500台の限定車にも遠慮は無し!
位置決めやマウント類の製作など苦労の末に仕上げた至高の1台
トップフューエルが手がけた数多の70スープラの中で、唯一RB26へのスワップを果たした個体が存在する。その理由は、オーナーの「誰とも違うチューニングを」という強いこだわりにあった。

ベースとなったのは、1988年8月のマイナーチェンジに際し、グループAのホモロゲーション取得用として設定された500台限定の「スープラ ターボA」。当時の最上位モデルである3.0GT(7M-GTEU搭載)をベースに、タービンやインタークーラーの大型化が施され、最高出力は240psから270psへ、最大トルクは35.0kgmから36.5kgmへと引き上げられていた。
エクステリア面では「TURBO A」エンブレムに加え、フロントバンパーに設けられた3連ダクト(通称「ターボAダクト」)が象徴的なディテール。これは当時、他車種への流用も流行したほどのインパクトあるパーツである。

グループAツーリングカーシーン全盛の時代において、スープラ ターボAやスカイラインGTS-Rといったホモロゲーションモデルは、多くのファンにとって憧れの存在だった。
当時の新車価格は405万1000円。現在でも中古車市場では、状態に関わらず300〜400万円台で取引されることが多く、低走行・極上車ともなれば1500万円近い価格が付くこともあるという。そうした希少車を、現在もなお積極的にチューニングしているという点が、この車両の特異性を物語っている。

RB26DETTエンジンへの換装を決断した契機は、もともと搭載されていた7Mエンジンのブロー。補修パーツの確保が困難であったことからエンジンスワップを検討し、オーナーの意向によりRB26の搭載が決定された。製作を担当したトップフューエルの中津氏は「まずは実績のある2JZスワップを提案したのですが、オーナーの意志は揺るぎませんでした」と振り返る。

搭載に際しては、バッテリーやウォッシャータンクの移設など細部の工夫によってエンジンルーム内に収め、ボディ加工なしで換装を実現。タービンにはギャレットGTW3476Rをシングルで使用し、700ps対応のスペックを持ちながら、ブースト圧を1.3キロに抑えることで耐久性を重視した530ps仕様とされている。


制御はHKS製F-CON Vプロ3.4を使用し、AFセンサーとの組み合わせによって空燃比を最適化。さらにワンオフ製作されたチタン製マフラーは、細かく角度を調整したエビ管仕様で、RB26特有のエキゾーストノートを奏でる。

ワンオフのエンジンマウントはRB25用のミッションとセットでボディに当たらずうまく納まる様に製作された力作。見た目には苦労したポイントが判らないほど自然な装着がなされている。

RB25用のニッサン純正ミッションを使用したので、RB26エンジンとの接合はボルトオン。ミッションから出たプロペラシャフトの長さを溶接加工で調整して、スープラのプロペラシャフトに繋げている。
足まわりにはPRS製の車高調をセット。ブレーキはD2製6ポット/4ポットキャリパーに、フロント350φ/リヤ330φローターを組み合わせ、確実な制動力を確保する。


外装はフロントにラブラックス、リヤにユーラスのオーバーフェンダーを装着。片側70mmワイド化され、アドバンGTの11Jホイールを前後通しで履く。ホイールのオフセット調整にはフロント10mm/リヤ30mmのスペーサーが活用されている。

室内にはDefi製スポーツディスプレイを中心に、各種メーターやインジケーターを独自に配置。アナログ感を排し、現代的な機能美を備えたコクピットに仕立てられている。

オーナーにとって、この仕様こそが理想の70スープラであるという。ターボAとしての希少性は継承しながらも、チューニングによってまったく新たな価値を纏った1台。限定車という出自にとらわれず、オーナー自身の美学を貫いた結果生まれた唯一無二の存在だ。
●取材協力:トップフューエル 三重県松阪市中道町500-1 TEL:0598-56-5880
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