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幻のNAグレード“2000GX”をベースにVR化!
エンジンはG63B改DOHCツインキャブを搭載
プロチューナーからも一目置かれる三菱マニアのプライベーター“布田”さんが、約一年を費やして完成させたのが今回紹介するスタリオンGX改ワイドボディ仕様。名付けてスタリオン2000GX-VRだ。
何と言っても注目すべきは、ベースとして選んだ“GX”というグレード。まずは、それがどんなものかを知らないことには話は始まらない。
スタリオンは1982年にデビューした三菱最後のFRスポーツモデル。1990年の生産終了までの約8年間に様々なバリエーション展開がなされ、そのフラッグシップに位置するのがワイドボディ仕様のGSR-VR(2.0Lターボ/2.6Lターボ)。
対してGXは、その最初期のみに設定されたNAのG63Bを搭載するベースグレード。生産期間は1982年4月から8月までの4ヶ月のみで、世に送り出されたのは606台。布田さんによると、国内で現存しているのはわずか3台しかないという激レアモデルだ。
そんな貴重なモデルと知ると、煩悩にまみれた素人的にはオリジナルを維持した方が…と考えてしまうが、布田さんにとってはあくまでも理想のスタリオンを作るための『素材』でしかないのが凄いところだ。
製作にあたってのコンセプトは「三菱が設定しなかったNAバージョンのVR」というもの。特徴的な前後ワイドフェンダーは、部品取り用にキープしていた2600GSR-VRから移植。リヤはクォーターパネルをカットしての大作業が必要となるが、布田さんは内部に補強を追加するなど手前を掛けながら純正クオリティを目指した。
苦労の末に完成したボディに搭載されるのは、E33AギャランAMGのDOHCヘッドを組み合わせたG63B改。丸ごと4G63をスワップするのではなく、腰下をG63Bとするのが布田さんの拘り。その理由は、エンジン変更の改造申請が不要なことに加え、無加工でミッションが装着できる点にもある。さらにAMGのクランクシャフト、ピストン、コンロッドもそのまま組み込むことが可能なのだ。
また、このGX-VRでは“旧車らしさの追求”もテーマの一つだったため、アダプターをワンオフ製作してOER製45φツインバレルキャブレターとディストリビューターをインストールした。
その一方で、パワステやラジエターファンの電動化など、要所にアップデートが施されているのも注目ポイントと言える。快適にストリートを楽しめるチューンド旧車なのである。
ベース車の素性が分かる数少ない部分がインテリアで、レッド系の内装色はナローボディグレードのみに設定されていたもの。7500rpmスケールのタコは、GSR-V用を流用している。
こうして唯一無二の存在として、晴れてナンバーを取得したスタリオン2000GX-VR。現在はキャブレターを中心としたセッティングの最中なのだが、「どんな感じか乗ってみます?」と言ってくれたので、その走りを味合わせてもらった。
何より印象的だったのは、キャブ仕様NAならではの旧車感。実用域の低速トルクも必要にして十分で扱いやすいのだが、やはり真骨頂はハイカムが効果を発揮する3500rpmからの領域で、グォーッという吸気音をBGMに気持ち良い加速感が楽しめる。これは確かにインジェクションターボ仕様の2000/2600GSR-VRとは異なる、このマシンだけの大きな魅力と言えそうだ。
さて、これで2.0Lターボ、2.6Lターボ、NA2.0Lと3台のスタリオンVRをコンプリートした布田さん。スタリオンベースでの次なる野望は、何とロータリーエンジン搭載なのだとか。こちらも着々と準備中とのことだから、期待せずにはいられない。
REPORT:川崎英俊