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メジャー車種のマイナーグレードこそ熱い!
今でも通用する内外装デザインも見どころ
GTOの弟分として1994年に発売されたFFスペシャリティクーペのFTO。人気を集めたのは最上級グレードGPXと、装備を簡略化したGP/GPバージョンRで、共にNAで200psを誇る2.0L・V6の6A12 MIVEC仕様を搭載していた。その下に非MIVEC仕様の6A12(170→180ps)を積むGR/GXスポーツパッケージと、1.8L直4SOHCの4G93(125ps)を載せるGSがあったものの、正直影は薄かった。
そんなわけで、『FTOと言えばGPX』と相場は決まってる。が、取材したのは、現存台数を数えるのに片手で足りそうな廉価グレード、まさかのGS。それも5速MT車だ。興味本位で調べたところ、当時の新車価格は164万円。安すぎる!!
そんなメジャー車種のマイナーグレードに乗るのが佐久間さん。「20代にしてFTO GSを選ぶとは、きっと指名買いだったに違いない」と思って話を聞くと、そうではなかった。
「パワーはそこそこで良いから、サーキットでドライビングの練習ができそうなMT車を探してました。S15シルビアのスペックSとか良いかなと思いましたけど、走行20万kmの中古車が50万円もして…。そんな時に、中古車屋でたまたま見つけたのがFTOだったんです。スポーツカーらしいスタイリングで5速MT。即決しましたね」。
SOHCながら4バルブヘッドを持つ1.8L直4の4G93。81.0φ×89.0mmのロングストローク型で、カタログスペックは125ps、16.5kgmを謳う。4-1タイプのエキマニは、パイプレイアウトからアフター品のようにも思えるけど、実は純正。三菱は真面目なのか変態なのか、廉価グレードにもかかわらず性能を追求した跡がうかがえるのも萌えるポイントだ。
バブル期に設計、開発されたモデルらしく、なだらかな曲面&曲線で構成されるダッシュボードの有機的なデザインは今見ても秀逸。センターコンソール上部に並ぶのは電圧計とアナログ式時計だ。オーディオ下の1DINスペースにETCユニットが追加される以外、室内はフルノーマル状態を保っている。
「純正オプションですけど、他では見たことないので激レアですよ!!」と鼻息も荒く話す佐久間さんに影響されて、こっちまで興奮してきたコーナーポール。
ダッシュボード右側のシーソー式スイッチを操作することで伸縮する電動タイプだ。
トランクリッドはスペースを有効に使える外ヒンジ式で、しかもダンパーまで装備。こういうところに開発予算が潤沢だっただろう、バブル期設計ならではの贅沢さを感じずにはいられない。ラゲッジスペースは天地方向がやや物足りないが、幅や奥行きは十分。2ドアクーペとしては実用的な容量が確保されている。
16インチアルミホイールを履くGPXやGPバージョンRに対して、GSはスチール製14インチにホイールキャップが標準となるなど落差があからさま。それを大事に保管し、取材のためにわざわざ履き替えてきてくれた佐久間さんには感謝しかない。タイヤは標準185/70サイズのエナセーブEC202を履く。
「初めて自分のクルマとしてFTOを買ったのが22歳の時。それからはドライビングの練習で富士ショートコースや筑波TC1000、エビス東を走り込みました。ただ、FTOに乗っていると、どうしても気になってくるんですよね。MIVECエンジン載せたGPXが…」と、何とも含みを持たせた話し方をする佐久間さん。直後、その続きを聞いて開いた口が塞がらなくなった。
なぜなら、有言実行とばかりにGPXを購入。さらに、つい半年前にはもう1台、チューニングベースとしてGSも手に入れたと言うのだから。「GSは探していた1999年式で事故歴なしの極上車。これはもう僕が買わないとダメだなって」と笑う佐久間さん。願いは一つ。3台持ちの熱狂的FTOマニアに幸あれ!!