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5ナンバー枠を意識してあえてRB20DETをチョイス!
ターボパワーをコラムMTで操る拘りのスタイル
2代目セドリックとして1965年に登場したH130型。日産車で初めてL20型エンジンを搭載したモデルで、取材車両は後期型の最上級グレード、スペシャルシックスとなる。
本来のL20シングルキャブ仕様(115ps)に代えて搭載されたエンジンはRB20DET。その換装作業を手掛けた“グローバル”の永井代表さんが言う。「ゆとりの動力性能を求めるなら、普通はRB25を選びますよね。でも、5ナンバーのまま乗りたいというオーナーのリクエストに応えるためRB20DETにしました。おかげでエンジンを探すのが大変でしたよ」。
元々L20が載っていたため、エンジンルームに問題なく収まったRB20DET。スペース的な制約からトップマウントされるインタークーラーはHCR32純正だ。ラジエターは容量が大きく水温も安定していることからH130純正をそのまま使用。また、エンジン制御はメインハーネスごと移植してHCR32純正ECUで行なわれる。
換装されたRB20DETはR32用で、本来オイル溜まりが前側にあるため、そのままではフロントサスメンバーと干渉してしまう。そこでストレーナーを加工し、フロントサスメンバーやステアリングラックを回避する形状のワンオフオイルパンが作られた。
また、オーナーの拘りはもう一つ。それは純正の4速コラムMTを活かすことだった。「ベルハウジングを加工してRB20DETに組み合わせてますけど、なかなか大変な作業でしたよ。でも、その甲斐あって、この時代のクルマらしさを残せたと思いますね」と永井代表。
当時風に言うと、オーバードライブ付き3速MTだ。このミッションは、メインシャフトのスプラインがR32などに搭載されるFS5W71C型と同じ。そのため、ORC製メタルシングルクラッチの装着が可能だったのだ。
ステアリングコラム左側に設けられたシフトレバー。手前に引いて下が1速、ニュートラルに戻して上が2速、その下が3速、奥に押し込んで上が4速。バックギヤは1速の向かい、手前に引いて上だ。
グリップが細い大径ステアリングホイールや、バーグラフ的な赤いラインが横に伸びて車速を表示するスピードメーターが時代を感じさせるダッシュボード。ノーマルの雰囲気を損なわないよう、追加メーターなどは一切装着されない。
シートは前後ともセンターアームレスト付き3人掛けのベンチタイプで乗車定員は6名。クッションは柔らかく、ソファのような座り心地だ。当時すでにエアコン標準装備で、リヤスピーカーボードには後席専用吹き出し口も設けられていた。
久々のコラムMT車。頭の中で何度かシフトパターンを確認してから走り出す。クラッチがORC製メタルシングルに交換されているため、ゼロ発進時だけ少し気を遣う。
その排気量からRB兄弟の中では低中速トルクが細いとされる20DETだが、そんな印象は皆無。むしろエンジン回転の上昇に伴って聴こえてくる金属質なタービン過給音と、それに合わせて車重がフッと軽くなったかのように加速していく様子が痛快だ。この走りは楽しすぎる。
ちなみに、微妙に車高が落ちているが、これはRB20DET換装に伴うナチュラルローダウン。実はL20よりもエンジン単体重量が重く、その分フロントサスが沈むというわけ。そんなフロントに対して、リヤはホーシングとリーフスプリングの間にブロックを噛ませて前後の車高バランスを取っている。
佇まいは当時のまま、走りの性能や快適性を格段に高めたこのセドリックは、日本人の琴線に触れる和風レストモッドと呼ぶに相応しい1台だ。
⚫︎取材協力:グローバル 岐阜県羽島郡岐南町平成2-105 TEL:058-374-8838
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