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FRチューンドの歴史を塗り替えた最高速戦闘機
国産チューンドの威信とプライドを賭けて
「ワーカム北海道は高速周回路といっても谷田部より狭いんです。全長5.5キロの谷田部に対してワーカムは5.0キロですから。加えてアタック当日の路面はハーフウエット。もう不安だらけでしたよ…」。かつての挑戦記を思い出しながら、最高速チューナーとして名を馳すフェニックスパワー横山代表が語り出す。
遡ること16年前。2006年11月25日。日本最北の地にそびえ立つ高速周回路を舞台に、地方ローカル番組主催の最高速チャンレンジが開催された。集まったマシンは、SLRマクラーレンやフェラーリF50など世界に名だたるワールドプレミア6台に、フェニックスパワーが手掛けた国産チューンド2台を加えた計8台。うち1台がこのJZA80だった。
「谷田部時代から最高速に挑戦してきたチューナーとしての意地、そして国産チューンドのプライドに賭けても負けたくなかった」。ボンネットを開けながら同氏。
丁寧に作り込まれたフルチューン2JZ-GTEエンジンが顔を出す。この至宝のパワーユニットこそが、欧州スーパースポーツ勢を蹴散らし、国内FRチューニングカー最高速ランキング歴代1位となる339.7キロを叩き出した原動力であることは言うまでもない。
「ストロークアップでの3.4L仕様は上が重くなる。最高速はやっぱり高回転の伸びが重要」との理由から、1mmオーバーサイズのHKS87φ鍛造ピストンを軸とした3.1L仕様を横山氏は選択。
そこにJUNのステージ2カムキットおよび、トラスト最大級の風量を誇るT88-38GKタービンをセット。エキゾーストハウジングは22cm2ではなく、ブーストの立ち上がりを優先してあえてワンサイズ小さい18cm2をチョイスした。合わせて吸入効率を限界まで高めるために、トラストの大容量サージタンクを介してスロットルバルブには90φのインフィニティQ45スロットルを使用。パイピングも90φだ。
エキゾーストチューンも徹底。ナンバーレスの完全競技車両と割り切って製作されているため、純正触媒は第一、第二ともに取り除かれ完全ストレート化。マフラーは2次排圧を低減させてブーストレスポンスを向上させることを目的としたオリジナルのデパーチャーマフラー(フロントパイプからエンドまで90φ)を装備する。
そうしたパワーパッケージに、F-CON Vプロによる緻密なエンジンマネージメントを組み合わせることで、5000rpm〜8200rpmというワイドなパワーバンドを誇り、踏みこめば即パワーが追従するピックアップの良さを併せ持つエンジンが完成した。最大出力もブースト圧1.5キロ時に850psと、申し分ない数値を誇る。
そして足回り。アラゴスタベースのオリジナルサスは、フロント運転席側の減衰力を高めにした独特のセットアップが施され、バネレートもフロント28kg/mm、リヤ14kg/mmと変則的なのだ。
これについては「左周りのバンクで、最も重要なのはフロントの運転席側なんですよ。一般的な減衰力やレートでは、バンク進入時にかかるGに負けて飛んでいっちゃいますから」と横山氏。アーム&ブッシュ類はノーマルとしている。
また、850psを受け止めるべくブレーキチューンも徹底。フロントにGReddy6ポットシステム(355mmローター)を、リヤにも同社の4ポットシステム(330mmローター)を装備する。
アタック時のホイールはBBS製の鍛造20インチ限定モデル『LM185&186(ダイヤモンドブラック)』(F8.5J R10.0J)で、タイヤはアドバンスポーツ(F245/30 R275/25)をセット。3.2ファイナルとの組み合わせによって、理論的には6速7200rpmで320キロオーバー、8000rpmまで回れば350キロオーバーも可能だ。
その他、生半可な空力パーツはオーバー300キロの領域では役に立たないという判断から、エクステリアには最高速シーンで実績のあるトップシークレット製フロントバンパー&アンダーパネルを導入するだけに留めるなど、30年来、最高速に挑戦しつづけ得た膨大なノウハウが随所に注ぎ込まれているのだ。
「ドリフトがもてはやされている時代やけど、やっぱり僕は最高速が好きなんです…。エンジンや空力特性、そしてサスなど、全ての要素が高次元にバランスしてなくてはNGなステージやからね。今、イタリアの高速周回路(ナルド)にいく計画があるんですよ。R35GT-Rでね。その時は400キロを超えてみせます!」。
横山氏の、そしてフェニックスパワーの飽くなき最高速への挑戦は、まだ終わらない。
PHOTO:Masahisa FUJITA
●取材協力:フェニックスパワー (福井店)TEL:0776-67-2980 (京都店)TEL:0774-48-1157
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