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激っ速なコンフォート教習車!?
リヤリジッドサスの4発FRターボ爆誕
1995年12月に発売されたコンフォートは、タクシーや教習車として使われることを念頭にトヨタが開発した1台。何よりも実用性を重視した質実剛健のクルマと言っていい。
ここで紹介するのはベースこそ教習車なのだが、エンジンが3S-FEからカルディナの最終モデル、ST246W用の3S-GTEに換装されているのだ。これでパワーは130psから260psに倍増。トルクも18.5kgmから33.0kgmへと8割ものアップを果たしている。車重は1290kgだから、動力性能的には申し分なしだ。
コンフォートと言うと2003年に発売され、60台ほどがデリバリーされたTRDのコンプリートカー、GT-Zスーパーチャージャーがよく知られるが、スペックは160ps、22.5kgm。3S-GTE換装仕様はそれを軽く上回るばかりか、「やっぱ過給機はスーパーチャージャーよりターボだよね」というチューニングカー好き連中の心により深く刺さる点でも、GT-Zスーパーチャージャーを完全に凌駕しているのは間違いない。
「製作コンセプトは、“JZX100と並んで、実はトヨタがJTCC参戦車両として富士でテストを重ねていた幻のマシン”ですね。極秘テストでは、トム・クリステンセンの評価は高かったんですけど、空力的な問題からトップスピードが伸びず、関谷さんが首を縦に振らなかったんでコンフォートはお蔵入り。結局、チェイサーでJTCCに参戦することになった…というシナリオ(ただの妄想!? 編集部注)まで出来ています。エンジン載せ換え作業が終わったばかりでまだ車高を落としてないんですが、18インチのOZラリーを履かせているのは、そういうことなんですよ!!」と鼻息も荒く一気に捲し立てるのは、この変態マシンをプランニングしたSKT坂田さん。
実作業は、エンジン換装において多くの実績を持つダディーモーターワークスが担当した。
エンジンの換装にあたってはオイルパンをSXE10用に交換して、シリンダーブロック側にマウント用のプレートを追加。サージタンクはSXE10用を使ってスロットル位置を適正化している。
SXE10純正サージタンクに組み合わされたカルディナ用スロットルボディ。60φパイピングを介してフロントバンパー奥に汎用インタークーラーが装着される。ラジエターはSXE10用を流用。
ステンレスマフラーはダディーモーターワークスのワンオフ品。メインパイプ径は76.3φで、中間にサブサイレンサーを設けることで、排気効率の向上と消音性を両立している。
インパネ周りはシフトノブが球状のジュラコン製に交換されている以外ノーマル。また、コンフォートの5速MTとSXE10の6速MTではスターターモーターの位置が逆になるため、ベルハウジングを加工してスターターが取り付けられる。
教習車ならではの装備がこれ、助手席側からしか見えないデジタル式スピードメーター。法定速度を守って走りましょうという状況で、教官は1km/h単位で速度を監視できるわけだ。その下にハザード&足元を照らすフットランプスイッチが並ぶ。
まさに実用セダンそのもの、サポート性とは無縁のシートに座って走り出す。3000rpm手前からトルクの盛り上がりを感じ、3500rpmを超えるとタービンが本格的に稼働。エンジン本体はノーマルだが、想像以上の加速を見せてくれる。というか、凄まじく速い! ただし、1~2速はギヤ比が低いからか、あっという間に吹け切ってしまう。トルクがあるので、もっとハイギヤードでも良いと思う。
直4ターボ搭載のスポーティFR車というと、日産にはシルビア/180SXという鉄板モデルが長らく存在したが、トヨタでは国産車初のDOHCターボエンジンを載せ、1982年から1985年にかけて販売されたTA60系セリカ/コロナ/カリーナが最後。
アルテッツァ280Tなんてのも確かにあったが、100台限定のトムス製コンプリートカーだから、トヨタのカタログモデルとしてカウントするにはそもそも無理がある。
ちなみに、コンフォートはリジッド式リヤサスを採用。つまり、4発ターボの4T-GTEUを搭載し、200台限定のグループBホモロゲモデルとして発売されたTA64セリカGT-TSと同じパッケージングを持っているということだ。そう考えると、このコンフォート教習車改3S-GTE換装仕様の価値も一層高まる…かもしれない!?
●取材協力:SKT TEL:042-519-9826