連載

GENROQ マクラーレンクロニクル

McLaren Elva

オープントップ仕様のレーシングカーに由来

車名は創始者ブルース・マクラーレンが1964〜1967年に開発したレーシングカー、M1A、M1B、M1Cの製作を委託していたエルバ社に由来する。
車名は創始者ブルース・マクラーレンが1964〜1967年に開発したレーシングカー、M1A、M1B、M1Cの製作を委託していたエルバ社に由来する。

エルバは、マクラーレンが2019年に発表した完全オープントップのスーパースポーツ。同社のプロダクトポートフォリオでは当時のアルティメットシリーズに位置づけられ、そのスタイリングから見ても、それはオープンモデルというよりもスピードスターと呼ぶにふさわしいデザインを持つ1台に仕上げられている。

ちなみにエルバというネーミングは、マクラーレンの創始者であるブルース・マクラーレンが1964年から1967年にかけて開発したオープントップ仕様のレーシングカー、M1A、M1B、M1Cに由来するもので、その製作を同じイギリスのエルバ社に委託していたことが直接の理由とされる。またそれはフランス語でelle va(彼女が行く)という意味も持つ。

オープントップのエルバは、もちろん重量面では非常に大きなアドバンテージを持つモデルだ。モノコックやボディ全体はカーボンファイバー製とされ、ドアやシートも同素材を用いることで徹底的な軽量化を図っている。マクラーレンはエルバの発表時にはその公式な重量データを発表しなかったが、後にそれは乾燥重量で1148kgという驚異的な数字が示された。

またエルバにはフロントウインドウも、サイド、リヤのウインドウも存在しないが、オーナーはオプションでフロントウインドウを装着することができた。またアメリカ仕様に関しては、最初から州によってそれを標準装備することが義務付けられていた。

快適なオープンエアモータリングを楽しめるデバイス

そしてエルバにとって最も大切なエアロデバイスが、「マクラーレン・エア・アクティブ・マネージメント・システム(AAMS)」である。これはフロントスプリッターのインレットからノーズにエアを送り込み、その気流を乗員の前方半径130度に導くシステム。気流と全体的な騒音が大きな40km/hまでの速度域で機能し、走行中のコクピットはきわめて静寂で快適な空間に保たれるという。安全面ではロールオーバー時の保護システムとして展開型ロールケージが標準で装備されているほか、オプションでは6点式のフルハーネス・シートベルトの選択も可能だった。

エアブレーキとしての機能も持つリヤウイングや、油圧式のアクティブサスペンション、チタン製のキャリパーが採用されたことで、セナのそれよりも約1kgの軽量化を実現したというブレーキシステム、そして電動パワーステアリングなど、ほかにも数多くのメカニズム上の特徴を持つエルバ。そのリヤミッドに搭載されるエンジンは「M840TR」の型式名を持つ4.0リッターV型8気筒ツインターボで、最高出力と最大トルクはそれぞれ815PS、800Nmというスペックとなっている。

このエンジンには低重量のレシプロコンポーネントやドライサンプの潤滑システムが採用され、エグゾーストシステムはチタンとインコネルで製作されたものとなる。

最終的に生産されたのはわずか249台

エルバの生産は当初2020年から399台に限定して行われる予定だったが、それは最終的に249台に修正された。この2020年にはMSOの手によって、かつてブルース・マクラーレンがドライブしたM1Aにインスピレーションを得た、エルバM1Aテーマby MSOが、また同年にはボディカラーをブルーとオレンジのガルフカラーにペイントした、エルバ・ガルフ・テーマby MSOなどのスペシャルモデルも公開されている。

前で触れたフロントウインドウ付きモデルの生産が開始されたのは2021年から。マクラーレンによれば、0-100km/hを3秒以下で、そして0-200km/hを6.7秒で加速し、最高速では335km/hを記録するというエルバ。それはまさに世界の頂点に君臨する運動性能を有した、アルティメット・オープン・スポーツにほかならなかったのである。

720Sをベースとするセナのモノコックとエンジン。最高出力800PS、最大トルク800Nmを発揮する「M840TR」4.0リッターV型8気筒ツインターボを搭載する。

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