開発の概要
今回ホンダが開発した固体異物分離技術は、溶媒で樹脂を溶かして「固体異物」を除去するケミカルソーティングにより、高純度の樹脂を抽出するものである。一般的に自動車から出る廃プラスチック部品には、インサート金属※2、ゴムホース、パッキンおよび樹脂に含有されるガラス繊維をはじめとする補強材などの、プラスチックとは異なる固体異物が含まれている。これまでは、固体異物が付帯した廃プラスチック部品をリサイクルするには、人の手や機械により物理的に選別を行う「フィジカルソーティング」を用いることが一般的だったが、分別の工程に伴うコスト上昇などさまざまな課題が残っていた。
ケミカルソーティングにより、これまで80%程度にとどまっていた固体異物分離率が99%以上に改善され、高純度のプラスチックを抽出できるようになった。本技術から抽出された純度99%以上の高純度プラスチックは、メカニカルリサイクル・ケミカルリサイクルなどの再資源化工程を経て、再び自動車用材料として使用する「水平リサイクル」が可能とされる。

開発の成果
ミリメートルサイズの粗大異物に対しては目詰まりの少ない目の粗いフィルターを用い、マイクロメートル※3サイズの微小異物に対しては遠心分離機による物理的分離を適用することで、従来は異物のサイズごとに必要だった除去フィルターの仕様の調整が不要となり、微小異物から粗大異物まで一貫して除去可能としたこと。これによりメンテナンスやフィルター交換を最小限化し、産業スケールで安定的に運用できる連続プロセスを構築したこと。この2点により、ホンダはELV由来廃プラスチックのリサイクルにおいてさまざまなサイズの異物除去に対応できるようになり、リサイクル可能な対象部品が増えたことで、経済合理性と展開性を両立させて実用化につなげられた。また、ホンダは再資源化技術に長年取り組んでおり、その知見と技術基盤、社外のパートナーとの協力体制の進展が、今回の開発を支えたという。
今回開発された固体異物分離技術により、以下のような効果が実現された。
- 選別工程の削減による設備投資の削減
- プロセス短縮による工程費用の削減
- 歩留まり※4の向上(各選別工程で除去される異物側に樹脂が付帯してしまう量を削減)
- 金属やゴムの混入を防ぐことで、後工程の品質基準をクリアできる質の高いプラスチックをより高効率に取得可能
- 樹脂劣化温度より低温で、樹脂を溶解可能なためプラスチックの劣化を抑制
- リサイクルされた樹脂を固体の状態で排出することができるため、樹脂ペレット※5としても取得可能
- 従来焼却処理されていた強化繊維樹脂がリサイクル可能になったことによりCO2低減

【注釈】
- 使用済み自動車(End-of-Life Vehicle)
- プラスチック製品やゴム製品などの成形品の中にあらかじめ埋め込まれる金属部品
- 1マイクロメートル=0.001ミリメートル
- 投入した原材料の量に対して、どれだけ良品ができたかの割合。ここでは良品として獲得できた樹脂の量を、廃材原資の投入量で割った数値を指す
- プラスチックの成形に使用される原料。3~5ミリメートル程度の小さな固まりの形状
