目次
K20A搭載のミニとかヤバすぎる!
ファニーなルックスに秘められたパワーウェイトレシオ2.5の加速力
ミニと言えば、この日本でも多くのファンがいるミニマムカーだ。小さくて可愛いフォルムは、経済性と実用性をとことん突き詰めた結果生まれたもので、基本設計の優秀さから、1959年から2000年まで約40年間も生産が続いた名車として知られている。
居住性を限界まで高めるために、タイヤは車体の四隅に配置して小径化。前後オーバーハングも極限まで切り詰めたのだが、それが結果的にワイドトレッドで低重心のクルマを生みだし、レースの世界でもミニは活躍した。
趣味に実用に、レースにカスタムに…と“素材”としてあらゆるクルマ好きに愛されているが、それがアメリカ流となると、ここまで料理されてしまうのだから面白い。
カリフォルニアにあるJER(ジャパン・エンジン・レーシング)デベロップメントは、その名の通り、日本車チューンを得意とするショップだ。この1967年式モーリス・ミニピックアップのオーナーであるリンは、そんなJERの代表を務めるカーガイにしてホンダフリーク。「何かユニークな事にチャレンジしたかった」のが製作のきっかけで、この小さなクルマにK20Aエンジンを積むことを思い付いた。
エンジン&ミッションのドナーは、2005年式のアキュラRSXタイプS(国内モデルのDC5インテグラに相当)。エンジンありきのスワップなので、フロントセクションは丸ごと切開してワンオフのフレームを製作。トレッド幅の拡大はワイドフェンダーで対応できるが、前後長に関してはそうはいかないので、鼻の短いミニにK20Aを積むためにレイアウトはかなり工夫したそうだ。
比較的スペースの空くミッション側にラジエターとエアクリを配置し、フロントサスはその外側ギリギリの位置にセット。「まだプロジェクトは進行中」との事で、今後はエアサスをセットする予定だそうだ。
ワンオフのワイドボディによって、ミニとは思えないほどの迫力を手に入れたエクステリア。フロントセクションはパイプフレーム構造へと大改造したため、それに合うワンピースのチルトカウルを製作した。リヤアクスルも、フロントのワイドトレッド化に合わせてトレッド幅を拡大している。
ホイールはイギリス車には定番のレボリューション。豊富なサイズ展開があり、レースカーにもよく使われているモデルだ。FF車とは思えない深リム具合がカッコ良い。ブレーキはアメリカでミニ用の過激なチューニングパーツを多数リリースしているMINITEC製のキャリパーを使用。13インチという小径ホイールでも、最大限のストッピングパワーを得られるように配慮されている。
インテリアにもホンダフリークらしいメイキングが利いており、メーターはS2000用のデジタルクラスターをK20Aにマッチングするようにセット。ミニと言えば大型のセンターメーターがお馴染みだが、それのモダンアレンジ版といった感じだ。
シートはCR-Xデルソル用を張り替えたもの。少しばかり傷んでいるが、それだけこのミニを日常使用したことの証でもある。シフターはケースをワンオフして理想的な位置に配置。
ペダルはTILTONのオルガン式を使うが、スペースの問題からかブレーキペダルは端をカットしている。
ベース車の車重はおよそ600キロ。搭載エンジンは吸排気のファインチューンもあって260psを発揮しているというこのミニ・ピックアップ。単純計算でパワーウェイトレシオは2.5(!)であり、その乗り味はまさに公道を走るゴーカート。とことん“無茶”で“過激”なクルマだが、そのルックスから道行く人々の反応はどれも笑顔、というのが印象的だった。
●PHOTO:Akio HIRANO TEXT:Takayoshi SUZUKI