Immendingen Test and Technology Centre
軍用基地跡地に巨大テスト施設を建設

今回、新たなヘッドライト試験用施設が導入された「インメンディンゲン・テスト&テクノロジー・センター」は、10年前に軍用基地をベースに建設がスタート。これまで約3万台の試験車両が、延べ1億kmを走行している。これは地球を約2500周したのに相当するという。
敷地面積は520ヘクタール、全長86kmの試験路と286の交差点を備え、都市部の複雑な交差点から標高差180mの山岳路、石畳、悪路、高速道路、オフロードまで、現実世界の道路環境を再現。欧州、米国、中国、日本の道路標識や路面表示も設置されており、最大400台が同時に試験走行が可能となっている。
さらに「人工太陽」により、低い太陽光や強い逆光も再現可能で、豪雨や水しぶきもシミュレーションすることができる。
最大5台の車両のライトテストが実施可能に

今回、オープンした「ライト・テスティング・センター」は、全長135m・高さ8mというサイズを誇る屋内施設で、自動車業界における同種施設の中で最大規模となる。これにより、時間帯や天候、環境要因に左右されることなく、再現性を持った一定条件下でヘッドライトシステムのテストが可能となった。
ライト・テスティング・センターは全長135mにわたり、様々な地域の田舎道を完璧に再現。路面に敷かれたアスファルト混合物は、経年変化した道路の反射特性を可能な限り忠実に再現するよう特別に開発された。このエリアは最大5台の車両を並行してテストが可能となっており、対向車や先行車両とのシミュレーションも実施することができる。
道路の両側には20m間隔で反射ポールや、歩行者ダミーを組み込むことが可能。ライト・テスティング・センターへの投資額は1050万ユーロ(約18億2600万円)が計上されており、2年間の建設期間を経て完成に至った。
「自動化耐久サーキット」の導入

高度な試験設備を備えたインメンディンゲン・テスト&テクノロジー・センターは、自動車業界の常識を打ち破る、革新的なテスト施設を次々と導入してきた。その一例となるのが「自動化耐久サーキット」であり、この試験施設では、走行ロボットにより、完全自動運転下で試験車両を走行させることが可能になった。
コースには深い穴や段差、石畳が存在し、シャシーと車体に大きな負荷を与えることができる。さらに自動化により走行精度と走行再現度が高められ、テストドライバーへの負担も大幅に軽減された。
24時間365日の稼働が可能になったことで、試験期間も大幅に短縮。車種によっては最大6000kmの走行を行っており、これは実際運転環境下では実に30万kmの走行に相当する。つまり、自動化耐久サーキットにおける1kmは、深い穴が点在する極端な悪路の150kmと変わらない。
デジタル化によるテストの効率化を実現

インメンディンゲン・テスト&テクノロジー・センターの全施設が「デジタルツイン(現実の世界から収集したデータをコンピューター上で再現)」を備えており、すべてのテスト施設がデジタル化に対応。あらゆる車両をデジタル上に再現し、事前シミュレーションや試験ベンチの荷重データとして利用することができる。そのため、実際の走行前に数千kmもの“デジタル走行”を行うことが可能になった。
新型車のシャシーセッティングでは、100種類以上の仕様をデジタル下で事前にテストし、最適なものだけを試作車に搭載して実走テストに進む。雪・氷・極端な高温を除き、ほぼすべての試験を1ヵ所で集中的に実施できる点が、インメンディンゲン・テスト&テクノロジー・センターの大きな強みと言えるだろう。