目次
GT-Rはニュルで鍛え上げられた
伝統とも言えるアタックはR35GT-Rで途絶えてしまうのか!?
全長20.8km、コーナー数172、高低差300mという過酷なサーキットとして知られるドイツ・ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェ(北コース)。世界の自動車メーカーが主にスポーツカーを鍛え上げるテストの場として選び、『ニュル世界最速』の称号を得るためにタイムアタック合戦の様相を呈している。GT-Rもそのうちの1台だ。
日産が初めてGT-Rでニュルに乗り込んだのはBNR32を開発していた1988年のこと。市販車では9分を切れば速いとされていた時代に8分30~40秒を出し、最終的には8分20秒台までタイムを詰めた。
ニュルでの走り込みが本格化したのはBCNR33からで、1993年にR32を擬装したテストカーで実走テストを開始。翌年、7分59秒をマークしたことで、『マイナス21秒ロマン』というキャッチフレーズが付けられることになった。
続くBNR34も当然ニュルでの開発が行なわれたが、タイムに関する日産からの公式アナウンスは一切なし。唯一、確認できたのは、ニスモが手掛け、2004年に限定20台が発売されたZチューンの7分54秒というタイムのみ。つまり、素のBNR34(と言ってもニュルSPLだろうが)はBCNR33のタイムを上回れず、日産としても公表しなかった(できなかった)のでは…と推測する。
BNR34生産終了後、“空白の5年”を経て復活したGT-RがR35だ。ニュルでは2008年に7分26秒70、2011年に7分24秒22、2012年に7分19秒10と着実にタイムアップ。2013年には、ミハエル・クルムがGT-Rニスモで当時の量産車世界最速タイムとなる7分8秒679をマークするに至った。
デビューから16年目を迎え、異例の長寿モデルとなったR35で聞こえてくるのは生産終了の噂。次期型GT-Rについては何の情報もないが、もし最新スペックのハイブリッド車として登場するなら、アタックし続けてきたニュルのタイムをどこまで伸ばすのか? 興味が尽きることはなさそうだ。
ニュル最速はポルシェのレーシングマシン
2023年6月現在、ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェの市販車最速マシンはメルセデスAMG-one。タイムは2022年10月にマークした6分30秒705だ。
一方、長らくコースレコードを保持していたのはグループCカーのポルシェ956。1983年のニュル1000kmレース予選で出した6分11秒13で、40年前の記録に驚くしかない。
しかし、それも2018年に更新。レコードブレイカーとなったのは、ル・マンプロトタイプをベースにパワー(燃料流量)規制を外し、空力特性やサスペンションの見直し、軽量化などを行なったポルシェ919ハイブリッドEVO。タイムは驚異的な5分19秒55で平均速度233.8km/h、最高速は369.4km/hに達した。