2026年春発売!「PV5」は電動ハイエースになれるか?キアが空白のEV商用バン市場で日本初参入!! | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

商用車の電動促進化事業 地球温暖化対策としてEV化が進められる昨今、日本でも環境省が「商用車の電動化促進事業」を展開。事業者が電動化(BEV、PHEV、FCV※)された商用車(トラック・タクシー・バス)及び充電設備の導入 […]

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未来感のある先進的デザインは空力性能も抜群

PV5。左がパッセンジャー、奥の2台がカーゴ(ロング)。

エンジン車派生モデルではない完全なEV商用バンは、ブランニューモデルであり、EVらしさの演出もあり、非常に先進的なデザインをしている。特にEVシフトを推し進めるKiaでは、2018年からスタートしたブランド再構築にあたりデザインにはかなり力を入れている。

PV5パッセンジャー。パッセンジャーとカーゴ(ロング)は基本的にボディサイズは共通。

PV5もその例に漏れず、フォルムこそ商用バンだけに控えめなボンネット付きのワンボックスだが、そのデザインは非常に未来的なスタイリッシュさだ。特に、モデルライフも長く現行モデルはいずれも10年選手以上となるトヨタ・ハイエースを始めとする日本の商用バンと比べるとその差は特に強く感じられる。

PV5カーゴ。Aピラーからシグネチャーが続き、ヘッドライトはバンパー内に収まり、万が一の衝突時の破損を防ぐ。。ホイールアーチはカーゴ、パッセンジャー共にブラックのクラッディングになっており、バンパーのシルバーガーニッシュやサイドアンダスカートと合わせてSUVテイストだ。

昨今はクルマの空力的進化が非常に進んでいる。電費性能に直結する空気抵抗に関して、EVでは特に開発のポイントになってきている。一方で、ラジエーターなどに空気を当てる必要がないEVはエンジン車よりも開口部を減らすことでき、これは空力性能を追求する上では有利な点になっており、最新のEVのCd値は0.25を下回るほどだ。

パッセンジャーのフロントマスク。
パッセンジャーのリヤビュー。
カーゴのフロントマスク。
カーゴのリヤビュー。これはパネルバンで、リヤドアは観音開き。

PV5も空力は非常に重視して開発されており、各所で空気抵抗を減らす工夫を凝らしている。そのためCd値は0.29とバンボディとしては驚異的な数値を実現している。

パッセンジャーのサイドビュー。フロントシートのグラスエリアはとても広い。
カーゴ(パネルバン)のサイドビュー。取材車のスライドドアは両開きだった。

ボディサイズは全長4695mm×全幅1895mm×全高1899mm(アンテナ込み1923mm)×ホイールベース2995mm。グローバルモデルのため全幅の大きさと、FFのEVのためホイールベースの長さが際立つディメンジョンだ。なお、タイヤサイズは215/65R16となっている。

取材車は215/65R16サイズのNEXEN N Blue Sを装着。アルミホイールも空力効果を狙ったデザイン。
車名PV5ハイエースタウンエースNV350キャラバンNV200バネット
全長4695mm4695mm
4840mm(ワイドボディ)
4065mm4695mm4400mm
全幅1895mm1695mm
1880mm(ワイドボディ)
1665mm1695mm1695mm
全高1899mm
1923mm(アンテナ)
1980mm
2105mm(ミドルルーフ)
1930mm1990mm1850mm
ホイールベース2995mm2570mm2650mm2555mm2725mm

シンプルで機能的なインテリアと充実したユーティリティ

外観に対してインテリアは意外とコンサバティブな雰囲気。7インチのデジタルメータークラスターと12.9インチのナビゲーションスクリーンこそ今様ではあるものの、その配置と直線基調のインストゥルメントパネルは極めて事務的な印象を受ける。

日本販売(予定)モデルの右ハンドル仕様のコックピット(カーゴ)。商用車らしい機能性を重視したシンプルさ。
ステアリング水平2本スポーク。右側が音量や電話、左側がクルーズコントロール。ホーン下にドライブモードスイッチを配置する。
シフトレバーはステアリングコラムの右下。「P」はプッシュ、「D」「N」「R」はレバーひねるタイプ。
運転席側ダッシュボードの7インチのデジタルメータークラスター。
センターコンソールの12.9インチナビゲーションスクリーン。エアコンはこちらで操作する。Androidベースの専用インフォテインメントシステムがインストールされている。

エアコンはナビゲーションスクリーンでの操作になるが、物理スイッチ類のレイアウトはオーソドックスなもの。パーキングブレーキのスイッチがダッシュボード右下にある点が独特かもしれない。

