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始動すら難儀するオールドレーシングカーを近代化改修!
今回紹介するのは、国宝級の価値を持つ名車『ハコスカGT-R(KPGC10)』。しかも、1970年代にプライベートチームがレースで使っていたマシンを、現代の技術で蘇らせたという超レアなチューンドだ。(OPTION誌2001年10月より抜粋)
新旧ハイブリッド制御で蘇った本物のレーシングハコスカGT-R
第二世代GT-RがRB26DETTを搭載しているように、この初代GT-R(KPGC10型)にも特別なエンジンが与えられていた。当時、完全なオーバークオリティと呼ばれた2.0Lの直6ユニット、レース用エンジンの血を引く“S20”である。
市販モデルはソレックス40PHHキャブが3連装着されていたが、日産ワークスや一部の強豪チームが使うレースマシンには、ルーカスのインジェクションシステムが備わるエンジンが供給された。
取材したレース車両ベースのハコスカGT-Rには、まさにその“特別”なパワーユニットが搭載されていたのだが、これがスライドバルブの機械式で超が付くほどの曲者!
スタータースイッチを押す係が一人、スタート時の予備燃料をファンネル部分に吹きかける係が一人、万が一に備えて消火器を構える係の3人体制でエンジンを掛ける必要があるという、とんでもなく痺れるエンジンだったのだ。
しかし、これでは前時代的過ぎる上、現代のインジェクションシステムで動かした方が確実にパワーも出る。というわけで構築されたのが、BNR32のシステムを組み込んでHKSのF-CON Vプロで制御するという新旧合体の離れ業だ。
まず、BNR32から移植されたパーツとしては、クランク角センサー、スロットルポジションセンサー、インジェクター、パワートランジスター、水温センサーが挙げられる。
クランク角センサーはデスビ部を改造してスロットルの脇にセット。また、アールズのホース先にはフューエルデリバリーパイプと444ccインジェクターが隠されている。
スライドバルブのスロットルを作動させる部分には、うまくスロットルポジションセンサーが装着されていることが分かる。
圧力は各気筒のインマニから取る。タンクの下にあるのがF-CON Vプロの圧力センサーだ。このように、当時の雰囲気を壊さないよう、追加パーツ類を隠しながらメイキングを進めている点は見事としか言いようがない。
燃料や点火のコントロールで重要な水温補正も行えるように、ラジエターへ繋がる部分には水温センサーが設置させる。
点火系ももちろんブラッシュアップ。BNR32パワートランジスタを流用し、F-CON Vプロ制御の同時点火システムを構築している。
室内は、まんまレース仕様だ。トランクにはフロア貫通で100LのATL安全タンクが鎮座し、ボッシュの燃料ポンプやコレクタータンクも並ぶ。
正直、動かすことすら勿体無いくらいのレベルだが、オーナーは動態保存することなくこのレース用ハコスカGT-Rを乗り回しているそうだ。何から何まで規格外すぎる!