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エンジンから足回りまでシルビアを完全移植
FR軽量ボディを新世代のパワートレインで最大活用!
ダットサン510(日本名:ブルーバード)は、“プアマンズBMW”などと皮肉な俗称で呼ばれつつも、高性能で手軽なコンパクトスポーツとして、国内市場はもとより北米でも大ヒットしたモデルだ。
今なお世界中にコレクターが存在し、カスタムも盛んに行われているが、今回紹介するチューンドはその究極系に位置する存在。510の中でも特に人気が高いクーペボディをベースにした魔改造スペシャルだ。
エンジンは腰下に86φピストンとH断面コンロッドを組み込んだSR20DEをスワップ。そこにIN&EX280度のハイカムを投入したフルチューンヘッドをドッキングし、往年のN2仕様を彷彿とさせるハイレスポンスユニットを作り出したのである。最高出力は200psだ。
また、バルクヘッドやマウントを大加工することでフロントミッド化を実現している点も見逃せない。
スロットルは東名パワードがかつて製品化していた45φの多連式を導入して吸入空気量を増加。コーナーでの立ち上がりや直線の伸びなどレースでの使い勝手の重視し、EXマニは4-1集合の等長タイプをチョイスする。
エンジンマネージメントには「ミューオン」というレース用フルコンを採用。実際にマカオGPのツーリングカーレースで使用されていた逸品とのこと。
大型のラジエターはサイドフロー式の3層アルミタイプ。その真下に確認できるバーは剛性アップを目的としたもので、テンションロッドの付け根にダイレクトで接続される。
トランクスペースにはレース用のATL安全タンクを埋め込み、その周囲にコレクタータンクや燃料ポンプを美しくレイアウトしている。
510の足回りは前ストラット式、後セミトレーリングアーム式。サーキット走行を考えると、フロントのストラット式サスはともかく、リヤのセミトレ式サスがよろしくない。なぜなら、サスストロークに対するキャンバー変化が大きく、トラクションを稼ぎにくいからだ。
そこでこの車両は、モノコックを加工して前後にS14シルビアの足回りを完全移植。リヤサスのマルチリンク化を敢行したのだ。なお、ブレーキはフロントにR33スカイライン純正をインストールしている。
サイドバーやガゼットなど、当時は使われていなかった手法で剛性アップされているのが分かるインテリア。ワンオフダッシュボードには必要最低限のメーターを配置し、その仕上がりはレーシーそのものだ。
ミッションはOS技研の3速クロス。センタートンネルを含め、ボディ各部はシルビア用などのパーツ移植のため大きく加工されている。
オールドBMWをオマージュしたエクステリアも完全なワンオフ仕様だ。リヤマルチリンクの移植にともなうトレッドの拡大に合わせる意味もあり、スタイルにも大幅なモディファイが加えられた。方向性としては、510ブルーバードのイメージを壊さず往年のワークスマシンをイメージさせるものだが、ミラーやウイングなど最新のエアロチューンからのフィードバックも少なくない。
単純に全盛期のチューンドを再現するのではなく、現行車との走りにも十分通用する高いクオリティを徹底追及した510ブルーバード。まさに最新のレーシング旧車と呼ぶに相応しい極上の1台だ。