いま、運送業界の人手不足が問題になっているが、このクルマはひとことでいうと、ドライバーの作業負担や荷役作業時間の短縮などを減らすことをめざして荷台コンテナに工夫を与えたクルマで、「COBODI(コボディ)」を名乗る。
もっともこれは荷台コンテナに与えられた、「物流課題に向けたソリューションとして、革新的なスマートボディとデジタルソリューションを融合した新たなコンセプト」の名称で、「Connected Load Body」の略称だ。
したがって、COBODIコンセプトのコンテナを載せたeキャンターの展示車というのが正しい。

そのコンセプトの内容とは?
ステップなどは設けられているものの、荷を取り出すのにコンテナに上がり込む労力たるや、低床設計の乗用車に乗り込む比ではない。
聞かなきゃわからないもので、ドライバーの1日の荷積み・荷下ろしのためにコンテナに昇り降りする労力は、何とまあ建物26階分なのだそうな。

ならばいっそコンテナに入り込まなくても荷物を手にできる構造にしてしまおうというわけで、COBOIはコンテナサイド左右下半分に小さなドアを3つずつ設けた。


でもこれだけなら逆に荷が取り出しにくくなるだけだ。
これまで荷物はコンテナの中に直置きされるだけだったが、COBODIでは荷を載せた専用のラックを新設した。
表裏に3枚ずつ、荷の大小に応じて自在に上下するトレイを持つラックで、先に荷を載せておいたラックをフォークリフトでCOBODIに積載する。

トレイへの荷置きは、配送計画システム「ワイズ・システム」の指示に従う。
これは「AI(人工知能)を駆使して最適な配送ルートを自動で計画する」システム。
たとえば配送先がA宅、B宅、C宅の順だとすれば、ラックトレイへの荷置きも下から荷物A、荷物B、荷物Cの順でセットしてコンテナに積載しておく。
A宅の荷物は一番下にあるから、COBODIサイドのドア裏には荷物Aが位置することになる。
おもしろいのはここからで、トレイはコンテナ内で電気仕掛けで上下し、A宅の配達が終わると空になったトレイの上にB宅の荷が載ったトレイが重なる仕掛けになっている。
つまりB宅に着いた頃にはドア裏に荷物Bが待っており、次のC宅に行ったときには荷物Cがスタンバイ・・・配達の始まりから終わりまで、路上にいたまま荷を取り出すことができ、1日26階分の昇り降りから解放されるわけだ。
昇り降りからの解放だけでない、空間を無駄にしない最適積載によって1日当たりの配送数は7~14件増え、デジタルシステムによる最適な積載&ルート設定の効果で1回の配達シフト当たりの時間が45~60分短縮するという(さきの説明パネル写真参照)。
COBODIを載せたeキャンター展示車には表裏6枚のラックが3台・・・つまり18個分の荷物が載せられるようになっていた。
トラックが中型、大型になったらラックの数を変えればいいだけだから、車両サイズによる制約はない、柔軟性のあるコンセプトだ。
いまのところ、トレイは上下に移動するだけだが、このコンセプトが発展すれば上下ばかりか左右にも動くようになり、Amazonの倉庫みたいに、荷物が上下左右、自在に移動するようになるのだろう。
それが実現したとき、路側だけでなく、従来どおりトラックの後ろで作業できるよう、後ろのドアの中にもうひとつ小さなドア(ドア in ドア?)を設ければ、後ろから荷を取り出すようにすることもできるようになるかも知れない。

このCOBODIコンセプト、見ればソフトもラックも実現性の高そうなものばかりだから、早く実現して人手不足や過酷な労働環境に悩む物流業界、配送業界の解決の一手になればいいと思う。
