「再生のための共創が生まれつづける場」という空間コンセプトの具現化に加え、その設計・制作のプロセス自体が、ヤマハ発動機と空間のトータルプロデュースを担った株式会社船場による“共創の実践”であった点が高く評価
このアワードでは、「再生のための共創が生まれつづける場」という空間コンセプトの具現化に加え、その設計・制作のプロセス自体が、ヤマハ発動機と空間のトータルプロデュースを担った株式会社船場による“共創の実践”であった点が高く評価された。
また、廃材をアップサイクルした家具什器の展示にとどまらず、空間の随所にヤマハ発動機の企業姿勢やレガシーが表現されていることも、企業ブランドの発信拠点としての説得力を高め、「企業プロモーション空間部門」にふさわしい事例として認められた。

ヤマハ発動機は、オートバイやボートをはじめとする自然の中で楽しむモビリティを開発し、豊かな自然の恵みのもとで事業を展開してきた。しかし近年、気候変動や生態系の変化など、地球が抱えきれないほどの負荷が顕在化している。これまで地球の恩恵を受けて企業活動を行ってきた同社は、社内外の多様なプレイヤーとともに、自然・人間性・コミュニティをより良い状態へ再生(Regenerative)することを目指している。このリジェネラティブという考え方には、自然環境だけでなく、人間性やコミュニティの再生といった、私たちの長期ビジョン「ART for Human Possibilities―人はもっと幸せになれる」にも通じる想いが込められている。その象徴となる共創の拠点として、2024年10月に「YAMAHA MOTOR Regenerative Lab」をオープンした。
リジェラボは、「共感がめぐり、共創が生まれ続ける拠点。」をコンセプトに、来訪者との共感を生み出し、「共創」を模索し、新事業やイノベーションを生み出す拠点。イベントなどを通して情報発信や交流が行えるよう、多様な使い方を想定したワークショップエリア、社内外の来訪者が利用可能なコワーキングエリアのほか、ギャラリーエリアや、来訪者との仲を深めるキッチンなどを設置している。
そのコンセプト具現化のポイントは、次の3点。
■FRP(繊維強化プラスチック)素材をアップサイクル
過去に使用していたFRP(繊維強化プラスチック)を、展示什器やテーブル、可動棚へとアップサイクル。リジェネラティブと向き合う姿勢を象徴する什器として再生した。
■端材や廃材を用いたアートワークを制作
製品製造の過程で生じる端材や廃材を拾い上げ、偶然が生み出した不思議な造形や個性的な表情をもつアートワークを制作。これまでゴミとして見過ごしてきたものを改めて観察することによって、廃棄物に対する固定観念に気づき、新たな視座を得られる仕掛けとした。
■家具・什器を廃棄物のアップサイクルで制作
運搬台車、廃棄物用ワゴン、FRP成型用の型枠、ボートハンドル、輸送時の梱包材など、ヤマハ発動機由来の廃棄物を様々な家具・什器へとアップサイクル。これに加えて、廃校の机や椅子、廃棄予定のポンプ車、工事現場のケーブルドラム、使用済みスノーボードなど、社会にあふれる不要となったものでも家具や什器を創った。これにより、訪れる人がコンセプトを直感的に理解し、社会全体とのつながりも感じられる空間へと仕上げた。
リジェラボオープン以降、社内外のさまざまなパートナーと対話や共創の機会が生まれている。取材や協業の相談も増えており、少しずつ実績が広がってきた。同社は今後も、リジェネラティブな活動に共感してもらえる方々との対話をさらに深め、新たな共創の種をともに育てていく。
