「見よ、このキザシを!」シャコタン、エアダム、ボンネスリック・・・もう警察ご用達車両とは言わせない!!

ボンネビルで見つけたキザシ、半端なし

最高速はなんと328.650km/h!

 

スズキのキザシと言えば、「民間に販売された台数より警察車両の方が多い」(実際はそんなことないが)などと言われる“いわくつき”の1台。2009年に日本(受注生産!)とアメリカで発売され、翌年にはヨーロッパと中国にも進出したスズキのグローバルカーだ。

そんなキザシ、さすがはスズキのフラッグシップサルーンだけあって、エンジンは2.4L直4DOHCのJ24B型を搭載。188ps/23.5kgmとなかなかのスペックを誇る。ただ、惜しいのは海外仕様には存在する6速MTが国内仕様には用意されず、全モデルマニュアルモード付きCVTとなってしまったことだ。

総販売台数3400台弱という点からしてすでにマニア臭が漂っているのだが、チューニングすると意外にもカッコ良いという事実に気がついた。

それはアメリカ市場に導入された翌2010年のこと。ボンネビルスピードウィークの取材でソルトフラッツに赴いた我々の前に姿を現したのは、北米スズキが手がけた最高速スペックだった。

車高を落とし、シャシー下面に入る走行風を抑えるべくアルミ製エアダムを備え、トドメに細身のボンネスリックを装着。取り柄のない普通のセダン(失礼)なのに、改造(とシチュエーション)によっては本当にカッコ良く見えるということを思い知らされた。

もちろんエンジンも凄まじい。ポート加工が施されたヘッドにはシュナイダー製ハイカムが組まれ、腰下はJE製ピストンやポウター製コンロッドで強化。画像はNA仕様の状態だが、現地で作業してターボ仕様でもアタック。その際、水冷式インタークーラーとして機能するのがエンジンルーム右手のアルミ製ボックスだ。カムカバーの上に装着された“Kizashi Turbo”のロゴ入りカーボンプレートがメーカーの仕事であることを伺わせる。

室内も然り。ドライバーの命を守るという観点から、安全性に関するレギュレーションが、とにかく事細かに決められているのがボンネビル。横転時の安全性確保のためにロールケージが張り巡らされているが、各バーがルーフ中央部で集約する形状が独特。

ルーフからぶら下がったレバーはパラシュートを開くためのもので、中央のバーに設けられた赤いノブを操作するとエンジンルーム及び室内の消火器が作動する。さらに、フロントウインドウ上端部にはシフトタイミングライト付きのオートメータータコメーターも確認できる。

リヤからの眺めはノーマルとそれほど変わらない。バンパーに内蔵されたマフラーガーニッシュもそのまま残ってるほどだ。ただし、空力を考えてのことなのか、ボディサイドにはノーマルにはないモールが装着されている。また、トランクルーム内には安全タンクを確認。トランクパネルに装着されたパラシュートがボンネビル最高速仕様の証だ。

とにかくチューニングがブッ飛んでいた1台。当時、日本で見かけた記憶がほとんどないクルマだけに、キザシと言えばコイツを真っ先に思い浮かべてしまうくらい強く印象に残っているのだ。

●PHOTO&TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)/ボンネビルスピードウィーク2010より

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