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走りと実用性の高さが色褪せない魅力!
ブーストアップで400馬力を叶える快速ワゴン
1996年10月に登場した日産の新型ステーションワゴン、ステージア。RB25DETを搭載し、フルタイム4WDで駆動する25RS FOUR Vがスポーティグレードとして存在したが、それをベースに誕生したのがオーテックバージョン260RS。1997年10月のことだった。
RB26DETTが載せられ、アテーサE-TSを採用。それに伴いボディ各部の補強やブレーキ強化なども図られた。また、25RS FOUR Vを含め、リヤサスはBCNR33と共通。そのため、全幅との兼ね合いから前後ホイールは異なるオフセットが与えられることになった。
ベースのステージアが1998年8月にマイナーチェンジを受け、10月にオーテックバージョン260RSも後期型にスイッチ。生産台数は前期型が約1000台、後期型が約700台と言われる。取材車両は2001年式の最終型だ。
「ホイールベースが長くて挙動がマイルド。長距離移動も楽にできる快適なクルマですよ」と言うのはオーナーの茅野さん。
エンジンはHKSの強化アクチュエーターを用いたブーストアップ仕様(ブースト1.2キロ時に400ps)だが、吸気系はブリッツエアクリーナーにARC純正置き換えインタークーラー、トラストインタークーラーパイピング、排気系は東名エキマニ、BNR34純正タービンアウトレット、スティルウェイチタンフロントパイプ、HKSメタルキャタライザー、トラストマフラーと、吸排気環境はキッチリと整えられる。それに合わせて駆動系はニスモスポーツクラッチで強化。カッパーミックスタイプで扱いやすさを損なうことなく、伝達トルク容量を高めている。
フロントグリルは純正ハニカムタイプに代え、DR30をオマージュして横バータイプのXグレード用を流用。リップスポイラー一体型フロントアンダーパネルはボルトオンでいけるBNR34純正を装着する。
4本スポークタイプのモモ製ステアリングホイールは後期型WGNC34改に標準装備。純正シフトノブはBCNR33と共通と思われる。
メインメーターは320km/h(タコメーターは純正同様1万rpm)フルスケールのドルフィン製に交換。センターコンソールには純正ブースト計、油圧計、前後駆動トルク配分計が並ぶ。
前席は後期型BNR34純正シートを装着。「フロア形状が同じなので、完全ボルトオンでいけるんですよ」と茅野さん。ちなみに、標準シートやドアトリムなどに使われる生地はWGNC34改専用となる。
Lクラスワゴンらしく、幅、奥行ともに十分なラゲッジルーム。リヤクォーターウインドウ下のレバーで60:40分割式の後席背もたれを前倒しすると、荷室長は1800mm以上に拡大する。ウーファーは当時モノだとか。
足回りにはアラゴスタ車高調をセット。ベースが25RS FOUR V用のため、リヤは6kg/mmのまま、フロントのスプリングレートのみ8kg/mmから9kg/mmに高めてバランスを取る。アッパーマウントは快適性を重視して、あえてゴムブッシュタイプを選んでいる。
また、ブレーキは標準でブレンボ製フロント4ポットキャリパー+324mmローター、リヤ2ポットキャリパー+300mmローターを装備するが、取材車両はフロントにF50キャリパー+355mmローターを組んで容量アップを実現している。
ホイールはワークエクイップの19インチ。前後8.5Jでオフセットはフロントにプラス25、リヤにプラス18を履く。
リヤコンビネーションランプはフルLEDのワンオフ品。WGNC34改は全車寒冷地仕様のため、右側テールランプにバックフォグを内蔵するが、そこをクリアレンズ化。バックフォグ機能を活かしながら、バックフォグON状態でリバースギヤに入れるとバックランプとしても機能するギミックを追加している。
車両型式に『改』が入ることから分かるように、オーテックバージョン260RSは持ち込み登録車両。「なので、例えば同じ後期型でも、クルマによって車検証上の車両重量が違っていたりするんです。他にも、フロントバルクヘッドにヒートプロテクターが付いているクルマがあったり、なかったりとか。その理由までは分かりませんが、少なくともオーテックが1台ずつ仕上げていた証ではあると思いますね」。コアなオーナーしか知り得ない、そんな興味深いエピソードを茅野さんは話してくれた。
見た目こそステーションワゴンだが、中身はまんま第二世代GT-R。となれば、オーテックバージョン260RSを『国産最強ワゴン』と呼ぶことに異論を挟む余地などないはずだ。
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Hiroshima Kentaro)