未来感のある先進的デザインは空力性能も抜群

エンジン車派生モデルではない完全なEV商用バンは、ブランニューモデルであり、EVらしさの演出もあり、非常に先進的なデザインをしている。特にEVシフトを推し進めるKiaでは、2018年からスタートしたブランド再構築にあたりデザインにはかなり力を入れている。

PV5もその例に漏れず、フォルムこそ商用バンだけに控えめなボンネット付きのワンボックスだが、そのデザインは非常に未来的なスタイリッシュさだ。特に、モデルライフも長く現行モデルはいずれも10年選手以上となるトヨタ・ハイエースを始めとする日本の商用バンと比べるとその差は特に強く感じられる。

昨今はクルマの空力的進化が非常に進んでいる。電費性能に直結する空気抵抗に関して、EVでは特に開発のポイントになってきている。一方で、ラジエーターなどに空気を当てる必要がないEVはエンジン車よりも開口部を減らすことでき、これは空力性能を追求する上では有利な点になっており、最新のEVのCd値は0.25を下回るほどだ。
PV5も空力は非常に重視して開発されており、各所で空気抵抗を減らす工夫を凝らしている。そのためCd値は0.29とバンボディとしては驚異的な数値を実現している。

ボディサイズは全長4695mm×全幅1895mm×全高1899mm(アンテナ込み1923mm)×ホイールベース2995mm。グローバルモデルのため全幅の大きさと、FFのEVのためホイールベースの長さが際立つディメンジョンだ。なお、タイヤサイズは215/65R16となっている。

| 車名 | PV5 | ハイエース | タウンエース | NV350キャラバン | NV200バネット |
| 全長 | 4695mm | 4695mm 4840mm(ワイドボディ) | 4065mm | 4695mm | 4400mm |
| 全幅 | 1895mm | 1695mm 1880mm(ワイドボディ) | 1665mm | 1695mm | 1695mm |
| 全高 | 1899mm 1923mm(アンテナ) | 1980mm 2105mm(ミドルルーフ) | 1930mm | 1990mm | 1850mm |
| ホイールベース | 2995mm | 2570mm | 2650mm | 2555mm | 2725mm |
シンプルで機能的なインテリアと充実したユーティリティ
外観に対してインテリアは意外とコンサバティブな雰囲気。7インチのデジタルメータークラスターと12.9インチのナビゲーションスクリーンこそ今様ではあるものの、その配置と直線基調のインストゥルメントパネルは極めて事務的な印象を受ける。



エアコンはナビゲーションスクリーンでの操作になるが、物理スイッチ類のレイアウトはオーソドックスなもの。パーキングブレーキのスイッチがダッシュボード右下にある点が独特かもしれない。
加えて、樹脂系素材そのままの質感はPV5が商用車であることを感じさせる。その一方で、シートはレザー調素材を使用。パッセンジャーではツートーンカラーとなり、電動調整機構も備える(カーゴは手動)など、グレードアップされている。

ダッシュボードやセンターコンソール、ドアポケットなどにも多数の収納スペースが設けられている点も商用車らしい。USB端子はセンターコンソールに2個、前席シート背面に1個ずつの合計4つ用意されており、タイプCに統一されている。
低床でフラットなラゲッジルーム
フロントにモーターを配置してフロントタイヤを駆動し、バッテリーを床下のフレーム内に収めるPV5はエンジン車、特に運転席下にエンジンを配置し、プロペラシャフトで後輪を駆動するトヨタ・ハイエースなどに比べかなりの低床を実現している。

PV5のスライドドア開口部のステップ高は399mm、リヤゲートのステップ高は419mmと、トヨタ・ハイエース(スーパーGL)の床面地上高が620mmよりも約20cmも低く、同じFF車でも日産NV200バネットの520mmよりも10cm近く低い。乗り降りはもちろん積載でも有利なのは間違いない。
PV5のラゲッジルーム容量はパッセンジャーで1320L、2列目シート格納時で3.6立方m(3600L※)。カーゴは容量のL表示は無いが、ロングモデルで4.4立方m(4400L※)、ハイルーフで5.1立方メートル(5100L※)となる。荷室長や荷室幅、荷室高などについてはまだ公開されていないので比較しづらいところだ。
※編集部換算値
ただし、最大積載量は690kgとトヨタ・ハイエースの1000kgはもちろん、トヨタ・タウンエースの750kgにも今一歩及ばない数字だ。バッテリーEVの弱点である車体重量が影響しているのかもしれない。
| メーカー | Kia | トヨタ | トヨタ | 日産 | 日産 |
| 車名 | PV5 | ハイエース | タウンエース | NV350キャラバン | NV200バネット |
| フロア高 | 419mm | 620mm | 620mm | 625mm | 520mm |
| 積載重量 | 690kg (カーゴ) | 1000kg (スーパーGL) | 750kg 700kg(4WD) | 1000kg (プレミアムGX) | 650kg 600kg(5名乗車) |
EVならではスムーズな走りと低重心

