「こんなレクサスが存在したのね・・・!」壊滅的に売れなかったES250という存在

販売台数は全世界でわずか5万台弱!

ビスタハードトップをベースにした超マニアなレクサス

バブル景気の勢いに乗って、北米市場でのシェア拡大を狙ったトヨタが1989年から本格的に展開を始めたレクサスブランド。その源流となるモデルがこのES250だ。

“ラグジュアリーサルーン”の頭文字を取ったLS400は、日本でいう10系セルシオそのもの。一方、車名が“エグゼクティブサルーン”に由来するES250は、20系ビスタハードトップがベースだ。いや、日本仕様のビスタにはV6エンジン搭載モデルがなかったから、兄弟車であるカムリハードトッププロミネントのビスタ顔…と言った方が正しいかもしれない。

エンジンは、カムリプロミネントに載る1VZ-FE型2.0L・V6のストロークを伸ばし、排気量を2.5Lに拡大した2VZ-FE型。日本で販売されたトヨタ車を含めて他のモデルには一切搭載されなかったため、狙ったのかたまたまだったのかは別として、ES250専用エンジンということだけは事実だ。

ボンネット裏にはカリフォルニア州の排ガス規制に合致している旨を記したコーションステッカーが貼られている。

そんなES250だが、現地版カタログのスペック表を見るとなかなか興味深い。まず、ボディタイプには5人乗り“スポーティ”セダンとの記述。「どこがスポーティなの?」というのが日本人的な感覚だが、実は4速ATだけでなく5速MTも用意されていた。

また、5速MTモデルで0-60マイル(96km/h)9.2秒、SS1/4マイル(0-400m)17.0秒ということもカタログに明記。そこにES250をスポーティセダンとして売り出したいレクサスの思惑が見え隠れして面白い。

見た目は、日本仕様には存在しないビスタプロミネント。そのため少し違和感を覚えるが、LS400=セルシオと同じデザインのホイールを履いているだけで、高級な印象を受けるから不思議だ。

格納機能がなければ可倒式でもないドアミラー。その分、デザインの自由度が高く、日本車の一般的なドアミラーよりもスリムでスタイリッシュな造形を見せる。また、ウインドウ周りにはメッキモールを多用して高級感を演出。

内装色は濃いグレーが基調。直射日光による劣化を防ぐためダッシュボードにはマットがかけられる。4本スポークのステアリングホイールはエアバッグ内蔵型で、センターパッドの向こう側(右手)にはオートクルーズ用スイッチが確認できる。スピードメーターはマイル表示が基本、内側にも小さくキロを表示。8000rpmフルスケールのタコメーターは6700rpmからがレッドゾーンとなる。

左ハンドル仕様だから当たり前だが、右ハンドル車とは操作ボタンやポジションインジケーターが逆転したATセレクターレバー。車格を考えると4速ATの他、5速MTも用意されていたというのが意外だ。

レクサスが高級ブランドであることを示すため本革シートを標準装備。アメリカ人の体格に合わせて設計され、サイズもたっぷりしている。

後席は大人2人がゆったりと乗れるスペースを確保。背もたれは60:40分割可倒式で、前倒しによってトランクスルーが可能になる。

ビスタ顔のカムリプロミネントなのに、左ハンドルという優越感に浸りながら走り出す。2VZは1VZよりも排気量が500cc大きい分、まず全域に渡ってトルクフル。カムリプロミネントよりも柔らかめにセッティングされているであろう足回りと合わせて、3000rpm以下でダラダラと走っている時の印象はもはやアメ車だ。

当時、LS400と並んでレクサスの稼ぎ頭になるはずだったES250だが、販売台数は約2年で5万台弱と低迷。それもそのはず、世界戦略車としてゼロから開発されたLS400のズバ抜けて高い完成度に比べたら、しょせん日本の5ナンバーセダンを手直ししただけにすぎないES250の完成度は、やはりそれなりでしかなかったからだ。

しかし、マニア車好きとしては、国内仕様に存在しなかったボディとエンジンの組み合わせで、販売的にもイマイチだったからこそES250に魅了されるのもまた事実だったりする。

■SPECIFICATIONS
車両型式:VZV21
全長×全幅×全高:4650×1700×1350mm
ホイールベース:2600mm
トレッド(F/R):1475/1445mm
車両重量:1460kg
エンジン型式:2VZ-FE
エンジン形式:V6DOHC
ボア×ストローク:φ87.5×69.5mm
排気量:2507cc 圧縮比:9.6:1
最高出力:158ps/5800rpm
最大トルク:21.0kgm/4600rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク

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●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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