■1900年にニューヨーク国際オートショー開催

ニューヨーク国際オートショーWebサイトより

1900(明治33)年11月3日、米国ニューヨークで世界初のモーターショー「ニューヨーク国際オートショー」が開催された。ニューヨーク国際オートショーは以降、毎年(2020年と2021年は新型コロナ感染拡大で中止)開催されている歴史あるモーターショーで、今年2025年で125周年を迎えた。

フォード設立の3年前に開催されたニューヨーク国際オートショー

第1回「ニューヨーク国際オートショー」は、今から125年も前のことなので具体的なイベントや展示内容などの情報はない。

アメリカ合衆国初の自動車ショーを告知する広告(ニューヨーク国際オートショーWebサイトより)

当時は、1876年にドイツのニコラウス・オットーが4サイクルのガソリンエンジンを発明し、1886年に同じくドイツのカール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーがガソリン自動車を発明した。1895年には、パリとボルドー間で世界初の自動車レースが開催されるなど、自動車は徐々に注目されて普及するようになったが、あくまで富裕層の贅沢な乗り物だった。

ニューヨーク国際オートショーWebサイトより

一方の米国では、フォード設立が1903年、GMの設立が1908年なので、ニューヨーク国際オートショーが開催された1900年は、まだモータリゼーションどころか、クルマ自体が珍しい時期だった。したがって、モーターショーというものの、おそらく町工場のようなところで製造された手作りレベルのクルマの展示であったことが予想される。

ニューヨーク国際オートショーは、その後も毎年開催され、世界と米国の自動車の発展と普及に貢献してきた。

日本では1954年に第1回全日本自動車ショウを開催

第1回東京自動車ショウのパンフレット
1954年、東京・日比谷公園で開催された第1回東京自動車ショウの風景

日本初のモーターショーは、ニューヨーク国際オートショーから54年後の1954(昭和29)年4月20日のこと。東京日比谷公園内で、東京モーターショーの前身である「第1回全日本自動車ショウ(東京モーターショー)」が開催された。

1954年、東京・日比谷公園で開催された第1回東京自動車ショウの風景

当時の日本では、クルマは庶民にとっては手の届かない高嶺の花、クルマ自体も海外車両のノックダウン生産車が主流で、純国産のクルマはほとんど存在しなかった。そのような状況を打破するために、1955年に政府は日本の自動車産業を活性化するため「国民車構想」を提唱し、それに呼応する形で自動車メーカーは純国産技術による国産車の開発に取り組み始めた頃だった。その代表的なクルマが、1955年に登場したトヨタの「トヨペットクラウン」、日本初の量産軽乗用車のスズキ「スズライト」である。一方で、大手メーカーが製造した、戦時下で活躍した3輪&4輪トラックは普及していた。

1954年、東京・日比谷公園で開催された第1回東京自動車ショウの風景

そのような自動車黎明期に開催された第1回全日本自動車ショウには、267台のクルマが展示されたが、当時の主力はトラックやバスであったため、展示車の9割以上は商用車で、乗用車はわずか17台だった。

1954年東京自動車ショウで展示されたトヨタのトヨペットRH型セダン(タクシー車)
1954年東京自動車ショウで展示されたトヨペットトラック
プリンス セダン/プリンス自動車の前身「たま自動車株式会社」が、初めて富士精密工業製のエンジンを搭載して発売したのが「プリンス セダン」で、1952年3月に発表された。 車名の「プリンス」は、明仁親王殿下(※上皇陛下)の「立太子の礼」にちなんで命名されたもので、その後も社名やブランド名として引き継がれた。 45psを発生する1.5L OHVのFG4A型エンジンは、Fが富士精密工業、Gがガソリンエンジン、4が4気筒、Aが最初の開発を表す。 トランスミッションも先進的な4 速で、2 速以上に国産車では初となるシンクロメッシュ機構付きでした。その2年後の1954年、東京・日比谷公園で開かれた「第1 回全日本自動車ショウ」(後の東京モーターショー/現在のジャパンモビリティショー)にプリンスセダンの2 型(AISH-2 型)が出展され、ショー会場で当時の皇太子殿下の目にとまったことで、ご購入の運びとなった。このクルマは、当時の殿下がご愛用になった、極めて貴重な車両(日産ヘリテージコレクションより)

しかし、憧れのクルマを目のあたりにする初めての機会に、10日間の入場者数は延べ54万7000人と大盛況となった。トヨタは、当時乗用車の大半を占めていたタクシー用の「トヨペットRH型セダン」と「トヨペットトラック&バス」を展示。その翌1955年の全日本自動車ショウには、純国産車の「トヨペットクラウン」が華々しくデビューしたのだ。

1953年5月15日~17日には、東京・上野公園で「自動車産業展示会」が開催された。これはまさに「第0回東京自動車ショウ」といえるのではないか

東京モーターショーはジャパンモビリティショーへと進化

「ジャパンモビリティショー2025」は2025年10月31日~11月9日に一般公開されている

全日本自動車ショウは、その後東京モーターショーへ改称して、基本的には2年に1回春に開催されてきたが、2023年にリニューアルして「ジャパンモビリティショー(JMS)」として、秋に開催することになった。近年、電動化や自動運転、コネクテッドカーなど自動車に新たな分野の技術開発が必要となったことから、自動車業界を超えて他産業からも参加するという形態に変えて、名称も“モーター”から“モビリティ”へ変更したのだ。

「ジャパンモビリティショー2025」オープニングイグニションセレモニー

今年のジャパンモビリティショー2025は、ちょうど今開催中(一般公開:2025年10月31日~11月9日)されている。コンセプトは、“ワクワクする未来を、探しに行こう”で、興味深い多くのイベントやプログラムが用意されている。

ジャパンモビリティショー2025開催中!(2025年10月31日~11月9日)
ジャパンモビリティショー2025開催中!(2025年10月31日~11月9日)
ジャパンモビリティショー2025開催中!(2025年10月31日~11月9日)

なかでも個人的に注目するのは、“青春を思い起こすタイムスリップガレージ”だ。本プログラムは、戦後から現代まで「技術への挑戦」や「バブル」、「多様なライフスタイル」や「デジタル」時代など合計8つのテーマに分けて、1970年代以前、1980年代-1990年代、2000年代以降と大きく3つのエリアに分けて、時代を飾った数々の名車が展示されているのだ。

ジャパンモビリティショー2025開催中!(2025年10月31日~11月9日)
ジャパンモビリティショー2025開催中!(2025年10月31日~11月9日)
ジャパンモビリティショー2025開催中!(2025年10月31日~11月9日)

クルマ好きには、必見のイベントだ。

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今年2025年4月に開催されたニューヨーク国際オートショーは125周年を迎え、日本からはトヨタ、日産、ホンダ、スバルが参加した。しかし現在は、米国のモーターショーとしては歴史あるニューヨーク国際オートショーよりもデトロイトモーターショーの方が盛況で、世界5大モーターショーのひとつとして位置付けられている。ビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)が、自動車の本場デトロイトのモーターショーの方に積極的に取り組んだという経緯があるようだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。