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錆が進行しやすいストラットタワーも自社で製品化!
大ダメージを負ったボディも高い技術力で修復
サンドブラストのように摩擦熱を生じさせることなく錆の除去と防錆を行なうウエットブラスト、リフレッシュしたボディを錆から強固に守るための電着塗装など、理想のボディ再生を実現するために最新技術や設備を積極的に採り入れてきた“ガレージヨシダ”。ボディはもちろん、エンジンから足回りまで第二世代GT-Rのコンディションアップに特化したリフレッシュの匠である。
ニスモ・ヘリテージパーツが登場したといっても、第二世代GT-Rは純正パーツの生産廃止問題が日々深刻化している。数年前までは新品パーツに交換して再生できていた部分が、生廃によってパーツ入手不可能といった状況となっているのだ。
「必要パーツは先手を打ってストックするようにしていますけど、どれだけ頑張ったとしても一生分を確保することは物理的に不可能です。とくにボディはGT-Rの根幹となる重要ポイント。そこで、純正のボディパネルを3Dスキャナーで高精度に計測し、生廃で入手不可能となったパーツは現行車両に使用されている鋼板でオリジナル製作することにしました」とは代表の吉田さん。
続けて「まずはBCNR33とBNR34で錆が進行しやすいストラットタワーキット、そしてカウルトップブレースをリリースしましたが、BNR32は計測がほぼ完了した状態。今後はBCNR33、BNR34の計測を進めつつ、生廃などの状況変化に応じてラインナップを拡大していくつもりです」と展望を語る。
オリジナルのストラットタワーキットは、厳格な強度検査などをクリアした現行車両にも使用されている自動車用鋼板を採用。溶接前のパネルをパッケージングしたキットだけでなく、自動車パネル製造業者が高出力スポット溶接で組み上げて電着塗装した完成キットも用意する。
ボディパネル交換時は正確な位置出しが重要だ。ガレージヨシダでは、車両組み立て工場と同じ治具を用意して位置出しした後に、オリジナルのストラットタワーキットやカウルトップブレースをスポット溶接していく。
1700坪もの広大な敷地で、最大20台もの車両を並行作業するガレージヨシダ。その理由は効率化というよりも錆除去後に塗装したボディをしっかりと寝かせていくため。乾燥設備は当然ながら用意しているが、強制乾燥状態としっかり寝かせた状態では安定度に関わる溶剤の抜け具合が大きく異なるそう。
ドナーかと思うほど大ダメージを受けたこのボディは、鋭意修復中のもの。数多くの板金屋から修復不可能と断られて途方に暮れていたオーナーを、確かな技術とノウハウで救うのである。
こうしたガレージヨシダの取り組みを知ると、これから第二世代GT-Rを手に入れようと考えているユーザーは車両購入の予算を抑えて、リフレッシュ費用を確保した方が良いのか悩むだろう。しかし、その考え方は不正解だ。
街中に数多くの車両が走っていることで錯覚しがちだが、BNR34の最終モデルでも発売から20年、BNR32の初期モデルに至っては発売から34年が経過している。つまり、安価なベース車両を手に入れてフルリフレッシュしても仕上がりレベルは低くなり、費用も1000万を軽く越えていくからだ。
「古いクルマをイジりながら大切に乗る文化がある海外からも作業のオーダーはきますが、大半はコンディションが良い個体ですね。もちろん、車両を予算や理想は人それぞれなので正解は存在しませんが、交換が難しいボディだけを先にリフレッシュする人もいます。第二世代GT-Rはクラシックカーの領域に突入している認識をしっかりと持って、大切に愛車へ向き合ってもらいたいですね」。
このような厳しい現実を知ると意気消沈してしまうかもしれないが、心地良い言葉で誤魔化さないのはガレージヨシダが第二世代GT-Rのリフレッシュへ真摯に取り組んでいるという証だ。
愛車をいつまでも大事に乗り続けたいというオーナーの想いに応えるため、最良のリフレッシュ術を日々模索して実現した3Dスキャン製作のボディパネル。直面していた生廃問題が最新技術でクリアされた今、第二世代GT-Rの未来は大きく広がったと言えるはずだ。
PHOTO:南井浩孝
●取材協力:ガレージヨシダ 奈良県吉野郡大淀町越部215-1 TEL:0747-58-8585