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旧車を維持する苦労からの解放!
オリジナル状態を上回る快適性と走行性能を実現
旧車だからといって我慢を強いられたくはない。トラブルの心配をすることなく快適に乗れて、そこに速さもプラスされれば文句なし。そんな理想を形にしたのが、“ダディーモーターワークス”でエンジンとミッションを載せ換えたBMW2002だ。
歴代BMW02シリーズの中で、2.0L直4SOHCエンジンを搭載したのが2002。シングルキャブのベースモデルに始まり、ツインキャブ仕様のti、機械式インジェクションを採用したtii、最後にターボ…とモデルバリエーションを増やしながら、1968年から1975年まで生産されたBMWの傑作だ。
そんな2002を手に入れたオーナーは日常の足として乗れるよう、エンジンとミッションの換装を計画。ホンダF20Cと6速MTを軸に、エンジン制御用ECUやメインメーターなどを用意した。かつてMZ20ソアラにJZA70スープラの1JZ-GTEを載せ換えたことがあるオーナーは今回も自分で作業するつもりだったが、高い難易度が想定されたため予定を変更。愛知県のダディーモーターワークスに作業を依頼することにした。
「始めは“外車はやりませんよ”と断られまして。そこで何度も足を運んで代表の尾頭さんと話をして、最終的には“ノーマルから完全に作り替えるなら”という条件で作業してもらえることになりました」とオーナーは言う。
エンジンとミッションの換装に伴い、まずフロントサスメンバーをAE86用に変更。ストラットはR30を加工流用。サブフレームは補強を行なった上、オイルパン形状に合わせて前側をカットしている。ステアリングラックはAE86左ハンドル仕様のものを装着。ラック本体を固定するブラケットは、左右を入れ替えることで右ハンドル仕様にも左ハンドル仕様にも使えるリバーシブル設計なのが合理性を追求するトヨタ的。ミッションはAP1純正6速MT。
ミッションマウント新設のため、モノコック側に台座を作り、プロペラシャフトはクラウン用とS2000用を継いだ物になる。また、デフは許容トルクを高めつつ、ファイナルギヤの選択肢が多いトヨタの7.5インチに交換。そこにGX71用サイドフランジを加工して2002純正ドライブシャフトが組み合わされる。
ちなみに、ファイナル比は高速巡航時のエンジン回転数をできるだけ低く抑えたいことから、ハイギヤードな3.7をチョイス。タイヤ外径が小さく(165/50R16=約571mm)、必然的にロ―ギヤード方向に振られるが、それでも2速9000rpmで100km/hを超える。車重はS2000より200kgほど軽い1050kgしかないから、エンジンがノーマルでも、その動力性能の高さは容易に想像できるというものだ。
作業を担当した尾頭さんいわく、「正直GRヤリスのエンジンを載せたハチロクと同じか、それ以上に手間が掛かってますね。エンジンを載せる前段階、特にフロントサスメンバーの加工や位置合わせからして大変でした。あとは電装系。エンジンハーネスはS2000用を使ってますけど、ボディハーネスは全て一から作り直し。ノーマルの電装系で残っているのはライト類の電球部くらいですよ」とのこと。
ブレーキはマスターバックにサニトラ用、マスターシリンダーにシルビア用、キャリパーにR30用を流用。本来サージタンク側面に付くアイドルコントロールバルブはマスターシリンダーとの干渉を避けるため、後方に移設される。
また、日常の足として乗りたいというオーナーのリクエストに応え、快適装備も抜かりなし。エアコンはアメリカ製の汎用キットを装着し、ステアリングコラムごとスズキ製に交換することで電動パワステ化も図られる。
シートはレカロの電動調整タイプ。後席はノーマルだが、前席と同じ生地に張り替えることで室内に統一感が持たされた。
さらに、ハザードランプとリヤデフォッガーのトグルスイッチやエアコン操作ダイヤルが並び、その下にナビモニターが収まるセンタ―コンソールも尾頭さんによるワンオフ。アルミ板を成形し表面をレザー張りとすることで、ノーマル然としたフィッティングを見せる。
エンジン&ミッション換装がもたらすメリットは、信頼性や扱いやすさが向上し、パーツ供給やアフターメンテナンスにも苦労することなくクルマを維持できるなど多数。その上で、現代の道路事情でもストレスなく乗れる快適性を兼ね備えたこのBMW2002は、旧車を長く楽しみたいオーナーにとって理想とも言える1台だ。
●取材協力:ダディーモーターワークス 愛知県豊明市沓掛町神明13 TEL:0562-85-9911
【関連リンク】
ダディモーターワークス
http://daddymotorworks.com/