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その意外性すらもパフォーマンスの一環!
競技ドリフトの頂点で戦ったセリカリフトバック
1970年に登場し、”高い走りの質と高級感の両立”という意味を持った言葉「スペシャリティカー」を定着させた初代セリカ。デビュー当初は2ドアノッチバックの通称“ダルマ”(1600ccの2T-G搭載など)のみの設定で、3年後の1973年に上位モデルとして3ドアファストバッククーペのセリカLBがデビューした。
トップグレードにはパワーの象徴だったツインカム2000ccの18R-Gエンジン、ソレックスキャブが純正で採用されるなど、メーカーチューニング色の強かったモデルだ。
そんなセリカLBをベースに、D1GPマシンを製作したのは広島県にあるチューニングショップ“H.D.O”の板倉代表。その理由は「セリカのボディラインは好きだったから」という単純明快なもの。しかし、ターゲットステージが最先端のパワーチューンドがぶつかり合うD1GPとなると、簡単なメイキングでは話にならない。
そこで心臓部には、チューニング適応度が高く軽量なSR20DETを換装。東名パワードの2.2Lコンプリート“ジェネシス”をベースに、社外カムなどを組み込んで徹底的に鍛え上げている。
組み合わせるタービンはウエストゲート式のTD06-25Gで、MAX500psを発揮。サージタンクはトラストの大容量&ショートポートタイプを選択している。
エンジンマネージメントはF-CON Vプロが担い、点火時期や燃調を綿密にコントロール。
元々4リンクのリヤサスペンションは、初代エスティマのホーシングを流用してキャパシティアップ。同時にインドラム式のディスクブレーキ化することで、ドリフトのコントロール性も向上させた。
この4リンクサスペンションはクイックな動きを実現してくれる反面、ピーキーで高いコントロール力をドライバーに要求する側面もあるという。また、サイドシル周辺にはスチール材を使い補強も施されている。
フロントサスペンションはS13用を移植。ホイールは、アメリカの競技系タイヤメーカー“ミッキートンプソン社”のクラシックIIをセット。小柄なボディと相まって大径に見えるが実は16インチだ。タイヤはアドバンネオバを組み合わせる。なお、ステアリング機構は、S14用のパーツを使って油圧パワステ化している。
エクステリアも独特だ。クリアカットのレンズは旧車のドレスアップでは欠かせないアイテム。また、メッキのアイアンバンパーをボディ同色にカラーリングしているのも、旧車感を払拭するのに効果的な手法だ。前後バンパーなどはFRP製、ウインドウにはアクリルを使って軽量化を推進している。
ブリッドのバケットシートやデフィの追加メーターなど、ドリフトに必要な装備を追加したシンプルなインテリア。当時の若者が憧れた多連メーターのパネルには、ピボットのタコメーターも埋め込まれている。ロールケージはD1GPの車両規定に合わせたスペシャルだ。
当初はSR20DETのポン付けタービン仕様で十分と考えていたそうだが、パワーウォーズが激化するD1GPの影響で結果的には500psまで戦闘力アップ。その他、各部に手を入れながら、ようやくシルビア勢に負けない走りが繰り出せるパッケージに仕上がったという。
「好きなクルマで戦う」。プロの世界で、そんな熱い走り屋魂を見せつけてくれた板倉代表とこのセリカLBに賛辞を送りたい。(OPTION2誌2008年9月号より抜粋)
●取材協力:レーシングサービスH.D.O 広島県福山市引野町273-1 TEL:084-945-0856