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今日は何の日?■規格改定に合わせてデビューした軽ハイトワゴンのプレオ
1998年(平成10)年10月9日、スバルはスズキの「ワゴンR」が起爆剤となって急速に人気が高まった軽ハイトワゴン市場に「プレオ」を投入した。同年10月から、衝突安全性の向上を図る目的で全長100mm、全幅が80mm拡大する規格改定が実施され、この改定に合わせてスバルはプレオを投入したのだ。

プレオの先代にあたるヴィヴィオ
1990年に軽自動車の規格変更が行なわれ、全長が100mm拡大され、エンジン排気量の上限は550cc→660ccに拡大。当時の軽自動車は、ボクシーなフォルムが一般的だったが、「レックス」の後継として新規格に対応して1992年3月にデビューした「ヴィヴィオ」は、曲面を多用した軽としては個性的なフォルムだった。

スバルらしく、サスペンションは軽としては異例の4輪独立懸架。パワートレインは、一般的な3気筒でなく最高出力42ps/最大トルク5.3kgmを発揮する660cc 直4 SOHCエンジンと5速MTおよびCVTの組み合わせ。駆動方式はFFとフルタイム4WDが用意された。

さらに、64ps/9.0kgmの4バルブDOHC IC(インタークーラー)スーパーチャージャーの高出力エンジンを搭載したホットモデル「ヴィヴィオRX-R」を設定。何とこのモデルベースで、WRCのサファリラリーに参戦し、軽自動車で唯一のクラス優勝を飾るという快挙を成し遂げた。

上質で技術的にも優れたヴィヴィオだったが、1993年に登場したスズキ「ワゴンR」や1995年登場のダイハツ「ムーヴ」が火付け役となったハイトワゴンブームに押されてヒットモデルにはならず、軽最後の規格変更前の1996年に生産を終えた。

軽ハイトワゴンのワゴンRに対抗したプレオ
スバルが、ハイトワゴンブームに対応するために、1998年10月のこの日に市場に投入したのが、新コンパクトワゴンを謳った「プレオ」である。ワゴンRに対抗するため、全高をヴィヴィオから200mm拡大し、背の高いミニバン的スタイルが採用された。

ハイトワゴンらしい広い室内空間や多彩なシートアレンジ、余裕の荷室が特徴ではあるが、スバル伝統の先進メカニズムは継承され、4輪独立懸架サスペンションや4気筒エンジン(スーパーチャージャー仕様もあり)の多彩なラインナップ、i-CVTなど、随所にスバルらしさが盛り込まれていた。

エンジンは、多彩な660cc 直4エンジンを用意。最高出力45ps/最大トルク5.7kgmのNA(自然吸気)、58ps/7.3kgmマイルドチャージ、64ps/9.1kgmのICスーパーチャージャー(以上はSOHCエンジン)、さらに64ps/10.1kgmを発揮するDOHC ICスーパーチャージの4種エンジンと、5速MTおよびi-CVTの組み合わせ。駆動方式はFFとフルタイム4WDが用意された。ちなみにマイルドチャージとは、低中速重視のセッティングをしたスーパーチャージャーで、パワーと低燃費を両立するために設定されたのだ。

車両価格は、2WDの標準グレードが86.5万円/マイルドチャージ102.5万円/スーパーチャージャー126.5万円。当時の大卒初任給は19.6万円(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約104万円/120万円/148万円に相当する。

初代プレオはデビュー後、スバルらしいハイトワゴンとして堅調な販売を続けたが、スバルは2018年に軽自動車の自社開発・生産から撤退することを発表。これを受け、プレオは2010年に生産を終了した。
2代目プレオは、ダイハツ・ミラのOEMモデル
「スバル360」に始まり、数々の軽自動車の名車を投入してきたスバルだが、スバルが得意とするスポーティセダンやSUVの開発に専念するため、2008年に軽自動車の自社開発・生産から撤退することを発表。スズキとダイハツの2強に加え、ホンダ、日産・三菱も加わり、スバルの軽自動車がこの中で存在感を示すのは難しいと判断した背景がある。

2008年、スバルはトヨタ、ダイハツと開発・生産における協力関係を発展させ、各社の持つ技術力を活用して新たな商品ラインアップ、開発体制を構築していくことで合意した。
この協力関係を背景に、スバルは自社開発こそ断念したものの、以降も一部の軽自動車についてはダイハツからのOEM供給車で販売を継続。プレオについては、ダイハツ「ミラ」のOEM車である2代目を2010年4月から発売を始めた。
2代目プレオは、ミラベースに変わったことで全高が1530mm(初代1625mm)と低くなり、ハイトワゴンからセダン系になった。
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プレオ以外に、ダイハツからOEM供給を受けているモデルには、ステラ(ダイハツ:ムーヴ)、プレオ+(ミライース)、シフォン(タント)、サンバーバン/トラック(ハイゼットカーゴ/トラック)がある。OEM供給を受けることで、スバルは自社の軽ユーザーを引き留めてブランドを維持でき、一方のダイハツはベース車の生産台数を増やすメリットがあるのだ。
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