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今日は何の日?■実用性の高さにこだわった2代目アニベール
1998(平成10)年8月24日、日産自動車はステーションワゴン「アベニール」の2代目を発売した。1990年代に一世を風靡したステーションワゴンの立役者だった「レガシィ・ツーリングワゴン」よりも、使いやすい実用性を重視したステーションワゴンをアピールした。

ステーションワゴンブームを巻き起こしたレガシィ
1989年2月にデビューしたスバル「レガシィ」には、スバル伝統のシンメトリカルAWD(水平対向エンジン+4WD)を搭載し、4ドアセダンとツーリングワゴンが用意された。特にツーリングワゴンは、人も荷物も積めるスタイリッシュでパワフルな4WDのステーションワゴンとして大ヒット。当時、RVブームが起こっていたこともあり、キャンプやサマー&ウィンタースポーツの足として若者から絶大な支持を受けた。

2.0Lターボを搭載した200psの「ツーリングワゴンGT」や1993年10月に2代目が登場する頃には、その人気はピークに達し、空前のステーションワゴンブームが巻き起こった。

レガシィ・ツーリングワゴン人気に刺激を受けて、他メーカーからもステーションワゴンが相次いで市場に投入された。トヨタ「カルディナ」、「カローラフィールダー」、ホンダ「アコードワゴン」、「アヴァンシア」、三菱自動車「レグナム」、マツダ「アテンザスポーツワゴン」、そして日産からは1990年代に「アベニール」、「ウィングロード」、「ルネッサ」、「ステージア」などが登場した。
打倒レガシィで登場した初代アベニール
ステーションワゴンブームに対して、日産は1990年5月にステーションワゴン「アベニール」を発売した。“スポーツカーの次に来るもの”というキャッチコピーで、新たなジャンルのクルマであることを強調した。

スタイリングは、なだらかな背の高い実用性を重視したデザインで、精悍なフロントマスクやリアビューを特徴とし、室内空間については、余裕のヘッドスペースとショルダールームが確保され、快適性が追求された。
荷室については、リアサスペンション機構の工夫によってフラットな荷室フロアとし、最大限の荷室空間を創出。他にも、シートクッション跳ね上げ式リアシートでキャビンとの一体感が自慢だった。
パワートレインは、最高出力140psの2.0L直4 DOHC、110psの1.8L直4 SOHCの2種エンジンと4速ATおよび5速MTの組み合わせ。駆動方式は当初FFのみだったが、半年後に2.0Lエンジンにはビスカスカップリング付センターデフのフルタイム4WD(アテーサ)が採用された。

レガシィ・ツーリングワゴンには敵わなかったが、アベニールはまずまずの人気で滑り出したが、1992年にトヨタから「カルディナ」が登場すると人気は下降。挽回のため、1995年にマイナーチェンジでボリューム感のあるスタイリングに変更し、210psの2.0L直4 DOHCターボエンジンを搭載した「GTターボ」をラインナップに加えたが、人気回復にはつながらなかった。
実用性にこだわった2代目アベニール
1998年8月のこの日、アベニールはモデルチェンジで2代目に移行した。ラインナップは、ターボエンジンを搭載したスポーティな「GT4系」とNAエンジン搭載の「サリュー」で構成された。


2代目は、ウェッジ型のサイドラインや大型のヘッドライトと独立したフロントグリル、バンパー一体型のフロントスポイラーなどが特徴で、ボディサイズもひと回り大きくなった。



搭載エンジンは、ビジネスワゴンからスポーツワゴンまでカバーするために4種のエンジンが用意された。ガソリンエンジン3種は、1.8L(125ps)、2.0L(145ps)、2.0L IC(インタークーラー)ターボ(230ps)の直4 DOHC、加えて2.0L直4 SOHCディーゼルターボ(91ps)を設定。トランスミッションは、5速MTおよび4速AT、CVTが組み合わされた。駆動方式は、FFと4WDが用意されたが、スポーティなGT4系は4WDのみだった。


車両価格は、GT4系のベースグレードが289.8万円(4WD)。当時の大卒初任給は、19.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約340万円に相当する。
アニベールは、初代も2代目も使い勝手を重視した実用性に優れたステーションワゴンだったため、当時のスポーティなワゴンブームには上手く乗れなかった。
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1990年代の日産は、アニベールの他にサニーベースの安価なコンパクトステーションワゴン「ウィングロード」、SUV風の「ルネッサ」、ラグジュアリーなステーションワゴン「ステージア」を市場に投入した。それぞれ個性的なワゴンとして評価されたが、いずれもレガシィ・ツーリングワゴンの牙城を崩すだけの人気は得られなかった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。


