「あまり評価されなかったけど、お前は対ツアラーVの急先鋒だったよ!」最終型ギャランVR4の魔力を振り返る

レアな後期型タイプVを捕獲!

スポーツカー顔負けの動力性能

シリーズ3代目にあたり、ギャランVR-4としては最後のモデルとなったEC5A。発売は1996年8月のことで、2.5L V6ツインターボの6A13型エンジンを搭載していた。駆動方式はビスカスカップリング式センターデフを持つフルタイム4WD。グレードは、素のVR-4(1998年以降の後期型ではタイプV)とタイプSの二本立てだ。

両車の決定的な違いは駆動系にある。タイプSはマニュアルモード付き5速AT(INVECS-II)のみの設定で、コーナリング性能を高めるAYC(アクティブヨーコントロール)をリヤデフに採用する他、4輪各ブレーキとエンジン出力を協調制御して操安性を向上させるASC(アクティブスタビリティコントロール)+TCL(トラクションコントロール)も搭載された。逆に言うと5速MTで6A13ツインターボを楽しみたいなら、前期型素のVR-4または後期型タイプVという選択肢しかない。

そこで中古車情報を見てみると、圧倒的多数は5速ATのタイプS。車格を考えればまぁ当然のことで、取材対象として狙いを定めた5速MTモデルを見つけるのに苦労したが、何とか後期型タイプVを探し出すことに成功した。

ステンレス製エキマニを介して片バンクに1基ずつTD03タービンを備える6A13。ツインターボ仕様はギャラン/レグナムVR-4専用エンジンで、280ps/37.0kgmを発揮する。ボディ剛性確保のため装着されるフロントストラットタワーバーはVR-4専用品。

6A13ツインターボは2000rpm付近でも十分なトルクを発揮し、早めのシフトアップ&高いギヤでのルーズな走りを余裕で受け入れる。アクセルペダルを踏む右足の動きにレスポンス良くエンジンが反応し出すのは3000rpmから。同時に過給圧も高まり、3500rpmを超えると蹴り出されるような加速が始まる。

タコメーターの針の動きは4000rpmを境に勢いづき、パワーを一段と増しながらレブリミット目がけて跳ね上がっていく。6800rpmを目安としたシフトアップで1速からフル加速すると、2速へは4800rpmで、3速へは5000rpmでバトンタッチ。確実にパワーバンドに収まっているから、加速感が途切れることはない。

スーパーインテリア仕様を選ぶと内装色がベージュ&ブラックの2トーンとなり、シート表皮にも本革が採用されるなどラグジュアリー感が高まる。それ以前にタイプVの5速MT車でスーパーインテリア仕様というのが珍しい。

取材車両は本革&ウッドコンビのナルディ製ステアリングホイール、木目調センターコンソールパネル、レザー調リッド付き大型センターコンソールボックスなどを装備するメーカーオプションのスーパーインテリア仕様。メーターはイグニッションオンで黒いパネル面に指針や文字盤が浮かび上がり、視認性に優れるハイコントラストタイプを採用する。

当時、国産メーカーの2.5Lターボと言えば、トヨタ1JZ-GTEと日産RB25DETがあった。それらに対してパフォーマンス的に肩を並べるのが6A13ツインターボだ。どれも試乗したことがあるが、パワー感や走りは少なくとも前期1JZ(VVT-iなしツインターボ)とRB25より一枚上手、後期1JZ(VVT-i付きシングルターボ)と良い勝負だと思う。

もう一つ付け加えれば、JZX90/100もER34もFRだけど、EC5Aはフルタイム4WD。速さに加え、状況に左右されにくい安定感の高さまでを考えると、その魅力も倍増する。

2.5LクラスのスポーツセダンはJZX90/100が圧倒的な人気を集め、それにER34が続く状況だった。一方、EC5Aはと言うと完全に蚊帳の外で、クルマ好きにもあまり認識されてなかったような気がする。ツアラーVに対して互角以上の走りを見せてくれるVR-4が正当に評価されなかったのは実に惜しいことだ。

影が薄かった2代目VR-4

WRCで戦った初代E39A(1987~1992年)の武骨なイメージから一転、3ナンバーのラグジュアリーセダンへと大きく舵を切った2代目E84AギャランVR-4(1992~1996年)。

エンジンは78.4φ×69.0mmのショートストローク型となる6A12。VR-4には240ps(4速AT車は215ps)/31.5kgmを誇るツインターボ仕様が搭載された。

競技ベース車両とは無縁になった上、5ドアハッチバックのギャランスポーツやエメロードなど派生モデルが増えたことでVR-4の存在感が希薄になったことは否めない。また、FTOと同じ6A12MIVEC(200ps)を搭載するFFモデルVX-Rも追加されるなどラインナップを拡大した。

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TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Hiroshima Kentaro)

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