冠水したアンダーパスで立ち往生しないために

突然の豪雨で道路が水に覆われると、思わぬ場所に危険が潜んでいる。特にアンダーパスのような掘り下げ構造の道路は、雨水が集中しやすく冠水事故が多発している。
愛知県などでは冠水警報装置の設置や、冠水想定箇所マップの公開が進められているが、それでも短時間の集中豪雨には対応しきれないケースもある。
JAFによると、冠水路は見た目以上に危険であり、「水深30cmでクルマが動かなくなり、50cmでドアが開かず、1mで浮いて流されるおそれがある」という。
また、2010年におこなわれたJAFの冠水路走行テストでは、水深60cmでセダンタイプは登り坂に差しかかった地点でエンジンが停止した。
SUVでも速度が高い場合にはエンジンに水が入り込み、走行不能になることが確認されている。この結果からも、冠水時に「少しぐらいなら」と思って進入するのは非常に危険であることがわかる。

では、もし誤って進入してしまった場合、どのように行動するべきなのか。JAFは「まず落ち着くことが最も重要」と強調している。
焦ってエンジンをかけ直そうとしたりせず、まずはシートベルトを外して脱出に備える。その時、窓が開く状態ならすぐに開け、外の水位が低ければそのまま車外へ出る。
もし、パワーウインドウが作動しない、あるいは水圧で窓が開かない場合は、緊急脱出用ハンマーでガラスを割るのが適切だという。この時、フロントガラスは合わせガラスで割れないため、サイドガラスを狙うのが原則である。

また、ハンマーがない場合、水が徐々に車内に入ってくるのを待つことが脱出のチャンスになる。外と車内の水位差が小さくなると、ドアにかかる水圧が下がり、押し開けられるようになるからだ。
そして、息を深く吸い込み、足に力を込めてドアを押すことで、外へ出ることができる可能性が高まる。脱出の際、JAFは「クルマはすぐには沈まない。焦らずに脱出のタイミングを見極めることが重要」としている。
JAFは「水に浸かった車両は、外見上問題がなくても感電や火災のリスクがあるため、自分でエンジンをかけてはいけない」と警告している。
特にハイブリッド車や電気自動車は高電圧バッテリーを搭載しており、感電の危険があるため専門業者の対応を待つのが鉄則である。

もし停車後に安全が確保できる場合は、バッテリーのマイナス端子を外しておくことも推奨されている。その際、外したケーブルが再び接触しないようテープで固定するなどの処置が必要である。
このように、冠水時の行動は「進まない・慌てない・触らない」が基本であり、いずれも命を守るための行動原則である。
また、JAFでは「水没車両を自力で動かそうとせず、ロードサービスへ連絡してほしい」と呼びかけている。JAF会員であれば20kmまで無料でけん引が受けられるため、被害後の二次トラブルを防ぐ上でも早めの連絡が望ましい。
ゲリラ豪雨は予測が難しいが、日頃から避難経路や冠水しやすい場所を把握することで被害を最小限に抑えることができる。アンダーパスや低地の道路は「水がたまりやすい場所」として常に意識しておくことが、安全運転の第一歩となる。
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冠水路では「通れそう」に見えても、実際には命を落とす危険性がある。見極めよりも回避を優先することが、最も確実な安全行動である。
