「ディーラーマンにすら忘れられた幻の存在!?」君はサニー305Reニスモを知っているか?

3ドアハッチでもレアなのにニスモ仕様はヤバさ倍増

忘れ去られたマイナーモデルの記憶を呼び戻せ!

6代目B12型サニーの登場は1985年9月。ボディバリエーションは、ベーシックな4ドアセダン、カリフォルニアと呼ばれたオシャレで実用的な5ドアワゴン、そして「えっ?そんなのあった?」と存在感が薄く、だからこそ今回の主役を張ることになった、3ドアハッチバックの3種類だ。

撮影車両の前期型305Reニスモは、305Reをベースにエアロやホイール、シート、ステアリングなどがニスモ専用品に交換され、足回りも専用チューンのハードサスが組まれたホットハッチ。

余談だが、B12には迷車VWサンタナの生産を通じて得た技術やノウハウが活かされているそうで、その点からしても特に305Reニスモは、日産の“珍グルマ”の系譜に名を連ねる資格が十分にあると言っていい。

B12と言えば、直線基調のスタイリングが一番の特徴。80年代前半の国産車ではそれがトレンドだったし、同年代の日産車を見ても、スカイライン(R30~31)にしろフェアレディZ(Z31)にしろ、やはり“カクカクしたデザイン”だったことは誰もが認めるところだ。

セダンやカリフォルニアと共用しているのはAピラーより前だけ、後は完全な専用設計という3ドアハッチバックだが、大衆車サニーにこれだけの気合を入れながら、あまりにも印象が薄すぎるというのが本当に気の毒としか言いようがない。

305Reニスモは、上半分がボディ同色とされたフロントグリルやフォグランプ内蔵のフロントハーフスポイラー、サイドステップ、リヤハーフスポイラーが外装における専用アイテム。

特に前後スポイラーはハーフタイプながら、アフター品にも全く引けを取らなくらいの存在感があるし、スポーティ感を大幅に高めるのにもひと役買っている。素のモデルに対して男前度が3割増しだ。

また、3ドアハッチバックのみテールレンズに斜めのスリット状デザインが施される。リヤハーフスポイラーはかなりアグレッシブなデザインを採用しており、ボリューム感も相当なもの。

それから、当時流行ったディッシュタイプのアルミホイールもニスモ仕様の専用品。ただし、中期型以降は標準モデルにもオプション装着できるようになったため、ありがたみは半減している。ちなみに、フロントフェンダーに貼られたニスモステッカーは前期型と中後期型でデザインが異なる。

直線基調のダッシュボードデザインに絶壁インパネが80年代の日産車の特徴。運転席に座ってまず感じるのは、ガラスエリアが広く開放的な室内と、1640mmという全幅の狭さ。5ナンバー枠いっぱいから60mmほどタイトなだけだが、乗って感じるコンパクトさは、その数値以上のものがあったりする。

ホーンボタンにニスモのロゴが入るステアリングは専用品で、305Rtと前期型305Reはガングリップタイプのシフトノブが標準装備だった。

また、ニスモ仕様はホワイトメーターを採用。スポーティ感を高めてくれるアイテムだ。

センターコンソールは上から順にエアコン操作パネル、AM/FM電子チューナー、灰皿&シガーソケット、カセットデッキ。チューナーとデッキが別体式で、しかもDIN規格ではない(はず)のが泣かせる。

前席はサイドサポートが大きく張り出した専用品を装着。助手席&後席のシートカバーは希少な純正オプション品だ。

背もたれに設けられたニスモのロゴマークが誇らしげ。今では見かけないデザインが逆に新鮮だ。

インナートリムがシートに向かって回り込んだリヤのラウンドシート。背もたれは50:50の分割リクライニング&可倒式で、ラゲッジスペースを拡大することができる。ちなみに、後期型でラウンドシートは廃止され、背もたれの分割も60:40になる。

エンジンはφ76.0×82.0mmのロングストローク型となるE15E型。前中期型に搭載され、後期型でGA型に切り替わった。わずか2800rpmで最大トルクを発生するエンジン特性が、乗りやすさに直結する。また、当時物のニスモ製タワーバーにも注目。

鋳物のカムカバーに牛乳キャップタイプのオイルフィラーキャップがE型エンジンの特徴。「後期型に搭載されるGA型も、なぜか3ドアハッチバックだけはカムカバーが鋳物なんですよね」とサラリと言ってのけるオーナーは相当のマニアだ。

エンジンは低速トルクがあって、ゼロ発進や街乗りが非常に楽。それでいて、4000rpm以上では乾いたエキゾーストサウンドを放つなどスポーティ感も満点だ。E15Eのピークパワーは、B11の95psからB12では82psに下がっているが、960kgという車重もあって軽快に走ってくれる。

サニーの変わりダネとして話題に上がるRZ-1より、クルマ好きの記憶からもすっかり消え去っているという意味で、遥かにマニア度が高いサニー305Reニスモ。次はいつメディアに取り上げられるのか分からないだけに、その雄姿をしっかりと目に焼き付けてほしい!

■SPECIFICATIONS
車両型式:HB12
全長×全幅×全高:3995×1640×1415mm
ホイールベース:2430mm
トレッド(F/R):1425/1420mm
車両重量:960kg
エンジン型式:E15E
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ76.0×82.0mm
排気量:1487cc 圧縮比:9.0:1
最高出力:82ps/5600rpm
最大トルク:12.5kgm/2800rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/ストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ(FR):185/60-14

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●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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