新世代「魂動デザイン」のテーマはネオオーセンティック


クロスクーペは魂動デザインを進化させたクロスオーバークーペで、2ローター・ロータリーターボエンジンとモーター、バッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを搭載。最高出力は510馬力。モーターのみで160km、エンジン併用で800kmの航続距離を実現する設定だ。また、微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料を使用し、マツダ独自のCO₂回収技術「Mazda Mobile Carbon Capture(マツダ・モバイル・カーボン・キャプチャー)を搭載する設定でもある。
魂動デザインの進化をどう理解すればいいのか。マツダ・ビジョン・クロスクーペを題材に、デザイン本部長の木元英二氏に話を聞いた。



──特徴的なリヤピラーまわりを見せるクロスクーペのティザー画像を見て、現行MAZDA3を連想しました。
木元英二氏(以下木元):マツダはキャビンとボディの一体感を追求するのが好き。それはMAZDA3くらいから始まっています。キャビンとボディを分けて考えるというより、ひとつのかたまりとして見せています。





──クロスクーペはどのようなテーマでデザインしたのでしょうか。
木元:「ネオオーセンティック」をテーマとしました。我々はクルマ好きなので、クルマのカッコ良さとか本質をしっかり意識しながら、新しい時代の感覚にマッチしたデザインにしようと。クロスクーペはビジョンモデルなので、まずはデザインの表現を重視しています。例えば(2015年東京モーターショー出展車の)RX VISIONは光の動きを表現しています。今回はそこをあえて廃したときにどんな動きができるか。また、フロントではシグネチャーウイングを取ってしまったらどうなるか。最小限のブランド表現でどこまでクルマの魅力を引き出せるかにチャレンジしています。











──CX-60やCX-80もそうですが、ボディサイドに映り込むリフレクションが特徴。それをあえて廃したと。
木元:いかにも動き出しそうな動きはなくさないのですが、それを最小限のかたまりで表現することにチャレンジしています。魂動デザインの生命感や「引き算の美学」はしっかり受け継ぎながら、最小限の処理で作り込んでいます。よりシンプルに表現するということです。それを次のテーマにしたいと思っています。
──シンプルだけど豊かな表現。
木元:まさにそのとおりだと思います。世の中が変わってきて、クルマが置かれる立場も変わってきていますが、クルマのカッコ良さはしっかり受け継いでいきたいし、表現していきたいと考えています。世の中に(BEVなどの)電駆が増えてレイアウトの自由度が増え、なんでもできるようになってきています。でも、クルマのカッコ良さってあったよねと。新しい時代のスタンダードみたいなものが作れるといいなと考えています。
──誰が見てもカッコイイと感じるカッコ良さがある。
木元:はい。新しい時代の感覚で、もう1回作り直すことにチャレンジした1台です。加えて、今回は「コンパクト」も出しています。






VISION-X COMPACTの表現


──クロスコンパクトもクロスクーペと同じテーマでデザインしたのでしょうか。
木元:そうです。コンパクトカーにするとどうなるかトライしてみようと。クーペだけだと、「クーペだからできた」というところもある。コンパクトカーでもネオオーセンティックのテーマでできることを検証しながら、親しみやすさであったり、相棒みたいに楽しみたいであったりの表現にチャレンジしています。














──SUVにもネオオーセンティックのテーマは展開されると考えていいのでしょうか。
木元:当然そこは使っていきたいと考えていますし、もっと考えないといけないと思っています。マツダはスポーティさやエレガンスに対する思いが強い会社。クーペは表現しやすい車型なので、まずそこから作ってみたのが今回のスタディです。そのままSUVにはできないと思いますので、今回コンパクトにチャレンジしたように、新しいデザイン言語をより深めながらいろんな形に展開していきたいと思います。
──クロスクーペは2ローター・ロータリーターボエンジンを積むPHEVという設定です。そういうパワートレーンを積んでいることを感じさせることは意識しましたか?
木元:エンジン載っているというのはあるし、今回直結なんですよね。
──ロータリーエンジンは発電専用ではなく、ダイレクトに後輪に駆動力を伝えられる設定。
木元:エンジンが直結しているクルマという感じを出しています。そういうところは、クルマらしさを追求する従来からの我々の考えとうまくリンクさせながら、イメージをふくらませています。
──大きな力を後輪で地面に伝えそうに見えます。そこは狙ったのでしょうか。
木元:もちろん。CO₂回収装置を後ろに載せられるレイアウトにもなっています。

──デザイン本部長になったのは今年の5月でした。木元カラーをどうやって出していくつもりですか。
木元:マツダは継承していくようなところがあるので、リーダーが変わったからといって全部は変わりません。一部は変えないといけないところはあるのでしょうが、作ってきたものをしっかり育てる。釜の火は消してはいけない、って言うんですけど。まずは、これまでのデザインをしっかり受け継いでいくこと。その後ですね、僕のカラーが出るとすれば。
──どうもありがとうございました。
