4モーター合計で1000ps以上を発揮し、0-100km/hを2.5秒でこなす。新型BEV「エレットリカ」の全貌は2026年春に明かされる

新世代EV用シャシー(車体前方側)

このたびの発表に際して同社はこのようにコメントしている。
「まったく新しい革新的なアプローチから生み出された新型Ferrari Elettrica(エレットリカ)は、最先端のテクノロジーと卓越したパフォーマンス、そしてすべてのフェラーリに共通する比類なきドライビングプレジャーを融合しています。フェラーリが誇るエンジニアリングとクラフトマンシップの伝統に忠実に、このモデルの主要コンポーネントはすべて社内で開発・製造されており、フェラーリならではの卓越したパフォーマンスと独自性を確実に実現しています。」

新型「エレットリカ」は、2009年のF1マシンに採用されたハイブリッド技術を起点とする、フェラーリの電動化に関する長年の技術研究の集大成となる。
2010年の「599 HY-KERS」プロトタイプ、2013年の「ラ フェラーリ」、そして同社初のプラグインハイブリッドモデル「SF90ストラダーレ」や「296 GTB」、さらに今年9月に発表された「849テスタロッサ」へと至るまで、同社はその過程であらゆる側面において卓越した性能を発揮する電動モデルを開発するためのノウハウを積み上げてきた。

新世代EV用シャシー(車体後方側)

フェラーリがブランド史上初の電動モデルの開発に向けて掲げた戦略は当初から明確だった。
それは「フェラーリの価値観にふさわしい卓越したパフォーマンスと真のドライビング・エクスペリエンスを実現できる技術が確立した段階でのみ、そのモデルを世に送り出す」というもの。
このたび、その構想はついに量産段階へと到達し、60件を超える独自技術特許を有している。

アーキテクチャは、短いオーバーハング、フロントアクスルに近い先進的なドライビングポジション、そしてフロア全面に統合されたバッテリー構造を特徴としている。
バッテリーモジュールは前後アクスル間に配置され、その85%が車体の最も低い位置に搭載されることで、重心を大幅に低下させ、優れたドライビングダイナミクスを実現。
とりわけ注目すべきは、「エレットリカ」の重心が同等の内燃エンジンモデルと比べて80mmも低い位置に設定されている点であり、そのことが際立った運動性能をもたらしている。

独立型リヤサブフレーム

リヤには、フェラーリ史上初となる独立サブフレームを採用。
これはキャビン内で感じられるノイズや振動を低減しつつ、マラネッロ(フェラーリの本拠地)のクルマに期待される剛性と運動性能を確保するよう設計されている。
さらに「プロサングエ」で初搭載され、「F80」で進化した第3世代の48Vアクティブサスペンションシステムは、乗り心地、ボディコントロール、車両運動性能をさらに高め、コーナリング時の力を四輪に最適に分配する。

リヤアクスルのカットモデル

フェラーリ初のフル電動モデルには、前後2軸の電動アクスルが搭載されており、いずれも社内で開発・製造されたもの。
各アクスルには同期型永久磁石モーターとF1技術に由来するハルバッハ配列口ーターが採用され、量産向けに最適化されている。

フロントアクスルは、出力密度3.23kW/kg、ピーク出力時の効率は93%を実現。
リヤアクスルは出力密度4.8kW/kgで同じく高いピーク効率を誇る。
フロントインバーターは最大300kWを発揮可能で、アクスルに完全統合され、重量はわずか9kgに抑えられた。

マラネッロで設計・組み立てられたバッテリーは、エネルギー密度約195Wh/kgを誇り、これは電気自動車として世界最高水準。さらに、熱分布と性能を最適化する冷却システムを採用した。

フロントアクスルは2モーター合計で最高出力210kW(286ps)を発揮し、任意の速度(最高速まで)で切り離すことが可能。
これにより、四輪駆動が不要な状況ではリヤ駆動へと切り替え、効率と燃費を最大化できる。
全開加速時にフロントアクスルは最大で3500Nmのトルクを供給することが可能だ。
リアアクスルは2モーター合計で最高出力620kW(843ps)を発揮し、出力密度は4.8kW/kg、ピーク出力時の効率は93%に達する。
「パフォーマンスローンチ」モードでは、リヤアクスルが路面に伝達できる最大トルクは驚異の8000Nmに達する。

1000ps以上(ブーストモード)のシステム最高出力により、約2300kgの車重を持つ「エレットリカ」は0-100km/h加速をわずか2.5秒でこなす。
最高速は310km/hと発表。
バッテリー総容量は122kWhで、一充電航続距離は530kmを上回る。

新世代EV用シャシー(フロント)
新世代EV用シャシー(リヤ)

フロントアクスルにはディスコネクトシステムが搭載されており、電動モーターを車輪から完全に切り離すことで、効率と消費の理想的なバランスを実現。
高速道路走行時のeマネッティーノ設定では車両は純粋なリヤ駆動モードとなる。
動的条件でフロントアクスルのトラクションが必要な場合には、システムが自動的にフロントの2基のモーターを作動させ、四輪駆動が可能となる。
その他の2つのマネッティーノ設定では、常に四輪駆動モードで走行する。

レンジ、ツアー、パフォーマンスの3つのドライビングモードにより、エネルギーの使い方、出力、トラクションの制御方法が決まる。
ステアリングホイールのパドル操作により、ドライバーは5段階のトルクと出カレベルを順次選択でき、徐々に加速しながらクルマとの一体感を味わうことができる。

車両制御ユニット(VCU)が取得する動的パラメータは1秒間に200 回更新され、サスペンション、トラクション、ステアリング機能を予測制御。
これにより比類なき俊敏性、安定性、精密なハンドリングが実現されている。

新型BEV「エレットリカ」の主要コンポーネントは今年1月にイタリア・マラネッロのフェラーリ本社敷地内に新設された「eビルディング」で生産

そしてサウンド。
すべてのフェラーリに共通する特徴は、電動パワートレインの独自性を際立たせるように開発された。
高精度センサーがパワートレイン各部の機械的振動を捉え、それを増幅することで、ダイナミックな走行体験を反映し、ドライバーに直接的な音のフィードバックを提供する、リアルで没入感のあるオーディオ体験を実現している。

新型「エレットリカ」の公開は、2026年初頭にインテリアデザインの雰囲気や感触をいち早く体験できるプレビューで続く。
その数カ月後、来春にはワールドプレミアされ、テクノロジーとデザインが融合したこのモデルの全貌が明らかにされる。