「ダルマセリカをイジり続ける男の物語」カスタムワーク炸裂の1JZ-GTE搭載仕様がカッコ良すぎる!!

強心臓のクールビューティ

527馬力でバーンナウトもお手のもの!

80年代にアメリカのカスタムシーンで流行した“プロストリート”というジャンルが存在する。NHRAのプロストッククラスに出場するドラッグマシンを、ストリート仕様に落とし込んだスタイルだ。主にカマロなどのアメリカンV8をベースに、リヤアクスルをナロー化。ワイドなドラッグタイヤを装着し、室内にはロールケージを備える、といったあたりが定番メニューである。

高校生の時、人生初のクルマとして72年式カマロを買って欲しいとおねだりしたケリー・ミラー。父親からあえなくNGを喰らい、仕方なく第2候補として手に入れたのが「ダルマセリカ」の愛称で知られる初代のトヨタ・セリカだった。

だが、最初に手に入れたその74年式セリカGTをきっかけに、ケリーは自分の手でクルマを改造する喜びを体得。以来、複数台のセリカを所有しては、様々なカスタマイズを楽しみ、腕を磨いてきた。特に熱を入れて取り組んできたのがプロストリート。セリカはポニーカーを模範としたスタイリングのため、日本車でもプロストリートが似合うと確信していたのだ。

ケリーにとってはプロストリート仕様として歴代3番目のバージョンで、今のところの集大成とも言えるのが、この72年式セリカST。本来は1600ccツインキャブの2T-B型直列4気筒を搭載するが、その狭いエンジンルームに1JZ-GTE型の直列6気筒をぶち込んだ。

ヘッドカバーは日本仕様にのみ採用されたツインカムの18R-G型を再現したワンオフ削り出し品で、往年のオイルキャップも使用する拘りぶりだ。削り出しと分からなくなることも厭わず、黒のパウダーコートで表面処理を施した。

プレシジョンのPTE6875 Gen2ボールベアリングターボを搭載し、ブースト1.26キロで527psの最高出力を誇る。吸気には削り出しのインマニとワンオフのサージタンクを備え、モーションレースワークス製102mmスロットルボディをインストール。インジェクターは1700cc仕様に増量して、フレックスフューエル化しているものの、現状は91オクタンの一般的なガソリンで運用。マフラー以外の排気系も全てワンオフで、ECUはAEMのシリーズ2を採用する。

ホイールはビレットスペシャルティーズのストリートライトで、サイズはフロントが6.0J×15、リヤが12.0J×15。それにミッキートンプソンのドラッグラジアルを組み合わせ、フロントが195/50R15なのに対して、リヤはストックフェンダーに325/50R15を収めるプロストリートらしい出立ちだ。

一方のブレーキは、RX-7の純正キャリパーとR1コンセプトのローターを使用して前後ディスクブレーキ化。フロントのサスペンションにはテクノトイチューニングの調整式ロワコントロールアームやナックル、タイロッド、キャンバープレートを使用。前後それぞれQA1とKONIの車高調も備わる。

リヤアクスル(ホーシング)は16インチ短縮し、ファイナル4.10のトヨタ純正Gシリーズ8インチデフを内蔵。ノーマルのリヤサスはスプリングとダンパーが別体となる4リンク式だが、ナロー化と同時に車高調やアーム類を取り付けられるブラケットを設け、オリジナルのマルチリンクを実現している。

グレードによって形状が異なるフロントグリルは、ベースのSTグレード用を再現したビレット削り出し品を装着。「素材のアルミビレットの重量が45ポンド(約20kg)あったのに、最後には3.8ポンド(約1.7kg)になっちゃったよ!」と、ケリーは嬉しそうに笑う。

その他のトリムやバッジ類も再メッキ処理やポリッシュ加工を加えるなど、美観を復活させている。ヘッドライトはBMW3シリーズのプロジェクターを流用してHID化。細見のドアミラーはハーレー用をワンオフのブラケットで装着する。

北米仕様なのでハンドル位置はもちろん左だったのだが、70系カローラのラック&ピニオン、鋼管を繋いでワンオフで製作したクロスメンバー、豪州仕様のダッシュボードを用意して右ハンドルへとコンバート。面白そうだと思ったことは何でもやってしまうのがケリー流なのである。

トランスミッションは、TH350という旧式のGM製3速ATを組み合わせている。

プロストリートのアイコンとも言えるロールケージは12点式の溶接留めだ。フロントシートはカーキーのドラッグレース用を使用し、リヤシートをデリートした後にはヒューズボックスが備わる。トランクには20ガロンの燃料タンクやバッテリーを搭載。

CADデザイナーとしてマーチャンダイズメーカーに勤務する一方、地元のカリフォルニア州サクラメント近郊にプライベートガレージも構えるケリー・ミラー。一途にセリカを愛し、同じクルマをいじり続けることでネクストレベルを実現してきたトヨタガイだ。周囲に作業を手伝ってくれる友人がいたり、旧いトヨタ車の情報を共有できるコミュニティも広がるなど、恵まれた環境への感謝も口にする。

もはや、趣味のレベルを遥かに超えたクリエイションを実現しているケリーのプロストリート・セリカ。破天荒なアイディアと緻密な作りが同居する姿は、同じクルマに愛情を注ぎ続けるカーガイの魂が表現されている。

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PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

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