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今日は何の日?■レクサス初のハイブリッド専用車HS250h
2009(平成21)年7月14日、レクサス初のハイブリッド専用モデル「レクサスHS250h」が発売された。ハイブリッドシステムは3代目「プリウス」で採用された“リダクション機能付THS II”で、プリウスより排気量の大きい2.4L直4 DOHCエンジンを搭載して、前輪を駆動するレクサス初のFF車である。

レクサス初のハイブリッド車RX400h
レクサスが初めてハイブリッドモデルを設定したのは、2005年の「RX400h」である。日本には投入されず、日本では「ハリアー・ハイブリッド」として発売された。

RX400h/ハリアー・ハイブリッドのパワートレーンは、211psを発生する3.3L V6 DOHCエンジンに、プリウスの2倍以上のトルクを発生する167psのフロントモーターを組み合わせたハイブリッドシステムTHS IIを採用。THS IIはモーターの駆動電圧を500Vまで向上させ、パワーユニットを小型化するなどして、THSに対して出力と効率を向上させた進化版THSである。
さらに、リアにも68psのモーターを配置して、リアモーターを状況に応じて駆動させる電動4WD“E-Four”を採用。THS IIによる燃費とパワーの向上に加えて、電動4WDによる走行性能も強化されたRX400h/ハリアー・ハイブリッドは大きな注目を集めた。

RX400hの発売以降、レクサスのハイブリッドラインアップは拡大し、セダンの「GS」と「LS」、さらにSUVの「RX」でハイブリッドモデルが選択できるようになり、2009年7月のこの日、初めてハイブリッド専用モデル「レクサスHS250h」が登場したのだ。
リダクション機構付THS IIハイブリッドを搭載したHS250h

HS250hは、レクサス初のハイブリッド専用車だが、駆動方式がFFだけなのも日本のレクサスでは始めてだった。HSの名前の由来は、「ハーモニアス・セダン(Harmonious Sedan)」であり、上質との調和、人との調和、地球との調和という3つのハーモニーが開発コンセプトに掲げられた。

スタイリングは、フロントグリルやCピラーなど他のレクサスモデルとの共通点はあるものの、ボンネットからトランクフードまで山型のシルエットはHS独特のもの。インテリアは、FFレイアウトによる室内の広さが自慢であり、特にフラットな床面と高めのヒップポイントをもつ後席は、乗り降りのしやすさや前方視界の良さがウリだった。

ハイブリッドシステムは、基本的には3代目「プリウス」で採用されたリダクション機構付THS II。アトキンソンサイクルの最高出力150ps/最大トルク19.1kgmを発揮する2.4L直4 DOHC(2AZ-FXE)に、143ps/27.5kgmを発生するモーターの組み合わせ、トータルで190psのシステムパワーを誇る。


走行モードは、プリウスと同様にモーターだけで走れる「EVモード」、エンジンの出力特性や空調を燃費優先で協調制御する「エコモード」、高出力を優先させる「パワーモード」の3つのモードが選択可能。燃費は、23.0km/L(10・15モード)と他レクサスのハイブリッドモデルに比べて圧倒的に優れていた。

車両価格は、標準グレードが395万円に設定。レクサスHS250hは、やや小振りで安価なレクサスブランドモデルとして人気を獲得したが、2018年に生産を終えた。

SAIはレクサスHS250hの兄弟車
2009年12月にデビューしたトヨタ「SAI」は、レクサスHS250hの兄弟車にあたり、プラットフォームをはじめ、ハイブリッドシステムや車体の基本骨格、フロントドアなどの部材に至るまで多くが共通設計された。

SAIは、プリウスに次ぐハイブリッド専用車であり、プリウスとクラウンハイブリッドの中間に位置するセミファストバックスタイルの4ドアセダンで、国内専売車種として車体サイズがHS250hに対して、全長で95mm、全幅で15mm、全高で10mm小さい。その他、吸音材の減少で車重も軽く、静粛性の差異や内外装の製造基準など、全般的にはHS250hよりも品質面ではワンランク下に仕上げられていた。

その分、車両価格は標準グレードで338万円とHS250hよりも60万円弱安価に設定。パワートレインがHS25hと同じなので、燃費も23.0km/Lと同じだった。
SAIの位置づけが、やや半端だったこともあり、販売は苦戦してレクサスHS250hよりも早く、2017年に生産を終えた。
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扱いやすく燃費の良い高級車、まさに小さな高級車のレクサスHS250hだったが、ユーザー層が限定的となってしまった。また同じFFハイブリッドの「レクサスES」の方が、高額ながら大きく余裕の室内をアピールして人気を獲得したことで、HS250hの存在感は薄れてしまった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