EVの魅力といえばやはり力強くシームレスな加速だ。PVのパワーユニットは最高出力120kW(163ps※)・最大トルク250Nm(25.5kgm※)のモーターをフロントに搭載するFF駆動。出力的に特筆する数値ではないが、モーターらしくスタートからトルクフルな加速を見せる。
※編集部換算値

バッテリーはカーゴ専用に43.3kWhのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを設定するほか、51.5kWhと71.2kWhのニッケル・コバルト・マンガン(NCM)バッテリーの合計3種類を用意する。
航続距離はEU標準のWLTPモードで416km。空荷状態で431km。フル積載で387km。おおよそ100kgあたり1.49%減の走行距離となる計算だ。71.2kWhバッテリーのパッセンジャーならWLTCモードで521kmとなる。

また、重量物であるバッテリーをフロア下のフレームに埋め込んでいるため、空荷状態でのテストドライブでは重心の低さを感じ、レーンチェンジなどのステア操作は素直で安定感は抜群だった。加えて、前後席とも商用車とは思えない乗り心地の良さではあったが、試乗コースはフラットで舗装状態も良いテストコースであったため、路面状況や積載時でどのように変わるのかは気になるところだ。

| 車名 | PV5 | ハイエース | タウンエース | NV350キャラバン | NV200バネット |
| 最高出力 | 120kW(163ps※) | 2.0ガソリン:100kW(136ps) | 71kW(97ps) | 2.0ガソリン:96kW(130ps) | 83kW(113ps) |
| 2.7ガソリン:119kW(160ps) | 2.5ディーゼル:95kW(129ps) | ||||
| 2.8ディーゼル:111kW(151ps) | |||||
| 最大トルク | 250Nm(25.5kgm※) | 2.0ガソリン:182Nm(18.6kgm) | 134Nm(13.7kgm) | 2.0ガソリン:178Nm(18.2kgm) | 150Nm(15,3kgm) |
| 2.7ガソリン:243Nm(24.8kgm) | 2.5ディーゼル:356Nm(36.3kgm) | ||||
| 2.8ディーゼル:300Nm(30.6kgm) |
EVは車中泊に最適!キャンピングカーベースとしても期待
車中泊のネックは夏の暑さだ。窓を閉め切れば暑いし、かといって防犯上、開けておくわけにもいかない。エアコンを使いたいところだが、エンジンを掛けっぱなしにするのはマナー違反となる。ポータブル電源でポータブルエアコンを動かす手もあるが、ただでさえスペースに限りがある車中泊ではそのサイズは馬鹿にならない。

しかし、EVであればクルマのエアコンを稼働していても静かで排ガスも出ないので迷惑にはなりづらい。バッテリー容量の大きなBEVなら使用時間も余裕がある。また、各種電気製品もエアコン同様に気兼ねなく使えるので、車中泊には最適と言えるだろう。

また、一時期ほどの勢いに比べると落ち着いて来た感があるキャンピングカーブームだが、実はベース車の供給が追いついていないという現状があるという。特に大型キャンピングカーは敷居が高いが軽自動車ベースでは物足りないというユーザー層が狙うミドルクラスでその傾向が顕著だそうだ。

一番人気はやはりトヨタ・ハイエースだが、キャンピングカーに限らず人気車種だけに供給が追いついていない。一方で、ライバルである日産NV350キャラバンは人気ではハイエースに及ばない。
その下のクラスでは日産NV200バネットは2026年度をもって生産終了が決定しており、トヨタ・タウンエースとダイハツ・グランマックスはダイハツの認証不正問題で供給が追いついていない。

そのような市場概況に投入されるPV5はキャンピングカーのベース車両としても期待がかかる。Kiaとしても、PV5用のアクセサリーや車中泊用のアイテムを充実させているほか、「Kia VanLab」という自社ブランドでキャンピングカーキットを開発。PV5のパッセンジャーモデルでプライベートユースもターゲットとしている。

Kiaは『ジャパンモビリティショー2025』に出展!PV5を展示
Kiaはこのほど『ジャパンモビリティショー2025』に出展。日本導入モデルであるPV5を展示する。展示車両はカーゴとパッセンジャーの2モデル4台を予定しているという。カーゴはもちろんだが、パッセンジャーは前述のようなアウトドア志向の展示車両も用意するそうだ。

実際の発売は2026年春予定と発表されているが、『ジャパンモビリティショー2025』はいち早く実車をチェックするチャンス。PV5が気になるなら、ぜひ会場(東6ホール/EC01)に足を運んでみてはいかがだろうか。
2026年春発売!「PV5」は電動ハイエースになれるか?キアが空白のEV商用バン市場で日本初参入!! | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム




















