エンジンはKF型ターボ

JMS2025に出展されたK-OPEN。軽自動車枠の後輪駆動オープンスポーツの提案だ。

ダイハツは2023年のモビショーに小型車のビジョンコペンを出展した。FRレイアウトの点は今回のコペンと共通しているが、今回は軽自動車規格とした。その理由を説明員のひとりは、「真面目に開発しているから」と説明した。

「デザインモデルとランニングプロトを作ったのは、実際、真面目に開発しているからです。今どき、専用モデルを開発するのは(事業性の観点から)難しい。ランニングプロトのパワートレーンは(軽商用バンの)ハイゼットのものを使っています。約60度スラントしたエンジンで、プロペラシャフトを通している。お求めやすい価格で提供しようと考えると、量産のコンポーネントを流用するのが現実的。どこまで流用できて、どこは専用にしなければいけないのか。そこを今後考えていくことになります」

K-OPEN。

2023年のビジョン・コペン

2023年のJMSに出展されたダイハツ・ビジョン・コペン。全長×全幅×全高 3,835mm×1,695mm×1,265mm ホイールベース 2,415mm 排気量 1,300cc

ダイハツがFRコペンの量産化に関し、真剣に取り組んでいることが伝わってくる。スラントしたエンジンはオイルが偏るため潤滑が難しいが、量産化済みなので技術の知見がある。そこが強みだ。コペンのランニングプロトは一見すると、現行コペンのイメージを引きずっているが、パワートレーンとシャシーはハイゼットの縦置きユニットを流用。フロントサスペンションはストラット式。リヤはリジッドアクスルで、サスペンションはミライース4WDの3リンク式を流用している。

エンジンはハイゼットに搭載しているKF型。ハイゼットが搭載するエンジンはKF型直列3気筒12バルブDOHC排気量:658cc ボア×ストローク:63.0mm×70.4mm。これにターボ過給したものを載せる想定だ。
ランニングプロトのボディ下側を覗く。

エンジンルームを覗くと、KF型658cc直列3気筒ターボエンジンが横倒しになって搭載されているのがわかる。前から覗き込んだ場合、右側にシリンダーヘッド、左側にクランクケースがあり、その前にステアリングギヤボックス(つまりタイロッドは前引き)がある。ほぼフロントミッドシップだ。

ランニングプロトが履いていたのは、165/50R16 75V サイズのブリヂストンPOTENZA RE050A

ダイハツGAZOO Racingでドライバーとして活躍する相原泰祐さんは、コペン・ランニングプロトについて次のように説明する。

「このクルマは軽のFRです。走りは、止まる、曲がる、走る、の順にこだわっています。まず、止まる。前後重量配分がいいことで、4輪でしっかり止まります。で、ステアリングを切ります。スラントエンジンなので重心が低く、操舵するとスッとイン側に向きを変えます。リヤ駆動なのでアクセルで曲げることができるし、立ち上がりでリヤにトラクションがかかる。みなさんに『楽しかった』と笑顔になってもらいたい。実際にクルマを作って課題を出し、改善していこうと取り組んでいるところです」

K-OPENのインテリア
ランニングプロトのコックピット

ランニングプロトは全日本ラリーやラリージャパンなどに参戦するダイハツGAZOO Racingのメンバーが「レースカーのノリ」で作ったという。室内のキルスイッチがこの試験車両の出自を物語っている。対向6ポットのフロントブレーキキャリパーは、全日本ラリーで鍛え、市販化に結びつけたもの。これをそのまま市販車に採用するという意味ではなく、安心・安全の観点で「止まる」ことが大事だとの考えからだ。

ステアリングは手前側の配置(それにともなってドライバーはやや後方に着座)。競技で使っているステアリングホイールを取り付けているのは、正確に評価するためである。「ステアリングが変わると操舵フィールが大きく変わるので、ラリー車で使っているものと同じものを使っています」

トランスミッションはあえて5速MT

トランスミッションはハイゼットから流用する5MT。

トランスミッションはハイゼットの5速を流用。

「このクルマで、どこまで流用して、どこを専用にしなければいけないか、見定めたいと考えています。どんな課題があるか把握し、みなさんの意見を伺いつつ、一緒に作っていきたい。そう考えています。トランスミッションは5速でいこうと考えています。6速にするのは簡単ですが、ネガが結構ある。コストよりも、大きく、重くなるのがイヤ。6速にするがためにペダルレイアウトを犠牲にしたくありません。細い、内製のトランスミッションでいいじゃないかと。攻めの5速という認識です」

K-OPENのルーフは固定。その理由は「オープン機構がまだ決まっていないから」

ランニングプロトのルーフは固定だ。これには理由があり、「オープン機構がまだ決まっていないから。今後しっかり検討していきたいし、みなさんと相談しながら決めていきたい」と相原さん。リヤ駆動なのでトラクション性能を確保する観点からも、リヤサスペンションのストロークは確保したい。その場合、ルーフトップを格納するスペースと干渉する可能性がある。電動ルーフがいいのか、電動ソフトトップか、あるいは手動ソフトか、それともタルガトップか固定か。「クルマ好きのみなさんと未来の愛車を作っていきたい」と話す。

K-OPENコンセプトは165/50R16 75VのブリヂストンAdrenaline RE004を履いていた。

リヤサスペンションは現状3リンク式リジッドだが、これについても「流用すると決めたわけではないし、形式は決めていない」という。「みんなを笑顔にするのが最終目標。クルマ好きを増やしたいし、お求めやすい価格は大事」との認識だ。この認識のうえで、専用にすべきところは専用にしていくスタンスである。

FRレイアウトらしいロングノーズデザイン

FRコペンのデザインを提案する出品車は、いかにもFRレイアウトらしいロングノーズが特徴。デザイン上のポイントをデザイン部の松原一哲さんが解説する。

「エンジンを横倒しに搭載するので、ボンネットフードを下げることができる。実際に下げています。あくまで意匠提案ですが、ドアの上側に黒いモールを設けて、ボディの(視覚的な)重心をぐっと下げています。そうすることで、細く、長く見えます。ランニングプロトと同じタイヤサイズ(165/50R16)なのですが、相対的にタイヤが大きく見えると思います」

FR化によって人の位置が後ろ寄りになり、乗員より後方の寸法は短くなった。でも、FRらしく後ろから前に押し出す力を表現したい。

「リヤまわりは少しボリューミーにつくり、低く、薄い面が前まで伸びるように全体の線を調整しています。リヤはランプとランプの間に薄い線を入れることで、薄く、幅広く見えるようにしています。まだトップをどうするかは決まっていませんが、(出品車は)ハードトップを入れる前提でデザインしています」

ボンネットフード上のダクトやフロントフェンダーのダクトにくし型形状を反復させている。

ボンネットフード上のダクトやフロントフェンダーのダクトにくし型形状を反復させているのも、デザイン上のポイント。インテリアはシンプルな構成。アクセルペダルはオルガン式。クラッチの左側にフットレストがあり、フットスペースはしっかり確保されている。

本気のランニングプロトとデザイン提案を見ると、コペンには間違いなく次期型がある。そう確信せざるを得ない。

ダイハツ コペンの歴代モデル・グレード一覧|自動車カタログ

https://car.motor-fan.jp/catalog/DAIHATSU/10501012/100000
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