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実用性をスポイルせずに走れる300馬力を実現!
ショーカークオリティの美しさも見どころ!
6世代目スカイラインのR30型。そのハイパフォーマンスモデルとして知られるのが、4バルブDOHCのFJ20E型直列4気筒を搭載した2000RSと、ターボのFJ20ET型を搭載した2000ターボRSだ。
1983年のマイナーチェンジを境に前期型と後期型に分類されるが、後期型の2000ターボRSは特徴的なフロントマスクから「鉄仮面」の愛称でも知られている。
その鉄仮面こと、DR30型スカイライン2000ターボRSに乗る齋藤周平さんは、北海道芽室町にある旧車専門店“オートガレージゴトウ”で働くプロのメカニック。愛車を4ドアのDR30にした経緯が、とてもユニークだ。
「18歳で初めて買ったクルマも4ドアのR30だったんですけど、それから一度2ドアに行って、その後はしばらくZ33に乗っていました。で、少し前に結婚したんですけど、家族ができるんだから2ドアは不便かなと思って、4ドアのDR30に乗り替えることにしたんですよ」。
結婚を機に旧車を諦めるという話はよく聞くが、齋藤さんは逆に昔から偏愛を深めてきたDR30へと回帰。しかも、ベース車は勤務先に部品取りとして放置されていた不動車だったというから、なおさら驚きである。
「部品取りですから、無かった物の方が多かったですね(笑) 肝心のドアは4枚とも辛うじて残っていましたけど、エンジンも載っていなくて。なので、最初は取られた部品を取り返すところから始まりました」。
営業終了後にお店のスペースや機材を使わせてもらえるなど、環境に恵まれていた面もあったとはいえ、自分の手でファミリーカーをイチから起こすというのも、かなり根気が必要だったことだろう。
「ただ直すだけでは面白くないので、見た目はストック然としていながら、ちゃんと走れる仕様にしたかったんです。何せ、このクルマはパフォーマンス系のアフターパーツがほとんど売られていないので、排気系とかフューエルデリバリーとかは自分で溶接して作りました」。
ベースが元々エンジンの載っていなかった部品取り車だったこともあり、先に塗装を済ませてショーカーのような美しさをゲット。
FJ20ETは純正部品に加えて、亀有製の調整式テンショナーやレース用のメタル、メタルガスケットなどを使いながらオーバーホール。トランスミッションもR32用の71Cに換装してある。F-CON VプロのセッティングはHKSパワーライターショップである帯広市のエムエスサービスで実施。最終的な本セッティングはこれからだが、現状でも320〜330psくらいは出ているのではないかとのこと。
タービンは、オートガレージゴトウのオリジナルEXマニを介してTD06-19Cをマウント。ドッカンターボと表現されることの多いFJ20だが、ピックアップの良いフィーリングに仕上げてある。ステンでワンオフした中間パイプには空燃費センサーを取り付け、室内側のAEM製デジタルA/Fメーターでモニターする。
RB26への流用が良く知られているR35GT-R純正の点火コイル。齋藤さんはエスコートがプロデュースしたFJ20用の流用キットを使用して、ダイレクトイグニッション化を実現した。クランク角センサーはSR20から流用。また、内部の汚れによりアイドリング不調をもたらすAACバルブはSR20用、VCMバルブはRB26用をそれぞれ使っている。
S15用のコアを加工した前置きインタークーラーを装備。もちろん、その取り回しも齋藤さんが自ら溶接して仕上げたワンオフスペシャルだ。インタークーラーとラジエターの間にはトラストのオイルクーラーも設置。
FJ20ETのアイコンとも言えるインマニは綺麗に結晶塗装を施し、スロットルボディにはZ32のVG型からスロットルポジションセンサーを流用。インジェクターをサード製の720ccに増量し、ワンオフのデリバリーを製作するとともに燃料の取り回しをシンプル&クリーンにリメイクしている。
DR30は本来ショックアブソーバーがスピンドル一体型となるが、ナックルをS13用に変更することで車高調の選択肢が拡大。フロントにはテインの車高調を採用し、齋藤さんが自作した調整式テンションロッドも備えて、アライメントの最適化を行なっている。
ブレーキはS15の4ポットキャリパーと326パワーの330mmビッグローターを組み合わせて、ストッピングパワーを確保。
ホイールはRSワタナベのGR8の17インチで、フロントが8.0Jプラス28(+10mmスペーサー)、リヤが9.0Jプラス16(+15mmスペーサー)。
運転席こそレカロのSR7に交換されているが、奥様が座ることになる助手席はDR30の純正バケットシートを用意。表皮のコンディションも良く、ドアトリムやリヤシートとの統一性も取られている。リヤシート後方には当時物のケンウッド製サブウーファーも備わるなど、旧車らしさの演出も忘れない。
追加された電子式メーターもトラスト製の当時物。センターコンソールに水温、油温、油圧、燃圧、排気温を測る50φのメーターが並び、メインのメーターの左隣には60φのブーストメーターが装備されている。
外装およびエンジンルームは齋藤さん自ら塗装を行ない、1984年式とは思えない美観に仕上げられている。
「Z33より人も荷物も乗れて、税金やタイヤ代も安いですから、立派なファミリーカーじゃないですかね(笑) 奥さんはクルマを趣味として理解してくれていますし、休みの日には普通にレジャーや買い物に一緒に出掛けています。ただ、エアコンがないので、暑い日だけは乗ってくれませんけど(笑)」。
技術と情熱があれば、偏愛旧車に家族も満足!そんな齋藤さんの生き様は、好きな旧車をただただ日常的に乗り続けたいと考える多くのユーザーにも勇気を与えるに違いない。
PHOTO:平野陽/REPORT:小林秀雄
⚫︎取材協力:オートガレージゴトウ 北海道河西郡芽室町東芽室北1線8番地 TEL:0155-62-5934