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SR20VEを搭載したハンドリングスペシャル
ハイカムが乗る4500rpmから官能的フィーリングが炸裂!
1969年にデビューしたS30Zは、1973年のマイナーチェンジで各部の剛性を高め、サスペンションなどに改良が加えられた。また、1970年前半には、その年の排ガス規制への事前対応でインジェクション化され、その後、排ガス規制対応モデルのS31へとさらなる進化を遂げた。今回紹介するチューンドは、排ガス規制への事前対応が図られたA-S30というモデルがベースとなっている。
注目点は、言うまでもなくエンジンスワップによるフロントミッド化だが、その発端はL28エンジンへの不満。排気量が大きいとはいえ、所詮は50年以上も前のパワーソース。出力は吸排気チューンを行なっても実測200psには及ばない上、鋳鉄ブロックの直6エンジンはとにかく重い。そこで、あえて軽量コンパクトな4気筒エンジンを搭載し、軽快な車両へとリメイクを図ったわけだ。
選ばれたエンジンは、SR系エンジンの最終進化系といえるSR20VE。NEO VVLと日産が命名した高回転・高出力型の可変バルタイ&リフト機構を搭載し、リッター辺り100psオーバーとなる204psを発生した名機だ。
そんなSR20VEのポテンシャルをさらに高めるべく、精密オーバーホール&ヘッドチューンを敢行。さらに、インテーク環境はトルク向上のためにロング化して途中にチャンバーを設置。一方のEXマニは、S15シルビアオーテックバージョン用を加工装着した。そこにF-CON Vプロによる綿密なマネージメントを組み合わせることで、ハイカムに切り替わる4500rpmからレブリミットの8000rpmまで、問答無用で吹け上がる絶品のパワーフィールを実現した。
点火系はデスビからダイレクトイグニッションへと進化。8000rpmの高回転領域でも正確な点火を実現する。
エキゾーストマフラーはワンオフメイドのフルチタン製。エンジンスペックに合わせてメインパイプ径は70φで製作しており、触媒も備えて公認車検を取得している。
ミッションはS14シルビア純正のFS5W71C。FF用のSRエンジンにはFR用ミッションハウジング搭載用ボスがなく、アルミブロックを加工して装着している。同様にFF用をFRとして搭載するにあたり、オイルパンはアルミの削り出しで製作。
足回りも独特だ。車高調は純正ストラット加工のスペシャルだが、“車高を下げすぎずに性能を高める”ということを意識して採寸したそう。ちなみに、SR20VE化によって改善された前後重量バランス(フロント530kg/リヤ540kg)の恩恵は凄まじく、S30Z本来のダルさが消え失せ、クイックにノーズが入るハンドリングマシンに生まれ変わったそうだ。
インテリアの赤いカーペットはオーナー自らが製作。ウッドステアリングと合わせて、レーシーすぎないコクピットを演出。フロアは補修と補強を兼ねて、ファイバーマットを敷き樹脂で硬められている。
4気筒エンジン化に拒否反応を覚える往年のZファンは多いかもしれない。しかし、メンテナンスに気を使わずトラブルフリーでS30Zを楽しめるという意味では「最高のチューンド」なのかもしれない。