センターコンソールのエアコン吹き出し口下に並ぶスイッチはスライドドアやカメラなど。その下がUSBタイプC端子、非接触充電と12V180W電源のスイッチ。その下の小物入れには非接触充電が配置される。
ダッシュボード右側にパーキングブレーキのスイッチ。その右がヘッドライトのレベライザーとなっている。

加えて、樹脂系素材そのままの質感はPV5が商用車であることを感じさせる。その一方で、シートはレザー調素材を使用。パッセンジャーではツートーンカラーとなり、電動調整機構も備える(カーゴは手動)など、グレードアップされている。

カーゴのフロントシート。カラーは取材車はグレー1色で調整も手動式。
パッセンジャー(左ハンドル仕様)のフロントシート。ツートーンカラーに、調整は電動式。
パッセンジャー(左ハンドル仕様)の3名掛けリヤシート。

ダッシュボードやセンターコンソール、ドアポケットなどにも多数の収納スペースが設けられている点も商用車らしい。USB端子はセンターコンソールに2個、前席シート背面に1個ずつの合計4つ用意されており、タイプCに統一されている。

ドアポケットは3段。中段には2本分のドリンクホルダーも用意される。
左右フロントシート背面に設置されたUSBタイプC端子。センターコンソールボックスはオープントレイで、その後端にスライドカバー付きの12V180Wコンセントを配置する。

低床でフラットなラゲッジルーム

フロントにモーターを配置してフロントタイヤを駆動し、バッテリーを床下のフレーム内に収めるPV5はエンジン車、特に運転席下にエンジンを配置し、プロペラシャフトで後輪を駆動するトヨタ・ハイエースなどに比べかなりの低床を実現している。

現状のラインナップではフロントドライブのみなので、ラゲッジルームのフロア高はギリギリまで低くなっている。

PV5のスライドドア開口部のステップ高は399mm、リヤゲートのステップ高は419mmと、トヨタ・ハイエース(スーパーGL)の床面地上高が620mmよりも約20cmも低く、同じFF車でも日産NV200バネットの520mmよりも10cm近く低い。乗り降りはもちろん積載でも有利なのは間違いない。

ホイールハウスの2段張り出しを除けばフラットかつスクエアなカーゴの荷室。
スライドドアのステップ高は低く開口面積も広く、吐き出しもフラット。

PV5のラゲッジルーム容量はパッセンジャーで1320L、2列目シート格納時で3.6立方m(3600L※)。カーゴは容量のL表示は無いが、ロングモデルで4.4立方m(4400L※)、ハイルーフで5.1立方メートル(5100L※)となる。荷室長や荷室幅、荷室高などについてはまだ公開されていないので比較しづらいところだ。
※編集部換算値

上のカーゴ(パネルバン)よりフロア高と掃き出しが高くなっているパッセンジャー。リヤシートは6対4分割可倒式。ホイールハウスは内装で完全に隠れており、スクエアな荷室を実現している。
その代わりにラゲッジボードの下にアンダートレイが備わる。
ラゲッジボードは前二分割で、奥側にもアンダートレイがある。

ただし、最大積載量は690kgとトヨタ・ハイエースの1000kgはもちろん、トヨタ・タウンエースの750kgにも今一歩及ばない数字だ。バッテリーEVの弱点である車体重量が影響しているのかもしれない。

パッセンジャーの取材車にはパワーバックドアが装着されていた。
取材車のカーゴにはラゲッジルーム壁面にAC250V電源が備わっていた。
メーカーKiaトヨタトヨタ日産日産
車名PV5ハイエースタウンエースNV350キャラバンNV200バネット
フロア高419mm620mm620mm625mm520mm
積載重量690kg
(カーゴ)
1000kg
(スーパーGL)
750kg
700kg(4WD)
1000kg
(プレミアムGX)
650kg
600kg(5名乗車)

EVならではスムーズな走りと低重心

EVの魅力といえばやはり力強くシームレスな加速だ。PVのパワーユニットは最高出力120kW(163ps※)・最大トルク250Nm(25.5kgm※)のモーターをフロントに搭載するFF駆動。出力的に特筆する数値ではないが、モーターらしくスタートからトルクフルな加速を見せる。
※編集部換算値

試乗の際、フロントリフトするほどの加速力を見せた。

バッテリーはカーゴ専用に43.3kWhのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを設定するほか、51.5kWhと71.2kWhのニッケル・コバルト・マンガン(NCM)バッテリーの合計3種類を用意する。
航続距離はEU標準のWLTPモードで416km。空荷状態で431km。フル積載で387km。おおよそ100kgあたり1.49%減の走行距離となる計算だ。71.2kWhバッテリーのパッセンジャーならWLTCモードで521kmとなる。

