。どちらも国産品で、駆動のためクランクプーリーのダブル化も図られる。
縦型メインサイレンサーにハス切り斜め出しテールを持つマフラーは、社外品を加工して装着。また、デフにはOS技研スーパーロックLSDが組まれる。
ウッドパネルが貼られたクラシカルなデザインのダッシュボード。スピードメーターは220km/hフルスケール、油圧計を内蔵するタコメーターは5700rpmからレッドゾーンが始まり、目盛りは8000rpmまで刻まれる。シフトレバー先方に備わるのが水温計と燃料計。ブレーキ&クラッチペダルは吊り下げ式ではなくフロアから生えるタイプだ。
ミッションのシンクロには日産FS5C71A用を流用。どちらもポルシェシンクロが採用され、サイズも共通なことから実現した。71A用は耐久性が高く、強化にもなるというのが理由だ。
三角窓とリヤクォーターウインドウは開閉式。取材車両は外装をスプリントGTA(アルミ製ボディの軽量モデル)仕様としているため、ドアノブが簡素なタイプに交換されている。
その他、ヘッドライトやテールランプを始め、発光するところは基本LEDに交換。国産オルタネーターと併せて、旧車にありがちな電気系トラブルの原因になりそうな要素をできる限り排除している。取材車両は1969年式だから車歴はもう50年以上。それでも不安なく街乗りできるのは、要所を押さえたアップデートが施されているからだ。
●取材協力:オフィストミタク