プラットフォームを刷新するとともに、バッテリー容量を10%増加
スバル・ソルテラの改良モデルが発表された。このクルマはスバルとトヨタが共同開発した電気自動車(BEV)で、スバル版はソルテラ、トヨタ版はbZ4Xである。2022年に国内で販売が始まったソルテラはスバル唯一のBEVとして孤軍奮闘していたが、改良型はソルテラを含めて4車種で広くユーザーのニーズをカバーすることになる。


スバルは2024年11月に行なったビジネスアップデートで、2026年末までに4車種のBEVを投入すると発表した。そのうちの1台がソルテラで、実用性と先進性を備えたオールラウンドSUVの位置付けである。4車種は開発陣のあいだで「BEV4(ベブフォー)」と呼んでおり、すべてSUVタイプ。このうちソルテラは中核を担うことになる。
2025年4月のニューヨーク国際オートショーで世界初公開されたのがトレイルシーカーだ。ソルテラよりも155mm長いホイールベースと、リヤエンドまで一直線に伸びたワゴンらしいスタイルを持つBEVで、大容量のラゲッジエリアが特徴。10月31日に一般公開が始まるジャパンモビリティショー2025で日本仕様が公開される。
7月にはニューヨークでソルテラよりもホイールベースを100mm、全長を170mm短くし、より取り回しのいいサイズとしたアンチャーテッドを発表。未発表の残り1台は、スバルのガソリンエンジン車のラインアップでアセント(3列シートを備えるSUV。国内未導入)に相当するモデルと推察することができる。
エクステリア:新しいスバルの顔は6ポイント・シグネチャーランプ
ソルテラを含めBEV4に共通するのは、新しい“顔”を備えること。スバル車の顔といえばコの字型のヘッドランプとヘキサゴングリルの組み合わせが定番だが(新型フォレスターで新しい動きが感じられはするものの)、BEV4では新境地を開いている。グリルレスのフロントマスクに6ポイント・シグネチャーランプをあしらっているのが特徴だ。
六角形(つまりヘキサゴン)を半割にしたようなデイタイムランニングライト(DRL)で上側のランプを構成。半割にした上下の光源を1組とすれば、左右で6つと捉えることもできるし、片側の6個で六連星のイメージと重ね合わせることもできる。ヘッドランプは6ポイント・シグネチャーランプの下に独立して配置される。六連星のエンブレムは大きくなっただけでなく、夜だけでなく日中も発光するタイプが採用された。


改良型ソルテラのフロントマスクは大変更と言っていいが、実は当初、外観を変更する予定はなかったのだという。ところが、車両全体の変更規模を考えたら「外観デザインも変えないと、新しい内容だとわかってもらえない」と判断し、急遽フロントマスクを変更することにしたのだという。個人的には、変えて正解だと感じている。走りも含めて内容が激変しているのに、顔が前と同じではチト寂しいからだ。


メカニズム:システム最高出力は165kWから252kWへと大幅増
改良型ソルテラはプラットフォームと電動系コンポーネントを刷新している。だったらフルモデルチェンジじゃないかと思うかもしれないが、実質的にはそうで、フルモデルチェンジに近い刷新内容になっている。プラットフォームを刷新した最大の理由は、バッテリー容量の増大だ。初期型ソルテラにとって最大の改善要望点だった航続距離を伸長するためには、もっとバッテリーを積みたい。そのためにはプラットフォームを刷新する必要があったというわけだ。
ただバッテリーのためだけにプラットフォームに手を入れるのはもったいないので、ボディに手を入れて剛性を向上させている。その結果、「前後の足まわりのチューニングの幅が広がり、よりやりたい方向に寄せていけるようになった」という。やりたい方向とは、ドライバーの操作に対して素直に反応すること。扱いやすくて乗りやすいクルマにすることが、安心・安全につながるという考え方がベースにある。
初期型のソルテラはリチウムイオンバッテリーのセルを96個搭載し、71.4kWhの総容量を備えていた。改良型は104個のセルを搭載し、総容量は74.69kWhである。改良型のバッテリー容量は新しい規格に従って計算された数字のため、従来より低い値になる傾向がある。改良型の容量は初期型に対し4.6%増にすぎないが、実質的には約10%向上しているという。
初期型ソルテラAWD/20インチの一充電航続距離が487kmだったのに対し、改良型のAWD/20インチは622km(開発目標値。以下同)で約28%も増えている。2WD(FF)/18インチは567kmから746kmとなっており、約32%増だ。バッテリーの容量増だけでは計算が合わず、eアクスル(モーター+インバーター+減速機)の効率改善との合わせ技により実現した。
eアクスルはインバーターのパワー半導体に低損失のシリコンカーバイド(SiC)を適用するなどし、低損失化を図った。同時に、出力をアップ。システム最高出力は初期型のFWDが150kWだったのに対し、改良型は165kW。4WDは初期型の165kWに対し、改良型は252kWとなっている。数字は正直だ。加速性能は間違いなく上がっている(とくに4WD)。


弱点だと認識していた低温時の充電性能にも手を打った。改良型は低温時にバッテリーを最適な温度に昇温させるプレコンディショニング機能を適用することで、低温時の充電時間短縮を図っている。これにより、マイナス10度でも常温時と同程度の時間で充電を済ませることができる(初期型は倍の時間がかかった)。

インテリア:スリムなベンチレーショングリル採用で水平基調のインパネに
インテリアも大きく変わっている。初期型はセンターコンソールからディスプレイまでを連続した面で構成し、ドライバーを包み込むような空間の作り方になっていた。改良型は左右に水平軸を通し、空間がより広く見えるようなデザインに変更している。このデザインを実現できた要因のひとつが、スリムなベンチレーショングリルだ。

スバル車は寒冷地でも乗員が寒くならないよう、また夏は暑くなりすぎないよう空調性能に高い目標値を設定しているという。ベンチレーショングリルの開口部を小さくすると性能の達成が厳しくなるが、ソルテラ改良型(を含むBEV4)ではスリムな開口でもしっかり風を出すことができる設計とすることにより、左右に水平軸を通すデザインが実現できたという。

機能面では、14インチの大型センターディスプレイの採用とワイヤレス充電機能の改良が目を引く。初期型のセンターディスプレイは12.3インチ、ワイヤレス充電器はセンターコンソールの手前側に1か所、ふた付きのボックス内部に設けられていた。改良型はシフトセレクターやドライブモードなどのスイッチ類を手前に移動してスイッチ類の操作性向上を図ると同時に、コンソールの奥にワイヤレス充電器を2か所設置。スマホを2台並べて充電できるようになっている。

また、マルチカラー(64色)のアンビエントライトをインパネとインナードアハンドル部に採用。ドア側は後側方レーダーで移動物を検知すると、ドアを開ける際に点滅して乗員に警告する機能を取り入れている。
改良型ソルテラを手始めにBEVのラインアップが増えるのに対応し、スバルは販売店での充電インフラ整備を進める。「充電はEVを使っていただくお客様にとって非常に重要なファクター。お客様に安心して、愉しいEVライフを送っていただく体制を整備して参ります」と担当者。まずは2026年1月以降を目処に、全国のスバル特約店16店舗に150kWの急速充電器を設置する計画を進めている。充電インフラのさらなる拡充に取り組むとともに、「充電の不安を含め、お客様の不安を解決できる人材を育成していく」という。
スバルはBEVの販売とサービスに本腰を入れて取り組んでいく。この決意を広く浸透させるべく切り込み隊長の役割を担うのが、新しい顔でイメージを一新し、BEVとしての実力と機能に磨きをかけた改良型ソルテラというわけだ。