LEDのシグネチャーはウインカーを兼ねる。

また、重量物であるバッテリーをフロア下のフレームに埋め込んでいるため、空荷状態でのテストドライブでは重心の低さを感じ、レーンチェンジなどのステア操作は素直で安定感は抜群だった。加えて、前後席とも商用車とは思えない乗り心地の良さではあったが、試乗コースはフラットで舗装状態も良いテストコースであったため、路面状況や積載時でどのように変わるのかは気になるところだ。

試乗は4名乗車でおこなわれたが、リヤシートの着座位置は低めで4名乗車でも重心は低め。ただ、その分、後席の前方視界は良くはない。
車名PV5ハイエースタウンエースNV350キャラバンNV200バネット
最高出力120kW(163ps※)2.0ガソリン:100kW(136ps)71kW(97ps)2.0ガソリン:96kW(130ps) 83kW(113ps)
2.7ガソリン:119kW(160ps)2.5ディーゼル:95kW(129ps)
2.8ディーゼル:111kW(151ps)
最大トルク250Nm(25.5kgm※)2.0ガソリン:182Nm(18.6kgm)134Nm(13.7kgm)2.0ガソリン:178Nm(18.2kgm)150Nm(15,3kgm)
2.7ガソリン:243Nm(24.8kgm)2.5ディーゼル:356Nm(36.3kgm)
2.8ディーゼル:300Nm(30.6kgm)
出力比較(※編集部換算値)

EVは車中泊に最適!キャンピングカーベースとしても期待

車中泊のネックは夏の暑さだ。窓を閉め切れば暑いし、かといって防犯上、開けておくわけにもいかない。エアコンを使いたいところだが、エンジンを掛けっぱなしにするのはマナー違反となる。ポータブル電源でポータブルエアコンを動かす手もあるが、ただでさえスペースに限りがある車中泊ではそのサイズは馬鹿にならない。

しかし、EVであればクルマのエアコンを稼働していても静かで排ガスも出ないので迷惑にはなりづらい。バッテリー容量の大きなBEVなら使用時間も余裕がある。また、各種電気製品もエアコン同様に気兼ねなく使えるので、車中泊には最適と言えるだろう。

純正用品としてエアマットを設定するなど、各種ユーティリティアイテムを用意している。

また、一時期ほどの勢いに比べると落ち着いて来た感があるキャンピングカーブームだが、実はベース車の供給が追いついていないという現状があるという。特に大型キャンピングカーは敷居が高いが軽自動車ベースでは物足りないというユーザー層が狙うミドルクラスでその傾向が顕著だそうだ。

IHプレートやノートPC、ハンディクリーナーなどの家電も使える。

一番人気はやはりトヨタ・ハイエースだが、キャンピングカーに限らず人気車種だけに供給が追いついていない。一方で、ライバルである日産NV350キャラバンは人気ではハイエースに及ばない。
その下のクラスでは日産NV200バネットは2026年度をもって生産終了が決定しており、トヨタ・タウンエースとダイハツ・グランマックスはダイハツの認証不正問題で供給が追いついていない。

そのような市場概況に投入されるPV5はキャンピングカーのベース車両としても期待がかかる。Kiaとしても、PV5用のアクセサリーや車中泊用のアイテムを充実させているほか、「Kia VanLab」という自社ブランドでキャンピングカーキットを開発。PV5のパッセンジャーモデルでプライベートユースもターゲットとしている。

簡単に脱着できるステアリングテーブルやスマートフォンホルダーなど、豊富な純正アクセサリーが用意される。
荷室壁面にも各種アクセサリーを装着できる。左写真のスマートフォンホルダーもそうだが、アクセサリホールに差し込むだけ。
Kia VanLabのキャンピングカーキット。収納とチェアを兼ねたベッドキットや可動式のテーブルなどPV5(パッセンジャー)にフィットする専用キットだ。

Kiaは『ジャパンモビリティショー2025』に出展!PV5を展示

Kiaはこのほど『ジャパンモビリティショー2025』に出展。日本導入モデルであるPV5を展示する。展示車両はカーゴとパッセンジャーの2モデル4台を予定しているという。カーゴはもちろんだが、パッセンジャーは前述のようなアウトドア志向の展示車両も用意するそうだ。

車中泊派やキャンパーはもちろん、アウトドア派のペットオーナーもPV5に期待しているという話もあった。

実際の発売は2026年春予定と発表されているが、『ジャパンモビリティショー2025』はいち早く実車をチェックするチャンス。PV5が気になるなら、ぜひ会場(東6ホール/EC01)に足を運んでみてはいかがだろうか。