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RRも4WDも5速MTのみという漢仕様
この破綻したディメンジョンがたまらない・・・
スペイン語で日曜日を意味するドミンゴ。それを車名に冠したモデルがスバルから登場したのは、1983年10月のことだ。ボディは4代目サンバートライのハイルーフ車をベースに全長を約200mm、全幅を35mm拡大。シート配列2-2-3の7人乗りとして、リヤエンドにはグロス表示で56ps/8.5kgmを発揮する1.0L直3SOHCのEF10型エンジンが搭載された。
駆動方式はパートタイム4WD(車両型式KJ6)とRR(同KJ5)の2種類を用意。グレード展開はパートタイム4WDが上からGS-Sサンルーフ、GS-S、GS、GFで、RRのグレード名はGをCに代えたものとなる。ミッションは駆動方式やグレードを問わず1994年の生産終了まで、一貫して5速MTのみだったのが実に男らしい。
1986年8月のマイナーチェンジで、フロントバンパーが無骨な鉄製からエアダム一体成型の樹脂製に替わり、サンルーフ車のルーフショルダー部にガラスをハメ込んだサンサンウインドウが追加された。
また、パートタイム4WDモデルには排気量を1.2Lに拡大した直3SOHC3バルブ仕様のEF12型(52ps/9.7kgmネット表示)が搭載されることになり、車両型式をKJ8に変更。RRモデルは引き続きEF10型が載せられたが、スペックは48ps/8.2kgmとネット表示に改められた。
その後、1988年にかけて4WDシステムがパートタイム式からフルタイム式に切り替えられるなど進化。このフルタイム4WDがまた変わっていて、トランスファーケース内にワンウェイクラッチを内蔵。普段は直結4WD状態で、タイトコーナーブレーキング現象が顔を出すUターン時など前後輪の回転差が大きくなるとクラッチが作動して前輪への駆動力をカットする。
スバルではフリーランニング式フルタイム4WDと呼んでいたが、先にも後にもドミンゴだけに採用された変態メカニズムであることは間違いない。
取材車両は前期型4WDの最上級グレードGS-Sサンルーフ。30年前に中古車で買ったオーナーがディーラーメンテを重ねながら乗り続けているという筋金入りの練馬52ナンバーを見て、思わず気を失いそうになる。
軽バンベースだけにボディは絶対的にコンパクト。とくに約1.4mしかない超ナローな全幅と、わずか1.8mというスーパーショートホイールベースのコンビネーションは異常で、ディメンションが著しく破綻しているように感じてしまう。
外装では、サンバートライとの差別化を図った角目4灯ヘッドライトと鉄製バンパーが織りなす力強くもどこかファニーなフロントマスク、GS-S/CS-S系に標準装備される当時流行したカリフォルニアミラー、誇らしげな4WDロゴ入りサイドストライプが特徴だ。
ホイールは純正オプションのアルミ製で、155/80R12サイズのスニーカーが組み合わされる。ちなみに、最低地上高は4WDもRRも205mmを確保。悪路走破性をしっかり考えてるところが、いかにもスバルらしい。
続いておもむろにスライドドアを開けて内装チェック。このボディサイズにして3列シートを実現してることに感銘を受ける。それは日本人独特のものだと思うのだが、箱庭や盆栽を愛でるのにも似た感覚と言ったら分かってもらえるだろうか。もちろん、大人7人フル乗車となれば肩を寄せ合うのは必至だが、不思議なものでそれすら楽しめるような雰囲気がドミンゴにはあるのだ。
2名掛けの2列目シート。リクライニングの他、リンク機構によって3ヵ所で固定できる簡易的な前後スライド機能もあるのだが、これがかなり秀逸。一番前にすると座面がフロアまで落ち込み、そこで背もたれを前倒しにした上で3列目シートをダブルフォールディングすると、ほぼフラットなラゲッジスペースが出現する。
3列目シートは3人掛け。2列目シートの背もたれを後ろに倒せばフルフラット化が可能で、大人2人が横になれるので、今流行りの車中泊も楽勝だ。さらに、後期型ではセンターアームレストが追加されるなどバージョンアップが図られている。
インパネ周りはシンプルで、軽バンベースだけあって全体的にコンパクト。メーターはスピードメーターとタコメーターの間に燃料計と水温計が配置される。ちなみに、オドメーターは5桁表示なので10万kmで『00000』に戻る。走行距離は25万8000km(取材時)だ。
センターコンソールは上段右側に1DIN分のオーディオスペース、左側にシガーソケットとクーラー用ダイヤル、中段右側にマニュアルエアコン操作部、左側に引き出し式灰皿、下段中央にエアコン吹き出し口を配置。その右側にプッシュ式の4WD切り替えとリヤデフォッガー、左側にリヤワイパー&ウォッシャーとリヤヒーターの各スイッチが設けられている。
前後左右方向ともにストロークが大きめの5速MT。球状のシフトノブは握りやすくて操作性も良い。アクセルペダルはオルガン式で、ブレーキペダルとクラッチペダルの間をステアリングシャフトが貫通している。
大きな開口面積を誇るサンルーフは手動開閉式。「雨漏りするから」ということでハメ殺しになってしまってるのが惜しい! 前席上部のオーバーヘッドコンソールにはスピーカーが装着される。室内高は1390mmを誇り、車内での移動も楽々だ。
3列目シートを起こした7名乗車の状態で、ラゲッジルームの奥行きは約30cm。絶対的には狭いかもしれないが、上方向に積めることを考えれば、容量的には十分とも言える。むしろ全長3.4mのボディでこれだけのスペースを確保しているのだから拍手ものだ。
運転席に収まって、抱え込むようなステアリングと上から踏みつけるペダル類の位置関係をまず確認する。ドライビングポジションは完全にキャブオーバー車のそれだ。
リヤエンドで唸るエンジン音を聞きながらシフトレバーで1速を選び、踏み応えのないクラッチペダルをリリース。4WDなのに900kgしかない車重と、相当にローギヤードな1速ギヤのおかげで出だしは非常に軽快…というか、最大トルク8.5kgmの1.0Lエンジンとは思えないほど力強い。代わりに1速は20km/hも出せばもういっぱいで即2速にチェンジ。そんな調子で街乗りではすぐ4速5速まで入るんだけど、全体的にギヤ比が低いから、何速に入っていても1500rpmからグイッと前に出ていってくれる。
圧巻は片側1車線、対向2車線での方向転換。ノンパワステゆえフルロックまでの据え切りにはちょいと力がいるけど、なんと一発でUターンしてしまったのだ。ドリフトマシンもビックリな、人智を超えたステアリング切れ角。最小回転半径3.9mの凄さを体感できたことに感謝するしかない。
1999年、現行規格の軽バンをベースとした3列シート6~7人乗りのエブリィプラスやアトレー7、タウンボックスワイドが出てきたが、それらの15年も先を行っていたのがドミンゴなのだ。
■ドミンゴGS-Sサンルーフ
車両型式:KJ6
全長×全幅×全高:3410×1430×1900mm
ホイールベース:1805mm
トレッド(F/R):1210/1210mm
車両重量:900kg
エンジン型式:EF10
エンジン形式:直3SOHC
ボア×ストローク:φ78.0×69.6mm
排気量:997cc 圧縮比:9.5:1
最高出力:56ps/5400rpm
最大トルク:8.5kgm/3200rpm ※グロス表示
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/セミトレーリングアーム
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR155SR12